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宋飛  作者: たいてん
38/54

宋飛38

「朱立は首尾よくやったようだな」


船の船尾楼の上にいた趙清は、二人の副官、郭文と黄光に手で合図を出した。


生意気な若造が少しは成長したではないか、とふと独り言を呟いた。


下がにわかに騒々しくなり、部下が動き回っているのがよく見えた。


趙清が燕広の逃げる方角を読んでいたため、いま二艘の船は互いに正面を向いて、途轍もない速度で近づいている。


「どこでもいい、総員船にしがみつけ!このまま船ごと突っ込むぞ!」


副官の郭文が号令をかけ、もう一人の副官の黄光は網を用意し、弓兵を指揮している。


見るみるうちに、燕広の船が近づいてくる。


船の真ん中あたりにいた燕広が、こちらを見て大きく目を見開いているのが趙清には見えた。


衝突を避けようと、相手の船が方向を変えようとした横腹に、鉄の船首が容赦なく突っ込んでいった。


すさまじい衝撃と水飛沫で、一瞬何もかもが見えなくなった。


気づくと、大型船にぶつかられた燕広の船は、二つに割れ、すでに片方は大きく傾き沈みかけていた。


黄光の合図で、弓兵が海に落ちた海賊を次々に射抜いていく。


海面がそこだけ赤い色に染まっていく。


郭文が海の中に気絶した燕広を見つけ、船上から網をかぶせて素早く手繰り寄せている。


「勝敗は決した。黄光、新型の船の試しができてよかったな。なかなか悪くないぞ」


「はい。船首を鋼鉄で艤装していたため、こちらの船の被害はほとんどありませんでした」


「燕広はまだ殺すなよ。まあ、聞くべきことを聞いたら首を晒してやるが」


「承知しました。ところで、燕広がいなくなったことで、敵は方々に逃げ出しています。残っている船に合図を出し半日の間、郭文と手分けして徹底的に追い討ちをかけさせます。よろしいですね?」


趙清は黙って頷いた。


「俺は陸に上がる。あとはお前たちに任せるぞ」


趙清は小舟に乗り移り、朱立と宋飛がいる方へ向かった。


遠くで将軍旗が靡く音が聞こえる。


風も戦が終わるのを待っていたのかと、ふと趙清は思った。

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