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宋飛  作者: たいてん
29/54

宋飛29

「お前の兄が海賊の頭領だと?」


「頭領であった、ということです。もう死んでいます。朱立殿」


「お前の腕前は一緒に戦って十分に知っている。確かに納得できる部分はあるが」


朱立が戸惑った表情で腕を組んだ。


馬冲の話によると、死んだ兄の馬麟は、元々この辺りの漁師達の顔役だったらしい。


ある時から、苦労して獲ってきた魚を仲買人に買い叩かれるようになり、漁師の人数を集めて、集団で強く交渉するようになった。


交渉が決裂すれば、仲買人の利益を脅かす流通まで自分達で手がけることもあったため、上前を跳ねていた役人達からも、敵意を込めていつしか海賊団と呼ばれるようになったという。


だが一方で、この辺りの荒くれ者達にとっては、略奪や乱暴を許さない馬麟の一団は、むしろ抑え役であり、重要な歯止めであった。


「そんな中、ある時兄の船団が海に出た際に、ひどい時化に襲われてしまい、兄の乗っていた船が沈んでしまったのです。なんとか、乗っていた仲間達を助けようと、兄は最後まで船に残り、結局は波に飲まれて帰ってきませんでした」


頭領が死んだことで、馬麟の方針を疎ましく思っていた者達の力が強くなり、その中から、燕広という男が新しく集団を率いることになった。


当然内部でも方針の対立があり、先代の頭領に近い者たちが離脱した。


その中心が、まだ若いが弟の馬冲なのだという。


「歳の離れた兄弟でした。まだ子供だった俺には、見せられないこともあったでしょう。しかし、それでも俺にとっては、たった一人の家族で、自慢の兄だったのです」


馬冲が肩を震わせながら話すのを、宋飛は黙って聞いていた。


「この近辺の村は、元々先代とつながりが強かった。それを燕広は快く思わなかったのかもしれません。馬麟様は、弱いもの達のためにいつも戦ってくだされた。最後まで、その姿は変わりませんでした」


村長が遠くを見るようにして言った。


「兄の遺した海賊団が、人々に害を成すものに成り下がっているのなら、それは兄の意志に反することです。俺はそれをなんとしても止めたいのです。宋飛殿、朱立殿、どうか、俺に力を貸してください」


馬冲は深く頭を下げ、いつまでも顔を上げなかった。

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