宋飛28
気づいた時、宋飛は小屋の中にいた。
「おう、目が覚めたか。粥があるぞ」
朱立が自分の椀によそいながら言った。
「水が欲しい。俺はどれくらい眠っていた?」
「丸一日、というところかな。俺も少し前に起きたところさ」
家の中を見回した。すでに日は中天に昇っているようだ。
「おい、まだじっとしていろよ。お前の方が傷は多かったんだからな」
しばらくして、外から声がかけられ、老人が一人入ってきた。
「おお。もうひと方も起きられましたか」
朱立との会話を聞いていると、世話をしてくれていたのはこの老人のようだった。
この村の長だという。
「お二人に改めてお礼申し上げます。この村を救ってくださり、ありがとうございました」
老人が頭を下げた。
「俺たちは蘇州軍の関係者だ。礼を言われることじゃない。まあ、軍と言っても今は二人しかいないが」
「軍の方々であられましたか。道理で、あの並外れた強さに納得がいきました」
「海岸に近い村は全滅していた。それで急いで来たんだが」
朱立が話すのを、宋飛は黙って聞いていた。
「なんと。それは本当でございますか」
近しい村で交流もあったのだろう。少しの間、老人は項垂れていた。
「そうですか。村の動ける者たちで、後で亡骸を弔いに行かせます」
「ところで、ここを襲った者達について、何か知っていることはあるか?特に、蘇州軍は海賊団の根城を探しているんだが」
村長は少し考え込む素振りを見せた。
「軍の方に言っていいのかわかりませんが、実は海賊団の先代の時代には、この辺りの村々はよく漁師の取り分の交渉など、役人や仲買人との間に入ってもらい、大変世話になっておりました。もちろん対価に渡すものはありましたが。それが先代が亡くなり、新しい頭領に代わって、いつの間にか、賊徒のように害を成すようになってしまったのです」
「ほう。以前はこの辺りの顔役のようなものだったのか。別に珍しくもないが。それがなぜ、このようになってしまったのだ」
老人は再び考え込んだ。
「その辺りの事情については、心当たりがございます。少しお待ちくだされますか」
しばらくして戻ると、村長はあの双剣使いを連れていた。
入るなり宋飛たちの前に座り、頭を下げた。
「馬冲と申します。お二人とも、先日は助けていただきありがとうございました。あれがなければ我々は死んでいました」
明るいところで改めてよく見ると、年はほぼ宋飛と変わらない。20歳前後だろうか。
「私は、海賊団の先代頭領・馬麟の弟です。少し前まで、ここを襲った海賊団に所属しておりました」




