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宋飛  作者: たいてん
26/54

宋飛26

「海賊どもが次に狙うとしたら、この辺りも可能性が高いぞ、宋飛」


船酔いして黙っている宋飛を無視して、朱立は容赦無く会話を続けた。


「何を寝ている。果てのない海と穏やかな風、どうだ、小舟とはいえこんな旅も悪くないだろう」


「すまないが、それどころじゃない。よく普通にしていられるな、お前。蘇州の奴らはみんな船に強いのか?」


「しばらくすれば、嘘のように元気になる。馴れれば、どうということもない。みんな最初だけだ。それと、食い物は食えなくても水だけは飲んでおけよ」


宋飛は返事ができなかった。


あの後、模擬戦が終わって以降も、朱立とは何度か調練を共にした。


いつの間にか、お互いに口調が砕け、気の置けない仲になっていた。


宋飛は、船の揺れに身を任せながら、劉明将軍の言葉を思い出していた。


「この国の現状を見て来い。そして、もし、これはと思う人物に会ったら、揚州によこせ」


果たしてそれは、任務といっていいのか宋飛には分からなかった。


蘇州の趙清将軍とは、あらかじめ話はついていて、宋飛に事情を聞かせるために呼び出したのだと、後になって気づいた。


今は、朱立と二人だけで海賊団の根城につながる情報がないか、探っているところだった。もう十日目になる。


自分達以外にも同様の役目を負っている者たちが多くいるらしい。


そうでもしないと闇雲に探すしかなく、とても討伐などできないのだ。


宋飛と朱立の部下たちはそれぞれ調練に残してきている。


「海は広すぎるからな。蘇州軍では、こうやって各地に数名散羅している。何かしらの足跡を掴むところから始めなければならん。地道な作業だよ」


宋飛は初めて海というものを見た。


話には聞いていたが、大河ですら比較にならない広さなのだというのも頷ける。


こうして各地を回ることは新鮮で、どこへ行っても宋飛は退屈しなかった。


「宋飛、もうすぐ行くと村がぽつぽつと点在する地域だ。今夜はそこに泊めてもらおう」


船を降りて、しばらく内陸の方に歩いていった。


すでにあたりは暗くなり始めている。


「おかしいな。村の明かりが全然見えないぞ」


朱立が言った。


何か肌に刺してくる気配があった。朱立もまた何か違和感を感じたようだ。


ふと血の匂いに気づいた。二人は同時に駆け出した。


しばらくして二人は立ち止まった。


「なんだこれは」


百を超える村人と思われる死体が至る所に横たわっていた。

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