宋飛25
宋飛は趙清の前で直立した。
趙清は劉明将軍よりひと回り以上は若かく、また小柄であった。
宋飛は、まさか将軍格であるとは思わず少し慌てた。
「うちの朱立があそこまで鮮やかに敗れるとはな。思い上がっていたあいつにはいい薬になったろう。見事な用兵だったぞ、宋飛」
「ありがとうございます。趙清将軍」
「間近で見ると、かなり若いが、歳はいくつだ?」
「19になりました」
「ほう、天賦の才というやつかな。しかも、それにあぐらをかいている訳ではなさそうだ。劉明将軍、いい軍人を見出しましたな」
「あまり、つけ上がらせるな。趙清。お前を含め、禁軍には宋飛以上の部下は腐るほどいた」
「かつての禁軍には、ですな。懐かしい。我々がいた頃と違って、今では一部を除いて見る影もない。別格の蔡旭総帥と側近三将軍を除くと、ただの儀仗兵かと思うほどに堕ちているようです」
「今に始まったことではない。が、段々と地方にその腐敗の皺寄せがきていると揚州軍でも感じている」
「蘇州軍でもです。国境ではないので、他国の干渉はありませんが、たまに出没する海賊が相当厄介になっています。一部の悪質な者たちを除き、多くは重税で逃げ出した者たちが食い詰めて、ならず者に身をやつしていると思われますが」
「ほう。この国で第一の水軍と言われているお前たちが手こずるほどか」
「もちろん海戦では誰が相手だろうと負ける気はしません。しかし流石に、全ての海を見張ることはできませんからね。兵力も抑えられていて、対応に頭を悩ませていますよ」
宋飛は所在なさげに立っていた。
しばらく上官同士の話を聞くしかなさそうだった。
趙清将軍の言う海賊も、おそらく陸の賊徒と事情は大して変わらないのだろう。
本来なら、普通に暮らし、海で漁を生業とし、あるいは畑で農作業に精を出しているはずのこの国の民なのだ。
それがなぜ土地を投げ出し、逃げ出さなければいけないのか、と強い憤りを感じた。
「ところで、劉明将軍、その件でしばらく宋飛とその軍を借り受けたいのですが、よろしいですか?」
「構わん。どうせこいつは、これから各地へ旅に出さなければならんのだ」
「えっ」
思わず口を挟んでしまっていた。




