宋飛22
段々と暖かな風が吹き始め、大地から残雪が消える時期になった。
宋飛が二百名を率いてすでに一年が経とうとしていた。
その日は揚州軍だけではなく、隣接する蘇州軍との共同の演習を行なっていた。
高齢となっている模擬戦の段階になって、宋飛は劉明将軍に呼ばれた。
揚州軍側の代表に突然指名されたのである。
宋飛は一瞬、自分の耳を疑った。
「お待ちください、将軍。この軍はまだ不足しているものが多くあります」
言い終わらないうちに、劉明将軍が鋭い視線を向けて言った。
「たわけたことを抜かすな。戦で、万全の状態まで敵が待ってくれると思うのか」
「いえ、それは」
「戦はいつ起こるか分からんのだ。いいか、無様な負け方をしたら、お前に与えたこの1年は無駄であったということだ。その時は、お前の軍は解散させる」
宋飛は膝をつき、頭を下げた。
「甘いことを申しました。すぐに出陣します」
拝礼した手に汗が滲んだ。宋飛は、自分の呼吸が浅く、早くなっていくのが分かった。
相手は蘇州軍で実績を積み台頭してきた若手の将校である。
顔は知っているが、話したことはなかった。
宋飛は急いで隊に駆け戻り、全員に出陣を伝えた。
即座に乗馬し、調練用の剣に見立てた棒を持たせた。
互いに二百騎で距離をとって向き合う。
宋飛は目を閉じ、大きく息を吐いた。
自分一人の戦いならば、ここまで緊張したことなどなかった。
「小さい男だな、俺は」
不意に笑いが込み上げてきた。
横にいた班礼が振り向いたが、独り言だと思ったようだ。
宋飛は、ゆっくりと馬腹を蹴った。




