宋飛20
途中で武逹は本来の所属である諜報部隊の指揮に復帰し、林勝も故郷を目指してそれぞれ別れた。
特別な別れはしなかった。
三人とも、まるで明日もまた会うかのように笑いながら、挨拶だけ交わして旅立っていった。
それから、宋飛と史令の一行は揚州一の都である広陵へ進んだ。
城壁に近づくにつれて、段々見えてきたその高さだけでも相当な威圧感を放つのが分かる。
その内部はこれまで宋飛が見たこともないほどの人で溢れ、賑わっていた。
市場には見たこともない異国の品が並び、それらが店の後方まで堆く積み重なっていた。
また、通り過ぎる食堂からは香辛料の匂いが広がり、そこかしこに人の列ができていた。
広陵は宋飛が知っているどの町より活気があり、なぜか訳もなく心が躍った。
その中心に軍の本営はあった。
出頭すると、宋飛と史令の二人だけで練兵場の方へ回された。
中心地から離れた場所に、大きく開けた平地があった。
そこでは、ちょうど三つの部隊が入り乱れて調練を行なっている最中だった。
それぞれが、ぶつかりながら陣形を変え、地形を利用してひたすら走り回っている。
三隊で目まぐるしく動き、互いに背後を取り合っている。
どの部隊も、どれだけ動き回っても隊伍が崩れることはなく、末端まで動きが徹底されているようだった。
宋飛がひと目見ただけでそれが精強な部隊であることが分かった。
全体が見渡せる近くの小高い丘で、調練を観戦している一団がいることに宋飛は気づいた。
揚州軍の旗が上がっている。
揚州の総指揮官である劉明将軍に間違いなかった。
宋飛は近付いただけで、何か巨大なものに押しつぶされるような気を感じた。
隣にいた史令が駆け寄って直立した。
「ただいま帰還いたしました。劉明将軍」
「ご苦労だった。お前が連れてきたその男が宋飛だな」
「俺を知ってるんですか?」
なんとか声を絞り出すことができてほっとした。
「話は聞いている。史令を少人数で追い詰めた男がいるとな。なるほど、聞いていた通り、見上げるような大男だ。力も有り余っていそうだな」
「俺は揚州軍に所属することになるのですか?」
「揚州軍遊撃隊」
「は?」
「お前の仲間を含め、二百名の騎馬隊を編成せよ。そしてそれを極限まで鍛え上げろ。本隊とは別に、遊軍として迅速に動ける軽騎兵部隊が欲しい。宋飛、お前の力を見せてみろ」




