**ハツタイケン。
目を開けると、まぶしい光が視界いっぱいに溢れてきた。
光に慣れてくると、目の前には整った男の顔。
「ん〜……? わぁ!」
頭が冷静さを取り戻すと、その至近距離にある顔は稜のものだと気づいた。
私の悲鳴のせいか稜が目を開ける。
「ん。あ、おはよ。ん? なんでいんだ!?」
「は、はよ。昨日勉強してたぶんそのまま……」
私は稜の部屋に泊まるつもりはなかったが、勉強が苦手だという彼に私が教えていた。
小さなテーブルに2人分の参考書とノートを広げ、1つずつ問題を解いていた。
「俺おまえになんかしてねぇよな!?」
「なんかって?」
「例えば……抱きつくとかさ、触るとか……。って察しろ!」
「ごめん。うんだいじょうぶ! つか触られてもだいじょうぶだよ?」
「衣良も女子なんだから自覚もてよ。さらにかわいいんだから……」
稜は私を女子として扱ってくれている。かわいい、だなんていつ以来だろう。
言ってから恥ずかしいと思ったのか顔を赤くする。
話す時間などなく、荷物も制服も稜の部屋にあるのですぐに着替えた。
背を向けてくれる彼は、気遣ってくれているのだと思った。
走って門を通った瞬間チャイムが鳴った。遅刻ギリギリ。
教室に入ると杜和が心配そうに、
「どこいってたの?」
と聞いてきた。私は稜の部屋にいたというと、安心していた。
「部屋帰ってもいなかったし、帰ってこなかったからびっくりしたよ〜。
稜くんと一緒だったなら安心」
「ごめんな。俺のコスプレ、ゴスロリにするわ」
「あーおっけ!」
服は私たちがデザインして、それを裁縫が得意な生徒が作ることになっていたので急いでデザイン画を描いた。
私はみんなに言われて、露出度の高いゴスロリにすることにした。
その日のうちに描きあげ、裁縫係に渡した。
面倒そうな顔はしたが頑張って作ると言ってくれた。
授業中に杜和から手紙が回ってきた。
『今日部活見に来てよ! んで帰りにクレープ食べよ』。
クレープってほんとに女の子みたいだなと思いながらOKサインを出した。
長くて眠い授業が終わってすぐ、一緒に道場に行った。
剣道着に着替えた杜和は先輩相手でも圧勝。
大きな声は男らしく、剣道をする杜和はまぎれもない男子だった。
練習を終えると着替えないまま走ってきた。
「すっげー待たせちゃってごめん! んじゃ行こ〜」
そのクレープ屋は歩いて1分のところにあった。
私は抹茶あずきクレープ、杜和はキャラメルいちごデラックスを食べた。
彼の言うとおり、皮はもちもちで甘さと苦さのバランスが取れていた。
クレープの感想を語りながら帰宅すると、由佑のご飯とともに私のリュックがかけられていた。
昨日荷物を置きっぱなしにしたままだということに気づき、明日お礼を言おうと思った。
由佑の手作り料理を温めていると、インターホンが鳴った。
どうぞー! と叫ぶと夏帆が入ってきた。
「これ、コスプレの服が出来たみたいです。着てみてください」
「ありがと、夏帆ちゃん。衣良くん、着てみよっか」
夏帆は部屋に帰り、私たちだけでコスプレする。
杜和のメイドは……
「なにそれ超かわいい」
女顔負けのかわいさ。
頬は桃色、目はまん丸、口は小さい杜和のメイド服は破壊力が恐ろしかった。
私のゴスロリは、ノースリーブに透ける袖が付き、胸の下まであるヘソ出し。
下はひざ下から透ける素材でできていて、基本全てがワインレッドと黒と白で統一されていた。
腹や脚、そして腕を出した露出度高い服だ。
「ほんっと細いねぇ、衣良くん」
「杜和はほんとにかわいいよな……」
お互いを褒めあって見合っていると、いきなり由佑が部屋に入ってきた。
「お前ら……なにやってんだ!?」
目を丸くする由佑。説明が面倒そうだ……。




