11人目。一人な私
人間組の戦闘が終わり、二人を救った彼らは、小人族の村へ戻る。
そこで待っていたのは、喜び、安堵などの歓声だった。
小人族を救ったということで交渉も成立し、宴会も開いて小人族とも親密になれた彼らは、自身の主が待つ王都へと帰ることにした。
……まだ眠っている、仲介をしてくれた少女を残して……
※このあらすじは7割の真実と2割の真実の改変でできています。ちなみに、残りの1割はこのお話に入っています。
「―――!―――!!」
まだオルゴールのような鳴き声を上げ続けている竜を諌め、床に下ろす。
布団からゆっくりと足を出し、床にそっと足をつける。
冷たさが足を伝って私の体に染み渡る。
つめた…。と思いながらベッドから出てあたりを見回す。
どうやら、小人族の村の私の部屋らしい。
太陽を見ると、まだ日が昇ったばかりだった。
騒ぎそうな竜をおとなしくさせて、ゆっくりとドアノブをひねる。
音を立てないようにゆっくり開けると、やはり、そこは私の家の居間だった。
たった少しいなかっただけなのに、なんだか懐かしくて、小さく「ただいま」と呟いた。
…そういや、この家で寝るのは、お父さんがいなくなって以来…だな。
感傷に浸りつつ、私は扉へと歩いていき、ドアノブを開く。
外にでると、辺りには誰もおらず、この村は静寂に包まれていた。
おかしいな…。いつもだったら、皆この時間帯には起きてるのに…。
周りを見渡しながら村の入口に向かって歩いていく。
村の入口まで行けば誰かいるかと思ったが、誰も起きてないようでどの家からも物音一つしない。
村の入口を通り、心のおもむくままに歩く。
…そういや、ここら辺を歩いたことってなかったな…。
私にとっての遊びは、ほとんど読書だけだったからな…。遊ぶより読むほうが好きだったし。
外で遊ぶって言っても、村の外に出る気は微塵もしなかったし。
そんなことを考えながら、村の外を歩く。
歩いていると、遠くの方に空家である小屋が見えた。
……あれ、誰もいないはずなのに、なんで煙突から煙が出てるの…?
もしや…幽霊的な…?いやいや、それはないだろ。幽霊が火を使うなんて話し、聞いたことないし。
幽霊の仕業ではないと頭では理解しているものの、怖くて足が竦み、それ以上先へ進めない。
…ここら辺で戻ったほうがいいかな……。
そう考えていると、小屋から見知った顔が出てきた。
めーさんだ。
なんだ…。という安堵とともに、今まで入っていた力がなくなり、前へ倒れそうになる。
まあ、そのまま顔面直撃はなんとか避けたんだけど。
というか、めーさんなにやってるんだ…?騎士だったら、この時間に起きるのは普通なのかな…。
気になるし、聞いてみよう。
そう思い、めーさんの所までスキップ感覚で走る。
結構遠かった距離は数歩で簡単に縮まり、目の前にはもうめーさんの足。
だが、めーさんはまだ私の存在に気がついていないようだった。…私は存在感が薄いのだろうか…?
妙な思考を振り切って、めーさんの肩に乗る。
突然の事に驚いたのか、少々目を丸くして…そのあと、いつもの無表情フェイスに戻ってしまった。
「……おはよう…」
「おはよう……」
………会話が続かないっ!!
なんともまあ私の口下手なこと!このコミュ障、今のうちになんとかしないと仲介なんて一生できないぞ!?
コミュ障脱却のために私がなんとか話題を考えていると、先にめーさんの方が口を開いた。
「……グレンシア…とって…もらえる…?」
…なんで今グレンシア?頭に疑問符を浮かべつつもめーさんの言葉に頷き、肩から飛び降りて近くにあるグレンシアを摘む。
ある程度摘んだ所で、めーさんがしゃがんで私に手のひらを突き出した。
ほほう。そこにグレンシアを置けと。
出された手のひらにグレンシアを乗せる。
めーさんはそれを乗せたまま立ち上がり、腕を高く振って空へと飛ばした。
グレンシアは中に舞い、突然吹いてきた突風に乗せられてどこかへ運ばれていった。
……結局、なにがしたかったのさ。ただグレンシアを飛ばしただけじゃないか。
何の意味が。という視線を送っていたら、めーさんが
「…風のよーせい……要求物…」
ああ。なるほど。風のよーせいさんに力を貸してもらって、その対価ってことか。なるほど。
ってか、よーせいさんって「風の」って付くくらいだから他にもいるのかな?火のよーせいさんとか。
めーさんの肩に乗り、ちょこんと座る。
沈黙。静寂。聞こえるのは、風の音と遠くから風に乗って流れてくるオルゴールの様な音色だけ。
そんな静かな時の中、めーさんが口を開いた。
「…交渉は……昨日、成立した…」
それに少々驚き……嬉しさで微笑む。
よかった。純情に、そう思えた。
敵だと、この生を授かってからずっと、刷り込みのように言われていたけれど…やっぱり、嬉しかった。
それは、彼らが人間という種族であるからだろうか。それとも、この数日間で情が湧いたのだろうか。
どれなのか私には判断がつかないけれど…今は、何も考えずに喜ぼう。
「長老の…娘を……救ったのが…決めて…だったらしい…」
そういう彼の顔には、救えてよかった。という喜びがあった。
……あれ、昨日ってめーさん言ってなかった?
い、いやいや、まさかあれから私、丸一日寝ちゃってたの!?そ…そんなことないよね!
その思いを視線に込めると…
「丸一日、熟睡」
凹むような言葉が返って来た。私は…皆が頑張っている時に丸一日も寝てしまった…。
しかも、私は仲介人なのに、そのための交渉はもう終わってるって…どういうことだよ!
「…そりゃ…早いほうが…、あと…親密会…した」
…まあ、確かに早めのうちにやったほうがいいだろうけどさ…。
……ん?親密会?…ああ。人間と小人族はこれから仲間になるんだもんね。そりゃ、やんなきゃいけないね。
「皆…酔いつぶれて……二日酔い…。ちなみに…カイアも…」
どんだけ飲んだんだよ…。飲みすぎだろ……。…まあ、敵だった彼らに酔いつぶれた姿を見せるくらい、心を許したってこと…なのかな…。
その事になんだか、笑いがもれる。
きっと、あんな昔のお話がなかったら、私たちは今みたいに打ち解けていただろう。もっと、交流もあっただろう。それがお話一つでこんなになるなんて…とても残念だ。
…でも、今からでもその溝は埋められるかもしれない。
私の役目はこれで終わりだけど、これからも、頑張って欲しい。小人族と人間の未来のために。
ふと、思い出したかのようにめーさんが呟いた。
「…今日……七時に…帰る」
えっ…。早くない?まだ、来てほんの少しだけだよ?
驚きと…そして、少しの寂しさが私の心の中を埋める。…帰っちゃうのか…。
……そりゃあ、そうだよね…。帰る家があるんだもの。
できれば帰って欲しくないけど、駄々を捏ねるような真似はしない。めーさんに迷惑がかかるから。
でも……お願いくらい、聞いて欲しい。
「……あなたの…名前は…?」
「…メティス・レダ…」
「私は……ギボウシ……」
静かな沈黙が、辺りに広がった。
***
みんなで、めーさん……メティスさんとカイアを盛大に見送った。
最初の警戒していたのとは大違いだ。
二日酔いで悩まされていた人も多かったみたいだけれど…それでも、皆、メティスさん達を精一杯見送った。その影が見えなくなるまで…。
それから数日たち、私は近くの町…最初にメティスさん達に捕まえられた町へ行こうと準備をしている。
あれから少したったあと、シロ兄がどうなったのかまったく分からない事に気がついた。
あの町では結構小人族が暮らしているから、シロ兄が暮らしていたって騒ぎにはならない。
何か騒ぎが起こったら私もわかるんだけど…。
とりあえず、シロ兄を探すためにあの町にまずより、いなかったら他の町にいって探そうかと思っている。
元々、家はないようなものだ。両親は亡くなってしまったのだから。
まあ、シロ兄はアルビノだから結構目立つと思うし、多分大丈夫。
そう思っていると、村の人の声が聞こえた。
今日の見張り役の人の声だ。
「おーい!人間の馬車が来たぞー!!」
その声と共に、村の皆が入口に殺到する。
私も気になって見に行きたいけど、人が居過ぎて暑そう。皆ガヤガヤ言っててうるさそうだし…。
少し離れた所から見ていると、馬車がだんだん近づいてきて、村の少し手前で止まった。
馬の嘶きが聞こえ、完全に馬車が止まる。そして、馬車の扉が開いた。
そこから出てきたのは…出て……来たのは…
その人は、村の入口の前で止まり、しゃがむ。
入口に固まっていた皆は、その人がなにが目的できたのかわかっているように道を開けた。
皆が真ん中に開けた道にに、一人ポツンと取り残された私。
…なんで……なんで…
「王都へ、来て欲しい」
「は?」
ここにメティス…めーさんがいるんだよ…。まだ一週間もたってないぞ…。
第一章終わりです!
次は第二章…に入る前に、閑話的な感じでお話を…と思っています。
キャラ紹介もこのさいだからやります。
次章予告
王都につき、王様に正式に仲介人と任命された私。
いつものメンバーのめーさんとカイアを護衛としてつけられ、たどり着いた場所はなんと鬱蒼とした森の中?そこに仲介して欲しい小人族がいるらしいんだけど…。
メンバーと探している内に森に迷い、どうしようか…となったとき、私の顔ギリギリに矢が飛んできた。その方向を見ると…そこには、私が仲介するべき相手、「小人族の戦闘種」がいた。
こんな感じです。王都部分は閑話に入れようかなと考えてます。そこまで長くないと思いますし。
それでわ。




