IF第2話: 生き残るための道
はじめましての方も、お馴染みの方も、お越しいただきありがとうございます!作者のティラピア池です。今日も皆様に楽しんでいただけるよう、気合を入れてお届けします!
あの夜、僕はひたすら身を隠していた。
自分がそこにどれほど長くいたのか、もう分からない。
足音が聞こえるたびに、身体が強張る。
僕にできるのは、ただ待つことだけだった。
その足音が遠ざかるまで。
夜が朝へと変わるまで。
そして――ついに、太陽が昇った。
僕は隠れていた場所から、ゆっくりと外を覗いた。
誰もいない。
「……今だ。」
僕はゆっくりと姿を現した。
捕まるわけにはいかない。
もう二度と。
僕は街の外れにある細い道を歩き、できるだけ目立たないように俯きながら進んだ。
あと少し。
もうすぐ街の外だ。
しかし、街の門を抜けようとした瞬間――
「!」
突然、横から剣の閃きが走った。
僕は反射的に身を屈める。
斬撃が、頭上数センチのところを通り過ぎた。
「くそっ!」
僕はすぐに手を上げた。
足元にあった石が宙へ浮かび上がる。
念動力――テレキネシス。
「近づくな!」
石が勢いよく飛んでいく。
ドンッ!
「ぐっ!」
石が男の額に直撃し、男が数歩後ろへよろめいた。
僕は待たなかった。
そのまま全力で走る。
街の門を抜け、そのまま森へ向かって走り続けた。
もう、どこへ行くかなんてどうでもいい。
ただ――あの街から離れたかった。
あいつらから離れたかった。
十分に距離を取ったところで、僕は木々の間に身を隠した。
息が荒い。
手が震えている。
「……どうして?」
僕は地面を見つめた。
「どうして僕は、あの道を選んだ?」
答えは返ってこない。
「どうして僕は、あの街を選んだ?」
僕は拳を強く握りしめた。
「くそっ……。」
僕は両手で顔を覆った。
「全部……僕のせいだ。」
その言葉が、何度も頭の中を巡り続ける。
僕には、まだ勝てると思っていた。
まだ能力も残っている。
まだ――生きている。
けれど、考えれば考えるほど、あることに気づいてしまった。
僕は何かに勝っているわけじゃない。
ただ……
「……時間を稼いでいるだけだ。」
僕が森に隠れている間も、あいつらは街にいる。
今も笑っているかもしれない。
今も宴を楽しんでいるかもしれない。
それなのに僕は――
明日、生き残れるかどうかすら分からない。
僕は立ち上がった。
だったら、もっと強くならなければならない。
僕はさらに森の奥へと進んでいった。
そして――岩の間に、大きな穴を見つけた。
僕はその中を覗き込む。
奥から、奇妙な声が聞こえてくる。
「……ゴブリンの巣?」
僕は息を呑んだ。
「……他に選択肢はない。」
僕は穴の中へと入っていった。
***
一日目――僕は死にかけた。
三日目――ゴブリンたちの動きに、少しずつ規則性があることに気づいた。
七日目――ブーメラン・ブレードを、以前よりも上手く操れるようになった。
それからの日々は、ただ過ぎていった。
僕はゴブリンを狩った。
使えそうなものは何でも拾った。
必要な時だけ休んだ。
そして、また戦った。
勝利するたびに、EXPが増えていく。
少しずつ――EXPの借金が減っていった。
`《EXP+100》`
`《レベル -78》`
数日後――
`《EXP+100》`
`《レベル -77》`
そして、ついに――
`《レベル -76》`
僕は黙ったまま、自分のステータスを見つめた。
まだ、正常とは程遠い。
それでも……
少しずつ、前へ進んでいる。
数週間が過ぎた。
いつしか僕は、足音を気にせず眠るという感覚すら忘れかけていた。
そんなある夜――
タッ。
タッ。
タッ。
僕は動きを止めた。
足音がする。
ダンジョンの中からだ。
「……そんなはずがない。」
僕はゆっくりと立ち上がった。
冷たい汗が背中を伝う。
足音が、少しずつ近づいてくる。
タッ。
タッ。
タッ。
そして、暗闇の奥から声が聞こえた。
「もう終わったか?」
心臓が止まりそうになった。
「……どうやって、僕の居場所を見つけた?」
暗闇の奥から、一人の男が姿を現した。
僕はすぐにブーメラン・ブレードを握りしめる。
「この……悪党が!」
僕はブーメラン・ブレードを投げつけた。
ヒュンッ!
男は素早く身をかわした。
僕はすぐに距離を計算する。
速度。
移動方向。
次の攻撃が来る可能性。
「……三メートル。」
男の攻撃が来た瞬間、僕は横へ飛び退いた。
そして、もう一度ブーメラン・ブレードを投げる。
しかし、男は再びそれをかわした。
速い。
速すぎる。
男の姿が、僕の視界から消えた。
「!」
次の瞬間、死角から攻撃が飛んでくる。
だが――僕はすでに待っていた。
「遅い。」
僕の背後で、一枚の盾が宙に浮かび上がる。
その盾から、魔力の光が放たれた。
「なに――?」
パキッ!
氷が盾から広がり、男の身体を凍りつかせていく。
男は動きを止めた。
僕は大きく息を吐いた。
「いつの間に……?」
僕は男を見つめた。
「僕が倒したゴブリンの中から、魔石を見つけた時からだ。」
男は信じられないものを見るような顔で、盾を見つめる。
「お前……自分で作った武器に、魔法を使わせることができるのか?」
僕は短く答えた。
「試してみただけだ。」
僕は振り返った。
ここに留まっている時間はない。
僕は装備を回収し、ダンジョンの出口へ向かって走り出した。
森。
街。
僕は、そのすべてを捨ててきた。
今の僕には、一つだけ目的がある。
ダンジョンを抜け、僕は夜空を見上げた。
数週間ぶりに見る月だった。
僕は武器を強く握りしめる。
「……あそこへ行かなきゃ。」
遠くに、かすかな街の明かりが見える。
しかし――そこはクロシマではなかった。
そして僕は知らなかった。
その先で、何が僕を待っているのかを。
僕はその街へ向かって歩き出した――
「…………」
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