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第9話 「ハルの畑」
祭りの三日間が終わり、
山はいつもの静けさを取り戻していた。
御堂の横の小さな畑は、
ハルが季節に合わせて野菜を育てている。
土を耕し、
種をまき、
水をやる。
山神さまは口を出さない。
すべてハルに任せている。
⸻ただひとつの事を除いて。
天気だ。
日照りが続き、
苗が弱りはじめた日。
ハルは空を見上げて言う。
「これは、少し困りましたね」
それだけ言って、
何も頼まない。
山神さまは眉を寄せる。
「願えばよかろう」
「願えば、叶えてくださるのですか?」
「……知らぬ」
その夜、
突然雨が降る。
ザーッと勢いよく。
翌朝、
畑は水を含みすぎていた。
葉は倒れ、
土はぬかるんでいる。
ハルは苦笑する。
「……少し多かったですね」
山神さまは腕を組む。
「加減など知らぬ」
「では、覚えてください」
「誰が覚えると言った」
ふん、と顔をそむける。
⸻それでも数日後、
ちょうどよい雨が降った。
ハルは何も言わず、
丁寧に土を整える。
山神さまは畑ではなく、
その背中を見ていた。
何も言わずに。
その年、畑はよく実った。
お読みいただきありがとうございます。
次回は4月22日に、第10話「吹雪」を更新予定です。




