表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

第8話 「村祭り(後編)」

源蔵じいさんの家に通され、

囲炉裏を囲む。


山神さまは多くを語らない。


だが、


「……畑はまだやっているのか」


ぽつりと聞く。


源蔵じいさんは少し驚いた顔をして、

すぐに笑う。


「ぼちぼちだな。

昔みたいには動けんよ」


「山へは、もうあまり来ておらぬな」


「足腰がなぁ」


そう言って笑う源蔵じいさんの声は、どこか寂しそうでもあった。


山神さまはそれ以上聞かない。

ただ、静かに湯のみを傾ける。


ハルは気づいている。


それが気遣いだということを。



夜になると、

祭り囃子が村に響き始める。


山神さまは立ち上がる。


「行くぞ」


短い一言。


外へ出れば、

色とりどりののぼり、

賑やかな笑い声、

甘い団子の香り。


人々は誰も、

その正体に気づかない。


山神さまは

ふん、と小さく鼻を鳴らす。


だが、その視線は

どこか楽しげでもあった。


三日間の祭りが終わる朝。


村はまだ

祭りの名残の静けさに包まれていた。


支度を整え、

源蔵じいさんの家を後にする。


山神さまは短く言う。


「世話になった」


それだけ。


だが源蔵じいさんは、

嬉しそうに目を細めた。


「また来なされ」



山道へ向かい、

ハルと並んで歩き出す。


ふとハルが振り返ると、


源蔵じいさんが

家の前で深々と頭を下げていた。


旅人に向けたものにしては、

あまりにも丁寧すぎる礼。


ハルは何も言わない。


隣を歩く山神さまも、

振り返らない。


ただ、

いつもより少しだけ

歩みがゆるやかだった。


山へ戻る風が、

やさしく吹いた。

お読みいただきありがとうございます。

次回は4月18日に、第9話「ハルの畑」を更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ