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第4話 「霧の中の赤子」

山道を下りながら

源蔵じいさんは、幼かったハルのことを思い出していた。


山の奥、霧に包まれた古い御堂。


ある日、源蔵じいさんは、

かすかな泣き声を聞いた。


御堂のそばに、幼い赤子が置かれていた。

小さな命だった。


慌てて里へ下り、人を連れて戻る。

だが赤子に近づこうとした瞬間、

突風が吹き荒れた。


誰一人、近づけない。


何度試しても同じだった。


源蔵じいさんは御堂を見上げ、

そっと手を合わせた。


「……山神さまが、守っておられるのでは」


それからの日々、

源蔵じいさんは毎日御堂に通った。


「どうかこの子に、

食べさせてやってくださいませ」


祈り続けるうちに、

不思議と突風は吹かなくなった。


けれど赤子には触れられない。

ただ、見守ることしか出来なかった。


一年、二年と時が過ぎる。


赤子は少しずつ大きくなっていった。


ある日、源蔵じいさんは思う。


「着物もいるな……」


真新しい着物を用意し、

御堂の前にそっと置いた。


翌朝。

食べ物を持って訪れると、

古い着物の上に、紙切れが一枚置かれていた。


拾い上げて見る。


そこには薄く、ただ一言――


「ハル」

と書かれていた。


それから幾年もの月日が流れた。

お読みいただきありがとうございます。

次回は4月4日に、第5話「御堂の客人」を更新予定です。

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