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41話 悪の組織は能動的に

 山賊、盗賊、オーガ、穏健派の生き残り騎士団含めるとは総計370人はそろった。街中の治安警備隊も120人ほどいるが、彼らは街の警備が仕事なので戦力に含めない。

 諜報部隊では他国の好意(・・)により譲ってもらった手練れの密偵25名、各地の諜報を担ってくれるそれなりの密偵58名。情報を意図的に流したとはいえ、思った以上に釣れたものだ。

 手練れの密偵たちは全員正式に『ゲセルシャフト』直属諜報部隊『シャドウ』として雇いいれ、仕事に見合った報酬を払うと約束している。他の奴らは洗脳措置を施した後、元の雇い主の方へ帰した。

 特殊な波長に応じてスイッチが入り、その地域の情報をこちらに回す洗脳を施したので、一から調べるよりもずっと効率的だ。洗脳行動中は記憶にも残らないので自分たちが操られていること自体気づかないだろう。そもそもスイッチさえ入らなければ洗脳状態にならんので気づきようもないが。

 この部隊は『シャドウ』の下位組織『ルートズ』と命名。今後も送られてくる密偵や諜報部隊たちは一部を除いてこの措置を施し範囲を広げるつもりだ。


 騎士団含め、諜報部隊を雇い入れるに至り結構な金を使ったが資金に関しても問題ない。

『パンゲア』を譲り受けた日から、一部の耕作地で砂糖の元となるテンサイを大々的に栽培し、砂糖を得る事に成功している。種自体は艦内に保存してあったからな。既に品種改良済みなので植えるだけだ。この辺りは農家の皆様の頑張りをありがたく享受(きょうじゅ)させてもらいます。


 砂糖はこの世界でも存在するが、栽培方法が確立されておらず未だ高額だ。輸出品としては最適だろう。

 警備に関しては大勢入った戦闘員達を2~3人回しているが、何時までも貴重な戦闘員を回すわけにはいかない。近いうちに別の人員を戦闘員にして割り当てるつもりだ。それに新しい戦闘員の当てもある。


 ……首都から農村警備に移った戦闘員達には遠征手当を付けておこう。手当は大事だ。

 余談だがヒーロー達には手当の類は一切ない。

 もっとヒーロー達を労われと思った我はおかしいのだろうか。我らがホワイトで、ヒーローがブラック状態とかおかしいにも程がある。

 

 資金源は砂糖だけじゃない。もっと直接的に稼ぎになる金、銀、銅の産出も順調だ。

 元エッケザックス国は金山や銀山も保有していたが、魔導兵器や魔法があったとしても採掘技術はそこまで進んでいない。

 落盤や魔法が通じない特殊な岩盤、地下水の浸水などで閉鎖された金山がある。

 そこは地球世界でも既に通った道だ。それ故に解決する方法も存在する。

 浸水部分は電動ポンプで吸出し、岩盤はダイナマイトで爆破。落盤した部分は補強工事しつつ超音波による強度確認をしながら新たに作り直した。

 ある程度は『ゲセルシャフト』の修復の為に確保し、金と銀の大半は外貨稼ぎの為に売りに出した。この辺りは帝国出身のアリシアの伝手を使い、商国で売りさばいて貰った。

 銅に関しては使い道が金以上にあるので、殆どを国内で使うつもりだ。銅のフライパンなど便利だしな。

 あと、使ってないエッケザックス城を使った観光名所が結構シャレにならない位金になってる。一番の売れ行きは我のブロマイドらしい。解せぬ。


 資金も人材もある程度今、動かない理由はない。

 一先ずは『トライデント連合王国』との戦争を邪魔されない為に、近くのゴミ掃除と行こうか。


◆◆◆


 作戦室に我、レイ、アリシア、そして『シルバーイーグル』が集まり、作戦会議を行っているが……全員が気楽にティータイムをしている。さらっと投影画像で鷹の姿をしたシルバーイーグルも緑茶を飲んでいる。羊羹まで用意する無駄な凝りっぷりだ、


「イヴ、現地の諜報員からの連絡だけど、向こうさんは偽の情報に踊らされて全く何も準備してないようだねぇ」


 おい、レイ、『シャドウ』及び『ルートズ』からの調査結果の書類を雑に机に放り投げるな。

 気持ちは分からんでもないがな。報告しに来たセレーネも呆れた様子だったし。


「だろうな。普通は山賊達を御しきれないと思うだろう」

「イヴ様達は普通ではありませんものね」


 アリシアの言う通り、生憎と我らは普通ではない。

 問題になりそうな山賊達の大半は騎士団の訓練がてらに潰し、奴らが溜め込んだ財産は村や街に寄付し、慰めものにされていた奴隷達は全員がゲセルシャフトで治療を行っている。

 今回、潰しに行くのはエッケザックス国が接収される際、どさくさに紛れて独立したクーダラン公爵家だ。

 クーダラン公爵家は表向きは穏健派で軍部を諌めていたが、その裏では一部の好戦派に裏金を回して政敵を粛清させたり、非合法な商売で好戦派を支えてきた貴族の一人だ。

 金だけは潤沢にあり、今は傭兵を雇い粛々と『パンゲア』を奪い取るべく準備中だそうだ。情報源は捕えたクーダラン公爵家の密偵。そこそこ使えたので『ルートズ』に回してる。


『クーダラン公爵家は麻薬密売、他領からの人身誘拐、および奴隷売買の証拠が揃っています』

「帝国法に準すると一発で一族郎党処刑でお取り潰しですわね」


『パンゲア』も帝国法を元に法律を作っている。違うのは一部の職種の差別撤廃と優遇措置だな。


「ならば、ここは作戦通り」

「ああ。一個分隊で問題ないね」


 一個分隊は十五人で構成される最小部隊だ。

 クーダラン公爵は傭兵を千人前後揃えているらしいが、全く問題ない。

 数は力と言うが、それは訓練された兵だからこそ、力になる。

 寄せ集めは烏合の衆にしかならん。

 クーダラン公爵には、『パンゲア』の騎士団の強さを周囲に見せつける踏み台になってもらおうか。

 そもそも、今回の狙いはクーダラン公爵だけではない。

 共謀して独立したカース子爵、ダスト伯爵、ボッケ伯爵、コロナ侯爵、テーバイ辺境伯など5つの裏切り者を纏めて掃除だ。

 兵力の分散の上に数だけで見れば十倍以上の戦力差。

 無茶、無謀と言われてもおかしくない。

 だが、悪の組織と言うのは世界に喧嘩を売っているのだ。それ位出来なければ、願いを叶えるなぞ夢のまた夢。

 戦闘員に仕立て上げた騎士団達にはそれが出来るだけの力を与えた。あとは本人達のやる気だけだ。


 ここから始まるのは戦いではない。



 ―――民を食いつぶすゴミどもの大掃除だ。




 一応武器はちゃんとしたものを用意しよう……。


「レイ、ロケットランチャーを人数分」

「ダメ、やりすぎだから。それ」


 ダメらしい。



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