24話 提案
連絡を受けた我らは、急ぎシルバーイーグルの元へと戻ることに。
「何やら急ぎの連絡の模様。流石にここで押しかけては迷惑ですわね。わたくしは今日は戻って陛下を出迎える為の準備を致しますわ。何かございましたらオウカ砦までお願いしますわね」
と言ってアリシアはオウカ砦まで戻った。どうやら破壊された砦を手直しし、仮の飛竜の発着場としたようだ。
確かに、あの大型の飛竜どもでは下手に街には降りる事は出来ない。
既に人がいないオウカ砦ならば滞在するにはうってつけという訳だ。更地になったわけでもなく、使える施設もあるだろうからな。
連絡もここから馬で半日の場所だ。我らとしても都合がいい。
そんな感じでアリシアを見送り、我らはシルバーイーグルの元まで戻ってきた。
『お待ちしておりました。イヴ・ゲセルシャフト。王妃は既にお目覚めです』
ガコンっと大きな音を立てて扉を開けるシルバーイーグル。
流石にエンキを中に入れるわけにはいかないので、ここで待ってもらう。
王妃に治療ポットを使わせたの自体が特例だ。部位欠損や致命傷まで治す医療器具を容易に他者に使わせてはいけない。使うならばそれ相当の対価いる。
名医に高い報酬を払うように、技術には対価が必須だ。
今回使わせたのは、強固な縁を結ぶための土台作りと……リンの為だからだ。
シルバーイーグルの治療ポットが置かれている一室に入ると、備え付けの椅子に座るリンとテルズミ王、そして両手両足、千切られたと思われるもふもふとした尻尾も全て再生した王妃の姿が我の目に飛び込んできた。
リンもテルズミ王も随分と泣きはらした様子で、目元が赤くなっており、リンに至っては傍から離れたくないと言わんばかりに腕にしがみついていた。
「貴女は……此度は妾の命だけでなく、国を救っていただいたようで……誠に感謝いたします」
「イヴ、おねーさん。おかーさんを助けてくれて……本当にありがとうございます」
「よい。我がやりたいようにやっただけだ」
「イヴ殿。リンネを救ってくれて、本当にありがとう……! しかし、ここまでの多大な恩を受けたとあれば、いかように返せば良いのか……」
「それについてだがな」
つい先ほど、ヒルダとの会見の話をすると王妃――リンネとテルズミ王は目を丸くし驚いていた。リンは話の重要性が判っていないのか首をこてんと傾げている。可愛い。
「我がこの世界の住人ではないという事はリンから聞いておるな」
「ああ。聞けば異世界の者だとか。稀にだが、彗星のように落ちて来たり、施設ごと転移などする事例も歴史に残されている。だが、殆どの異世界人は勇者召喚の秘術により呼び出された者達だな」
勇者か……。よくある創作物の定番だが、テルズミ王の口ぶりではどうやら多いらしいな。
「我らはその中の施設の方だな。テルズミ王、我らに恩を返したいのであれば我らの目的に助力してほしい」
「……その目的を聞いてからでも?」
「勿論だ」
恩義を感じていても慎重さを失わんか。やはりこの者は愚かではない。
最初の交渉相手としては上々だろう。
我ら総意の目的を告げると、テルズミ王は深く唸り考え込んだ。
「探し人ならば、自分達でも協力は出来よう。幸い、クサナギ国には『草』と呼ぶ諜報に長けた部隊がいる。時間はかかるだろうが、何らかの情報は手に入るはずだ」
「それだけでも助かる」
『草』か。本当にこの国は日本に近い文化を持っているな。もしかしたら、遥か昔に日本人が立てた国なのかもしれんな。
「しかし、帰還に関しては助力を求められても協力は出来ない。クサナギ国はこの通り、魔導機械技術の恩恵も受けておらず、そういった術式も詳しくない。精々できるのはある程度の物資の提供位だ」
「十分だ。我らにとって目下の問題の一つが資材だからな」
「ならば、今は使われていない鉱山を一つ提供しよう。昔、崩落してしまったが……」
「それだけでも有りがたい」
それなら良かったと、テルズミ王は安堵の息を吐く。
正直、鋼鉄でなくとも、鉄鉱石が出る山を教えてくれるだけでも十分なのだ。こちらには採掘する道具も丸々転移してきたのだからな。
「あと、修復に使えそうな鉱石もこちらで探してみよう。自分の国でも珍しい鉱石があってね。もしかしたら……と楽観的にいってしまうが、使えるかもしれない」
「助かる。サンプルはあるだけあればいいからな」
なんせファンタジー世界だ。地球ではない様々な鉱石もあるはず。その中には代用品になり得る鉱石もあるだろう。
「一つ聞きたいがエッケザックス国に関してだが……どうするつもりだ」
「……率直な事を言わせてもらえば、譲られても困る」
だろうな。ただでさえ戦争のあとで復興に人手を割かれてるのだ。こうしてテルズミ王が話している間にも、決済すべき書類は詰まれているだろう。
ここまでやってくれたのだ。ついでだ、テルズミ王の悩みの種もこちらで引き受けよう。
「そこで提案だ」
「提案?」
思わぬ言葉にオウム返しのように繰り返したテルズミ王。そんな不思議そうな顔をするな。もっと驚くことを言うのだからな。
「エッケザックス国。我にくれ」
◆◆◆
「イヴさん。国なんて貰ってどうするんですか? もしかして、国王になりたかったんですか?」
不思議そうに美月が首を傾げつつ、椅子に座る我に声をかけてくる。
今は話し合いが終わり、全員で飲み物を飲んで休憩中だ。
全く、国王なんて面倒くさいものになりたいわけが無かろう。
因みにテルズミ王は家族を連れて城へと戻った。エッケザックスに関しては城の者達と話し合ってどうするべきか決めるらしい。
「違う。これもまた目的の為だ」
「……皆を集めるためにですか?」
「ああ。クサナギ国は良い国だ。だが、我の国にするのは無理だ」
「そりゃ、リンちゃん達の国ですから、無理ですよ……ああ、だからエッケザックスなんですね」
「そうだ。既に国王以下上層部が処罰されているなら、我らが上に立ったとしてもやりやすい。クサナギ国からも力を借りるつもりだからな」
と、言いながら栄一が入れた紅茶を飲む。やはり栄一の入れる茶は美味いな。
「それで、総帥。ウケラノス帝国との会談ですが、どうなさるおつもりですか?」
「そうだな……その辺りも含めて、一度船に戻ろう。幸い、心強い味方も出来たばかりだからな。なぁ、シルバーイーグル」
天井に向けて声を掛けると、投影画像を出し白銀のタカの映像を出してくれた。
『承知しました。ここから戦艦『ゲセルシャフト』まで三十分のフライトで到着します』
本当に心強いな。ヒルダにこいつを見せるだけで良い気がしてきた。
だが、他人の、それも正義の味方の成果を見せてもつまらんよなぁ!
ここはひとつ、度肝を抜けそうなものをレイと話し合うとするか。




