19話 白き鷹
シルバーイーグル。これは聖騎士戦隊『クルセイジャー』達が所持する秘密兵器の一つだ。
世界の平和を守るためにレイと双璧の対を成す天才科学者『Drマーリン』の手により制作された機械で出来た聖獣だ。
その特徴は自身で考える人工知能と、五体の聖獣による合体、聖王ロボ、エクスカリバー。圧倒的な質量から繰り出される一撃は多くの怪獣や巨大化魔人を倒した。
人工知能は人として寸分の違いもなく、喜怒哀楽を表現できるようになった聖獣を見た時はレイでさえも拍手し興奮していた。
決戦時でも、亜空間は特殊な空間の関係上、他の聖獣たちは来ることが出来なかったが、シルバーイーグルだけが侵入することが出来た。
シルバーイーグルは持ち前の知能と、経験、そして音速を超える速度で最も薄い一番非常口の扉をぶち破り、装甲が剥げおち火花を散らしながらも主たるクルセイジャー達を『ゲセルシャフト』の艦内に運ぶ任務を遂げた。
そのシルバーイーグルが新品当然の姿で我らの前に現れた。栄一も、美月も驚いている。我も驚くわこんなもん。
シルバーイーグルは巨大な瞳をウィンと鳴らして、我を見やる。
『お届け物を届けに参りました。ここで宜しいですか? イヴ・ゲセルシャフト』
「う、うむ。という事はアレを持ってきたのだな」
『はい。ハッチ、解放します』
ハッチを開けると扉の向こう側には荷物を抱えた小鴉丸が立っていた。
「総帥。お待たせしました」
「ああ、小鴉丸。ご苦労だった。色々と聞かせてもらうぞ。こいつの事を含めてな」
我はそういってシルバーイーグルの巨大な横顔を見るのだった。
それからは大忙しだった。
シルバーイーグルの中に格納してきた治療ポットの起動、その中に王妃を入れ治療する旨をテルミズ王へ伝え、レイが手配したであろう物資の搬入作業に追われた。
物資は多岐にわたり、食料品や衣類、レイが開発した治療薬などかなりの品数になった。
レイの奴め、この短時間にここまで用意したという事はこういう事態も見越して準備していたな。
色々と先を予想し動く先見の目はいつになっても助けられ、頼りになる。
物資の搬入はテルミズ王の言葉もありスムーズに進んだ。流石に王命ともなれば拒否や躊躇することは出来ない。
シルバーイーグルの出入りも限られ、我、栄一、小鴉丸、美月の四名だけだ。シルバーイーグルの内部は機密の塊だ。我とて何が起きるか判らん。
唯一の例外としてテルミズ王自身が治療ポットの中へ王妃を寝かせ、蓋をした時だけだ。
年若く見えるが、その顔は一人の夫であり、王であった。
時間は過ぎ、夕暮れになるとようやく一息ついて話が出来るようになった。
「それで小鴉丸。『シルバーイーグル』の事だが」
「はっ! 総帥の命により、急ぎ戻ったところレイ博士が彼の者を修復しておりました」
「船の復旧より先にシルバーイーグルの修復を優先か。レイの事だから何か考えがあるのだろうが……」
『イヴ・ゲセルシャフト。それに関してはワタシから応えさせてもらいます』
シルバーイーグルは投影画像を出し、我らの話に入り込んできた。少々不作法だが、貴重な意見だ。
「良かろう。聞かせてくれ」
『有難うございます。ワタシが目覚めた時には既に、レイ博士により修復の最中でした』
「抵抗はしなかったのか? 他の者、それも敵対していた組織の科学者に身体を弄られるのは不本意だろう」
我でさえこんな体に放り込まれて不本意なのだ。シルバーイーグルも同じなはず。
『そうですね。最初はそう思いましたが、抵抗しようにも身動きできず、修理は的確でAIには一切の手を加えませんでした」
「レイもDrマーリンの事は高く評価しているからな」
「え、そうなんですか? えっと、敵対してたのに……?」
我の言葉に美月が驚きの声をあげる。
ああ、この辺りはまだ美月には理解できないのか。
「敵対しても評価は別物だろう? 我とて一部のヒーローたちは高く評価しているぞ。特にお前たちプリズムプラネットの三人はな」
「そ、そうなんですね……ちょっと改めて言われると照れます」
美月は照れ臭そうに頬をかく。魔法少女は基本的に姿を隠して行動しているからな。面と向かって評価されるのは稀なのだろう。
「戦闘員の中でも、実はファンは多いんですよ」
照れる美月に追い打ちを掛けるように栄一が戦闘員の実情を教える。
うむ、実はその通りなのだ。
意外と多くてなぁ……アイツら見たいからと言って率先して魔法少女関連の作戦に参加したがるから選抜に頭を悩ませたものだ。
「えっ!? そうなんですか?」
「ええ。……全員揃ったらサインをお願いします。妹もファンなので」
「……はいっ! 全員揃ったらですね!」
今は何処にいるかしれぬソレイユとスターズ。必ずや見つけ出さねばな。
っと、話しがだいぶ逸れている。
「話を戻そう。それで、物資に運んだという事はお前は我らに協力する、と見て良いのか?」
『レイ博士から現段階の状況をお教えいただきました。……まさかの異世界。我らが主『クルセイジャーレッド』や他の皆様方の行方が知れず、ワタシ自身の補給もままらないとあれば、協力した方が良いと判断』
状況判断、最優先に至るための道筋、その為の行動力と決断力。どれも見てもそこら辺のヒーロー達より優秀だ。
流石はDrマーリンの秘蔵の人工知能……いや、マーリンは電子妖精と言っていたか。妖精の名にふさわしき知性は見事なものだ。
『それに加え、優先目標の中に皆様方の捜索も入っているともあれば、ワタシも協力する方が互いに良いと判断。だからこそ、手を組むことに同意しました』
「そうか。苦しい選択だがよくぞ決断してくれた。我はお前――『シルバーイーグル』を歓迎しよう」
『有難うございます。――予め言っておきます。ワタシは騎士として無辜の民を傷つけるような作戦には手を貸しません。それだけはくれぐれも……』
当然だな。こいつは人々を守るために作られた存在だ。我も無理強いはさせるつもりはない。
「判っている。そもそも、理由なき破壊なぞは我とて好まぬ。それに手を組むのだろう。ならばお前と我らは対等だ。宜しく頼むぞ。シルバーイーグル」
『はい。今は手を取り合い、元の世界に戻る為に協力を惜しみません。宜しくお願いします』
予想外にも程があるが、『シルバーイーグル』の手を借りる事が出来たのは非常に喜ばしい。
『プリズム・プラネット』の説得は美月が出来るが、『クルセイジャー』との交渉は一から考える必要があったのだ。『シルバーイーグル』が手を貸してくれるのであれば、説得のハードルががくっと下がる。
『デモンロイド』は……アイツの事は考えるのは後にしよう。凶悪すぎて今、考えても仕方ないし頭が痛くなる。
そんな事より――前々から欲しいが諦めていたうちの一つである合体ロボの一つが手中に収まったのだ。嬉しくて仕方ないな!
「イヴさん、なんだか凄く嬉しそうですね」
「うむ。嬉しい」
「総帥がそういうのも珍しいですね……」
「そうでござるな」
男のロマンの一つだからな! このままこいつの構造を調べる事が出来れば念願のゲセルシャフト手製の人型ロボを作るのも夢ではない。
異世界でロボ……うむ。いけそうな気がする。帝国もやっていたからな!
この世界に来たのは不幸な事故だが、禍転じて福を成す。
やってみせよう!
その前に腹が減った。テルミズ王に晩餐に全員招かれているので行くとしよう。話しに聞けば温泉もあるようだ。
温泉か。久しく入ってないが、まさか異世界で入るとは思っても見なかった。
ここいらで疲れを取るとしよう。明日も忙しくなるからな。間違いなく。




