↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/67

17話 狼煙は上げられた

前話にタイトルを入れる不始末を……!やっぱり出先で投稿するとダメですね……。

今回は三人称視点となっております。閑話的なお話です。ご了承ください。

 ウケラノス帝国、帝国首都ウケラノスの帝城の最上階のテラスにて、絶世の美と畏怖を兼ね備えた美女がワイングラスを手に、空を貫く黒い光を愉快そうに眺めていた。

 女性の衣装は凛々しさと豪華さを兼ね備えた軍服で、マントには金色と赤いド派手な刺繍が施されている。重そうなマントだが、女性は意にも関した様子はなく、それが当たり前のように身に着け、優美にワインを傾ける。

 風が紅蓮のように赤い髪を艶やかになびかせ、赤いベージュの唇を湿らす様にワインを含むと、味がお気に召したのか上機嫌に声をあげる。


「――天に上る黒い光。北方の地に落ちた凶星(きょうせい)。爺の占いもたまには聞くものだ。誰か居(お)らぬか!」

「はっ!」


 すぐそばに控えていたのだろう。黒づくめの男が物陰から現れ、彼女に敬意を払うように膝を付いていた。


「エッケザックス国近くにいるアリシアに伝えよ。余(よ)は凶星が欲しい。とな」


 彼女の言う凶星とは当然、マガツの事ではない。あんな旧型は吐いて捨てる程にある。そんなゴミよりももっといいものだ。

 その事を理解している黒づくめの男ははっきりと頷く。


「はっ! 直ちに」


 黒づくめの男は音も立てずにその場から消えさる。

 女性は満足そうに頷くと、残っていたグラスの中のワインを飲みほし、ぺろりと赤い唇を舐める。


「世界は変わる。変えてみせる。――下らぬ神の手から世界を取り返す。そのための凶星だ。他の国も動くだろう」


 女性――ヒルデガルド・アース・グランドール・ウケラノスは確信めいた予想を呟くが、誰にも聞くことはなかったが、それは的中していた。

 グランギニョル王国、ニーベルング教国、ダグザ商国、レーヴァテイン新生魔王国、ポセイドン海洋国家、秘境都市ノアなど、力を感じ取った極わずかな人々が天に上る黒い流星を見た。

 狼煙は上げられたのだ――。


 ◆◆◆


 エッケザックス国では、国王が知らせを受け、脂汗をダラダラと流していた。


「も、もう一度いってくれぬか?」

「はっ! 突如現れた4名の手により、わが軍は、敗北! マガツも破壊され、壊滅しました!」


 ひれ伏せながらも、汗だくで報告するのはマガツに付き添っていた副官の男。あの戦場からたった一人、ワイバーンに乗って逃げおおせ、エッケザックスまで戻ってきたのだ。

 知らせを受けたエッケザックス国の王は贅肉が詰まった腹を震わせ、顔を青くしながらどさりと玉座に座り込むとミシミシとその体重で玉座が軋み、ヒビが入った。


「そそそ、そんな。数千の魔法杖にマガツまで向かわせたのだぞ!? それが壊滅? そんな話が信じられるか!」


 エッケザックス国の国王は拳を固く握りしめどんっと肘掛に叩きつける。

 自分でやっておいて痛かったのか、苦痛に呻いて拳をさする国王。


 副官の男はそんな王を笑う事は出来なかった。自分もまだ信じられないのだ。

 型落ちの旧型とは言え、魔法杖はウケラノス帝国を大国に引き上げた歴史を代えた武器だ。

 マガツは城壁すらもうちこわし、巨人の如き無双の働きをする兵器。

 それがあっと言う間に、ただ一人の少女の手により打ち砕かれれば自分の目を疑いたくもなるだろう。

 だが、幾ら否定してもそれが真実なのだ。

 一方的な勝利と略奪の幸福の未来しか思い描いていなかった国王は頭を抱え、どうするべきか考え込む。


「愚かですわね。エッケザックスの国王よ」


 そんな国王の元に、扉を大きく開き威風堂々を体現した背の小さな女性が現れた。名匠の手により仕立て上げられた軍服を身にまとうその姿は、背は小さいが胸は大きく腰は細くお尻も大きい。髪形は姉譲りの紅蓮のツインテール。

 しかし、彼女から感じる気迫は国王でさえも怯ませ、押されていた。小さな見た目なのに、まるで巨人のように大きな気迫を感じるのだ。


「ア、アリシア第四王女殿下」


 勢いよく国王の前に前に現れたのは、ウケラノス帝国第四女王、アリシア・アース・グランドール・ウケラノスだ。

 キッと釣り目で射殺さんばかりに国王を睨みつけるアリシア。


「いつまで見下ろしてますの。図が高いですわ!」

「は、ははぁぁっ! 申し訳ございませんんんん!!」


 国王は慌てて玉座から転がり落ちるように降りて、床に頭が擦りつくほどにひれ伏す。

 第四王女とはいえ、ウケラノス帝国はアース大陸の三分の一を支配する皇族なのだ。吹けば飛ぶようなエッケザックス国の王より遥かに立場は上だ。

 そんな王を汚らわしい汚物を見るような目で見下し、アリシアは告げる。


「聞きましたわよ。お姉様から授けられた魔法杖、それにあの旧型をもってしても負けたそうですわね」

「そ、それはその……」

「貴方に発言を許した覚えはありませんわ!」


 アリシアは容赦なくブーツで国王の頭を踏み抜き、ぐりぐりと踵で後頭部を押さえつける。

 国王は床に額をこすり付け、呻きながらも「申し訳ございません」と言うだけで精いっぱいだ。それを見ていた副官の男がちょっと羨ましいと思ったのは内緒である。


「お姉様は属国に加わる際、おっしゃられた筈ですわよ。帝国の名を汚すような真似はするなと。それがなんですの? 欲しいから奪うために戦争しかける? それで負けた? 馬鹿通り越して幼児ですの? 幼児未満ですわね。愚かすぎて怒りしか湧きませんわ!」


 アリシアはゲシゲシと、国王の頭を踏み続ける。額を何度も床に叩きつけられた国王の額から血がにじみ出て赤いカーペットを滲ませる。


「戦争ってのは、交渉の最後の手段なのですわよ。前提交渉をすっ飛ばして最後の最も愚かな方法を取るなんて大馬鹿ですわ」

「申し訳ございません、今後は」

「お黙りなさい!!」


 今度はつま先で国王の頭を蹴り飛ばし、あおむけに転がすアリシア。


「貴方に今後なんてありませんわ」

「え、それは……どういう」


 国王は無礼と判っていても慌てて起き上がり、アリシアを見やると、答えは直ぐに返ってきた。


「ウケラノス帝国第四王女アリシア・アース・グランドール・ウケラノスの名において、エッケザックス国を除籍。今日この時を持ってエッケザックス国は消滅ですわ」

「それはっ!? そんな勝手が」

「既にお姉様――ヒルデガルド皇帝陛下から命は下ってますの。もし、抗うのであれば――判りますわね」


 抗う。それの意味は――大国であるウケラノス帝国と一戦を交えるという事だ。すなわち、滅亡する事は変わらないとアリシアは告げていた。

 戦力差で言えば、エッケザックスが1とすれば、ウケラノス帝国は10000。

 戦いにもなる訳がない。一方的な蹂躙で終わるだろう。

 命が惜しければ、このまま退位して、国を明け渡すのが一番だとそれが自分の最後の役目――仕事だと理解したエッケザックスの国王は膝を付いて崩れ落ちた。


 伝えるべきことを伝えたアリシアは、次に未だひれ伏したままの副官の男に声を掛ける。


「そこの者、貴方はあの戦場で何が起きたのか、知っていますわね?」

「はっ、はい!」

「ならば、わたくしたちを案内なさい」

「は、はいい!!」


 何処にとは言わないだけこの副官は優秀だろう。もし何処になんて言ってしまえば自分も蹴られたに違いない。そう思った時に――何処にって言えば良かったと後悔するがそれはもう遅い。

 案内する先は言うまでもなクサナギ国――あの悪魔がいる場所だ。

 言われるがままに案内すべく、未だ崩れ落ちた国王だったモノがいる玉座の間から退出し、ワイバーンがいる着陸場に出た副官の男。

 そしてそこで気づく。 わたくし、達(・)だったことに。


「きゅるるる………きゅるー……」


 ワイバーンは怯え竦み、情けない声を出して震えていた。それはそうだろう。

 ワイバーンとは比べるまでもない、巨大な飛竜が着陸場を占拠していた。その飛竜達の全てが魔導兵器で武装しており、もしそれが放たれればあっと言う間に王都が火の海に沈むだろう。

 その中で、青い飛竜に飛び乗ったアリシアは姉譲りの、にたりとした笑みを浮かべてクサナギ国の方角を見やる。


「待ってなさい。必ず、お持ち帰りしてさしあげますわ。凶星。そしてお姉様にいいこいいこと撫でて貰うのですわ!」


 アリシアは知るだろう。今から出あう凶星というものが、おのれの理解の範疇を超えた者達であることを。そして皇帝が欲するほどのものであることを――。

前話にタイトルを入れる不始末を……!やっぱり出先で投稿するとダメですね……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。