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下層の第三共同食堂は、常にむせ返るような熱気と悪臭に支配されていた。
推進系の熱漏洩をモロに受けるこの区画は、気温三十八度、湿度八十パーセントという不快指数の限界を常に維持している。天井の低い空間には、何百人もの下層民たちの体臭と、古いオイルの匂い、そして配給口から漂ってくる焦げた工業用タンパク質の臭いが、逃げ場もなくどろりと澱んでいた。
作業を終えたスクラッパーたちが、油にまみれた作業着のまま、重い足取りで配給の列を作っている。誰もが無口で、疲弊しきっていた。
列に並ぶカイもまた、周囲の喧騒や群衆の苛立ちには一切の無関心を装っていた。しかし、その思考の裏側は異常なほどの高速で回転を続けている。
作業服の隠しポケットにねじ込んだ、旧式端末の硬い感触が太ももに当たっていた。あの、完璧な精度で刻まれた幾何学的な傷のデータ。上層の連中が書いたどんなマニュアルにも、どんな教義にも存在しない『外側の事象』が、そこには確かに保存されている。
配給の列が少しだけ進み、カイの番が来た。
油と汚れにまみれた配給機から、プラスチックのトレイにドロリとした灰色のペーストが吐き出される。酸い匂いが鼻を突いた。大豆タンパクと微細藻類を合成した代物だが、潤滑油の代わりに使われている工業用脂質が混ざっているせいで、ひどく胃にもたれる味がする。
カイはトレイを無造作に受け取ると、壁際の空いた席に腰を下ろした。
ゴゴゴゴゴ……。
その時、床下から獣のうめき声のような低い振動が響き渡り、食堂全体が微かに揺れた。
巨大循環ポンプ『ウンディーネ』の駆動音だ。総水量八・五億トンを船内に巡らせるこの巨大な心臓は、本来の中心軸からわずかに重心がズレている。そのせいで常に異常なねじれトルクが生じており、時折こうして船全体を軋ませるような悲鳴を上げるのだ。
カイの指先が、無意識のうちにテーブルのボルトを撫でた。
ウンディーネの不規則なノイズのピッチを脳内で分解し、どのギアの噛み合わせが狂っているのかを物理的に計算してしまう。それはカイにとって、呼吸をするのと同じくらい逃れられないメカニカルな衝動だった。
「またウンディーネが咳き込みやがった」
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