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漂流国家アステリア ――「 リサイクル対象の屑拾い」が無慈悲な選別を船の全権掌握で逆転する   作者: 端野ゼロ


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広場全体を埋め尽くした下層民たちの怒号と絶望の悲鳴を、パワードスーツの冷たい関節駆動音が容赦なく押し潰していった。


ウィィィン、ウィィィン――。


不快な高周波のモーター音を響かせながら、天井の隔壁ハッチから漆黒の電磁ワイヤーで降下してきた四機の治安維持ドローンが、じわじわと広場の外縁から群衆を包囲していく。その頭部に備えられた単眼の光学センサーが、深紅の光を不規則に明滅させながら、獲物を定めるように左右へ振られていた。


「離せ! 俺はまだ動ける! まだボルトを回せるんだ!」


「嫌よ、お父さん! 行かないで!」


血を吐くような叫び声があちこちで弾け、肉体が装甲板に叩きつけられる鈍い衝撃音が連続して響く。

ドローンたちは人間の感情を処理する論理回路を持たない。ただ、大航法士ヴァルガスが発動した『プロトコル・デルタ』のリストに従い、物理的に対象者ノイズを識別し、淡々と「質量投棄」の処理を進めていく。


カイは群衆を押し分け、狂ったように走り出していた。


ドロリとした汗とオイル、そして死の恐怖に狂った人間たちの体温が、生々しくカイの肌を擦っていく。突き飛ばされ、肩がぶつかり、足元に這いつくばる誰かの手を踏みつけながらも、彼の漆黒の瞳はただ一点――ガルドの背中だけを捉えていた。


エリンは下層民たちの剥き出しの暴力とパニックに押し潰されそうになりながらも、カイの背中を必死に追いかけていた。彼女の清潔な制服はすでにちぎれ、周囲の脂まみれの皮膚と衝突するたびに灰色に汚れていく。それでも、彼女の鋭い瞳はカイを見失うまいと、その無骨な作業着の背中をトレースし続けていた。


「師匠……! ガルド!」


カイの叫び声は、耳を劈くサイレンと群衆の絶決にかき消された。


広場の中心近く、古傷の左肩を庇うようにして立ち尽くしていたガルドの前に、一機のドローンが音もなく降り立った。

ドローンのセンサーが細く収縮し、ガルドの胸元に照射された赤いレーザーが、彼の認識コード『DE―4―〇〇九一』を緑色に上書きする。認証完了。


ウィィィン――。


強固な油圧ピストンで駆動する金属のアームが、ガルドの両腕を強引に掴み上げた。


「摩擦の無駄だ……!」


カイは叫び、右手に握りしめていたチタン合金製スパナを、自転の遠心力と全身のバネを乗せた完璧な軌道で振り抜いた。


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