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狙いは、ドローンの頸部アクチュエーター。そこを潰せば、油圧系統がパンクしてアームのロックが外れるはずだった。
ガキィィィン!
しかし、カイの渾身の一撃がドローンの外殻に届く直前、不可視の電磁シールドが空間に激しい火花を散らした。
スパナを伝わって、カイの両腕の骨を物理的に破壊せんばかりの凄まじい反発エネルギーが逆流してくる。
「ぐう……っ!」
カイは装甲板の上を数メートルも滑るようにして弾き飛ばされた。
衝撃で呼吸が止まり、手のひらの皮膚が熱で白く焼け焦げていく。それでも、彼はすぐに身を起こし、再びスパナを握り直そうとした。
「カイ、だめよ! そのシールドは物理的な質量攻撃を百パーセント熱変換するわ! 計算上、突撃を繰り返せばあなたの肉体が崩壊する!」
エリンは群衆をかき分けてカイの元へ滑り込み、彼の肩を必死に掴んで引き留めようとした。彼女の白かった指先は、カイの作業着から移った黒いオイルで汚れていた。
拘束されたガルドがカイの前に立ちふさがるようにして、静かに首を振った。
ガルドの隻眼には、恐怖も、絶望もなかった。ただ、すべてを冷徹に受け入れたスクラッパーの、静かすぎる瞳がそこにあった。
「星を見るな、カイ」
ガルドのしゃがれた声が、真空の底から響くように、カイの耳へと真っ直ぐに届いた。
「お前が生き延びるための……ガス代だと思え」
ガルドは不器用に、しかし力強く、自らの右足でカイの胸元を軽く蹴り飛ばした。カイをこれ以上の反逆行為から物理的に遠ざけ、ドローンの排除対象から外すための、師匠としての最期の洗礼だった。
ウィィィン――。
無慈悲な金属のアームがガルドの身体を持ち上げ、彼は他の「余剰質量」たちと共に、天井の暗いハッチの向こうへと吸い込まれていく。
ハッチが重々しい金属音を立てて閉鎖された。
カイは床に這いつくばったまま、ただ、遠ざかるガルドの背中を見上げることしかできなかった。手のひらに残るスパナの冷たい感触だけが、彼の現実を無残に繋ぎ止めていた。
カイの身体が、絶望と怒りの過負荷で硬直する。
「カイ、立って! まだ完全に終わったわけじゃないわ!」
エリンがカイの油まみれの腕を、全身の体重をかけて強引に引っ張り上げた。彼女の早口な声が、カイの耳の奥にダイレクトに突き刺さる。
「ドローンの質量搬送軌道と『プロトコル・デルタ』の物理プロセスから逆算したわ! 選別されたペイロードが第一エアロックへ移送され、減圧されるまで、まだ二百四十秒の猶予がある! 第一エアロックを一望できる、監視デッキへ回るのよ! そこなら、物理的な通信バイパスが繋がるかもしれない!」
その言葉が、カイの死んでいた瞳に、再び鋭い光線を灯した。
カイは無言で立ち上がり、スパナをきつく握り直した。
二人は、狂気じみたサイレンが鳴り響く非常通路に向かって、猛然と走り出した。
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