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転生者の私は〝推し活〟するため聖女になりました!  作者: 玉響なつめ
第十四章 推しへの愛なら負けません

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第135話

「今回の使節の役目を終えた後、彼女には新たに封じの術を行う予定でした」


 成長と共に能力は強まっていく。

 幸いにも師であるヴァセーヌさんの傍にいる間、アエスさんは生意気な態度を取ることはあってもそれ以上の行動は起こさなかった。


 力が強まったのは、私たちの国の、戦争が終わる直前くらい、らしい。

 穏便に話がまとまった、神鳥の奇跡が起きた……そんな話を耳にして、彼女は相当取り乱したらしい。

 その際に魅了の力が溢れ出しかけて、術が弱まった……というか、彼女の力が強くなっていると確認されたそうだ。


「取り乱したってのは……」


「よくわからないんです。とにかく誰かが不幸じゃないと、完成しないとかなんとか……」


「ああ、はい」


「すみません。こんなんじゃ何もわかりませんよね……」


 プセーマさんはしょんぼりしたけど、私はわかってしまったのでオッケーである。

 そう、要するにアエスさんは『推しが不幸にならず円満解決するとは何事か』と憤った結果、能力が強まったという……ううん、ある意味推しへの愛の強さによって覚醒したって感じでは……?


(はた迷惑だけどね!!)


 とにかく彼らはヴァセーヌさんの傍にさえいればアエスさんはなんとかできるだろうと考えて、今回の使節団が出ている間に母国ではより強力な封じの術を準備しているのだという。

 ただそうすることによって他の能力……彼女の予知も封じてしまう可能性があるため、アエスさんには秘密にしているんだって。


 まあ、その予知は前世の記憶なので能力じゃないと思うけどね!!


「今回恥を忍んでこの話をお二人にしたのは、アエスを止める手立てが一つだけあるからなのです」


「手立てですか」


「はい。この方法は使いたくないとヴァセーヌ様より聞いておりますが、念のためにとわたくしが内密に荷物に忍ばせ持って参りました。使わないに越したことはないと思っておりましたが……」


 しょぼくれる美人は絵になるなあ、なんて思いつつ、もったいぶらずにそれを使ってくれたらこんな大事になっていなかったんじゃないのかって思わず不満を抱いてしまった。


「なら何故ヴァセーヌ殿が倒れてすぐに使わなかった?」


「それは……この道具には、副作用があるのです。それゆえに使うのを躊躇ってしまって……」


 私の心を代弁したかのようなアドルフさんの言葉に、プセーマさんは気まずそうに視線を泳がせた。

 彼女もそれなりに責任を感じていたらしい。


 そうして出してきたのは、一組の腕輪だ。

 少々ゴツいデザインの大ぶりな金色の腕輪は、何やら複雑な呪文が刻まれている。


「古代文字……ですかね。うーん、これは……ラ・セーヌ期? いや、もう少し古い?」


「まあ! さすが聖女様、博識ですわ。その通り、これはウ・セーヌ末期からラ・セーヌ前期に作られたとされる犯罪者用の(・・・・・)腕輪なのです」


 ウ・セーヌだのラ・セーヌだのなんだかわからんと思うが、これはウーヌの歴史だ。

 大体二千年前くらいの話だと思ってくれればいい。


 ちなみに私は聖女長様にいろんなところの宗教についても触りだけでも知っておけってスパルタ教育を受けた結果、記憶に残ってただけだよ!

 文字に見覚えがあっただけで、読めるわけではないのだ!!


「それで、これってどういうものなんです?」


「……装着者が能力を使おうとすると、内側から針が出て苛む拷問具です。そして針が出るだけではなく、能力の強さによってそこから更なる痛みを与える術が刻まれております」


「うわ」


「そしてこれは、一度つけると……ウーヌゥ神の許しを得るまで外すことができない、つまりほぼ外れることはないとされているのです……」


 伸ばしかけていた手を思わず引っ込める。


 えげつない……!

 えげつない道具が出てきた……!!


 いやあ、これはさすがに顔見知りにつけるのは躊躇うのも頷ける。

 けど、アドルフさんはそれを聞いても表情を変えなかった。


 さすが推し。さすがの冷静さだぜ……!


「あの魅了の力は魂に影響を及ぼすもの、そのようにわたくしたちは定義しております。ゆえに聖女様の癒やしの力が魂に影響を及ぼすものであり、それを常時受けているミュラー様のお二人ならばあの子の魅了は影響しないはずです」


 プセーマさんは、私たちの前に膝をついた。

 この先、彼女が何を言うかは予想ができている。


「すでに魅了の力で人々を操るあの子にわたくしは近づくことすらできませんが、戦う術をお持ちのお二人ならば! どうか!!」


 その頬を塗らす涙を見ても、私たちの気持ちが揺らぐことはない。

 なんて勝手なんだろう。

 やっぱりその気持ちが、強かった。

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