第29話 極北支部の用心棒 後編
しかし運動量で言えば明らかにオレの方が激しく動いている。
シドウは常に自分にとって有利な位置をキープしその場からほとんど動いていなかった。
この戦いが長引けば先にバテるのは間違いなくオレの方だ。
出来るだけ早く決着を付けなければ。
「中々しぶといね…」
シドウに向けてそう言ったオレはもうすでに肩で息をしていた。
「お主は余りに無駄な動きが多過ぎる…我の敵ではない」
シドウの方はまだまだ力に余裕があるようだった。
これはちょっと…やばいかも(汗)。
「加勢しようか?」
この激闘の真っ最中のオレにレイが声をかける。
確かにこの申し出は有難いんだけどここでその言葉に甘える訳にはいかない。
だってこれはオレの修行なんだから!
「大丈夫!まだ行ける!」
「ほう、加勢を断る余力が未だあるか」
オレの発言にシドウが感心した。
それっとちょっとオレを過小評価してない?
まだまだオレの本気はこんなもんじゃないぞ!
シドウの放つ真空波を避けながらオレは筋肉の動きに想いを乗せる。
気の力を纏った肉体は更にその能力を向上させる。
今までこんな事、狙っても出来なかったのに。
「何だと?」
シドウがオレの違和感に気付く。
流石は達人、周囲の微妙な変化にも敏感だな。
オレはと言えば自分のスピードが上がった事で想定的に相手のスピードを遅く感じていた。
「もっともっとギアを上げるぜ!」
コツを覚えたオレは最初のギリギリの攻防が嘘みたいに余裕を持っていた。
「くっ!まさか我との戦いの最中に成長するとは!」
オレの急激な変化にシドウの顔にも焦りの色が見えて来た。
だが達人のシドウの事だ、まだとんでもない奥の手だってあるに違いない…油断は出来ない。
カチン…。
オレの想像通り、シドウが剣を収めた。
これは…何かある!
オレは間合いを詰めずにシドウの動きを慎重に探る。
ここで判断を誤れば不覚を取りかねない。
この戦いの最中、レイは部屋に入ろうとする他の雑魚共の処理をしてくれていた。
しっかり空気を読んでいい仕事をしてくれる。レイが仲間で良かったぜ。
「早く決着をつけてよね!私こう言う地味なの好きじゃないんだから!」
…あれ?レイは結構ご機嫌斜めな御様子。
こりゃあんまりこの戦いを長引かせられないなぁ…(汗)。
「隙あり!」
このタイミングでシドウの真空波!
オレは危うく体が真っ二つになるところだった。




