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希望通り婚約破棄したのになぜか元婚約者が言い寄って来ます  作者: Karamimi


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第11話:今更そんな事を言われても困ります

 悔しそうに唇を噛むエヴァン様。一体何を言っているのだろう…


「騙されたとは、どういう事ですの?」


 エマがエヴァン様に聞き返した。すると


「約1年前、クラーク殿下が留学の為この国にやって来た。見た目が美しいのはもちろん、聡明で優しく、武術も優れている、そんな彼に君を取られてしまうのではないかと、漠然とした不安を抱えていたんだ。そんな僕に近づいてきたのが、ナタリー嬢だった。あの女の話術にすっかり騙された僕は、クラーク殿下が帰国するタイミングで、君を連れて帰ると思い込んでいたんだ。だから…いつかクラーク殿下に取られるのなら、自分から婚約破棄をしようと決意したんだ…でもまさか、クラーク殿下には婚約者がいて、君とはただの友人だったなんて…」


「あの…エヴァン様。いくらナタリー様に騙されたとしても、クラーク殿下と私が結婚するなんてあり得ないと思うのですが…そもそも、他国の王族が、婚約者がいる令嬢に手を出せば、それこそ国の評判は下がりますわ」


 100歩譲って、たとえ私とクラーク殿下が愛し合っていたとしても、私たちが結ばれることは絶対にない。そんな事、非常に優秀なエヴァン様なら簡単にわかる事だと思うのだが…


「そうだね…でも、クラーク殿下は大国、メルソニア王国の王太子殿下だ。殿下が本気を出せば、我が国なんて簡単に滅ぼすことが出来るからね…それにナタリー嬢からは、クラーク殿下がルーナを自国に連れて帰れる様、既に陛下に話しをしていると聞いていて…」


「なるほど、要するにナタリー様の嘘にまんまと騙され、ルーナにつらく当たり、婚約破棄をしたのですね。はぁ~、ナタリー様のやりそうな事ね。そもそもエヴァン様、ナタリー様がルーナを嫌っていたことはあなたも知っていたでしょう?それなのに、どうしてナタリー様の話を鵜呑みにしたのですか?」


 隣でため息を付きながら、エマがエヴァン様に聞いている。


「確かにナタリー嬢がルーナを嫌っていたことは知っていた。でも僕はあの時、完全に思考回路が停止していたんだよ…それにルーナはクラーク殿下ととても仲良しだったからね。一緒に街に行ったと聞いている」


「ええ、ずっとクラーク殿下から婚約者様の事で相談されておりましたので。婚約者様の誕生日プレゼントを探すため、街に行った事もありました。でも、いつもエマもいましたけれどね」


「そうよね、ルーナは“エヴァン様に勘違いされたら嫌だから、2人きりにはならない様にしないと”と言っていたから、いつも私も一緒でしたわ」


 そう、私はクラーク殿下と2人きりになった事なんて一度もなかったのだ。


「…ああ、クラーク殿下から聞いたよ…本当に自分の浅はかさが嫌になる…」


 そう言うと、エヴァン様は完全に俯いてしまった。この何とも重苦しい空気、嫌だわ…


「えっと…とりあえず、エヴァン様の言い分は分かりました。ただ、今更それを言われても…もしかして、一方的に婚約破棄をしてしまったから、エヴァン様の名誉の回復を私にも手伝って欲しいという事ですか?それでしたら、ご協力出来ますよ。私達はお互い納得して婚約破棄をしたという事にしましょう」


「ちょっと、ルーナ。あなたは何を言っているの?エヴァン様が勝手に勘違いして、勝手に婚約破棄したのだから、エヴァン様が悪いのじゃない。それなのに、何が名誉回復よ!」


 隣でエマが怒っている。


「でも…謝罪は受けたわけだし…とりあえずエヴァン様が次の婚約者が見つかる様に、元婚約者としてフォローしてもいいかと思うのだけれど…だって私、エヴァン様が大好きだったのよ。かつて好きだった人には、幸せになって欲しいじゃない」


 こんな形で婚約破棄してしまったが、それでも1年前までは本当に幸せだったのだ。だからせめて、エヴァン様の幸せを願いたい、元婚約者として。そう思ったのだ。


「ルーナ、君って子は…僕の名誉回復はしてもらわなくてもいいよ…ただ、1つだけ聞かせてほしい。君はクラーク殿下の事をどう思っていたのだい?」


 真剣な表情で私を見つめるエヴァン様。


「クラーク殿下は、私にとって大切なお友達の1人ですわ」


 間髪入れずにそう答えた。そう、大切な友人だ。だからこそ、彼が国に戻り、大切な婚約者と幸せになって欲しいと願っている。


「…やっぱり、そうだったんだね…ルーナ、僕の勘違いのせいで、君を深く傷つけてしまってすまなかった。本当にこの通りだ」


 改めて頭を下げるエヴァン様。だから、もう謝罪はいいんだってば。


「エヴァン様、頭をあげて下さい。謝罪はもう結構ですわ。どうかもう、気にしないで下さい」


 必死にそう伝えた。やっと頭をあげてくれたと思ったら、急に真剣な表情で真っすぐ私を見つめた。


「ルーナ、この1年、何の落ち度もない君に酷い態度をとってしまって本当にすまなかった。自分の醜い嫉妬心のせいで、大切なルーナを傷つけて失ってしまった。きっとルーナは、沢山泣いて沢山傷ついただろう…こんな僕の顔なんて、もう見たくないかもしれない。でも、僕はやっぱりルーナが好きだ。世界で一番君の事を愛している。正直僕は、ルーナ以外の女性と結婚するくらいなら、廃嫡してずっと独身でいようと思っている。だから、もう一度婚約者になるチャンスをくれないかい?」


 はっ?この人、一体何を言っているの?訳が分からず、ついエマの方を見つめてしまった。エマも訳が分からないと言わんばかりに、口をポカンと開けている。


「あの…申し訳ございませんが、私はもうエヴァン様と結婚するつもりも、婚約を結び直すつもりもありません。どうか他を当ってください。私はこの1年で、ほとほと疲れ果てました。はっきり言って、どんな理由があれ、いつ態度を変えるか分からない人間と、また婚約何て結び直せません」


 私がこの1年、どれほど辛い思いをして来たか、この人、分かっているのかしら?あまりにも自分勝手な意見に腹が立ってきて、ちょっと酷い事を言ってしまったが、仕方がないだろう。


「その事は重々承知している。ゼロ…いいや、マイナスからのスタートだという事も、承知している。でもどうしても、君を諦める事が出来ないんだ。だから申し訳ないが、僕はこれからも君にアプローチさせてもらうよ。一度は愛し合ったのだから!」


 そう言うと、優しい微笑を見せたエヴァン様。その顔…私が好きだった顔だ。


 でも、やっぱり私は、1年間無視されてきたことを忘れる事なんて出来ない。

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