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希望通り婚約破棄したのになぜか元婚約者が言い寄って来ます  作者: Karamimi


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第12話:やり直す事なんてできません

「えっと…エヴァン様、あなた様の気持ちは分かりましたわ。でも、あなた様はナタリー様の話を鵜呑みにして、1年もルーナを傷つけましたよね。この1年、ルーナがどれほど傷つき涙を流してきたか、私はずっと傍で見てきました。もし本当にルーナの事を愛しているなら、もうルーナを解放してあげたらいかがですか?それだけの事を、あなた様はなさったのですよ」


 黙って話を聞いていたエマが、私の気持ちを代弁してくれた。私はこの1年、本当に辛くて悲しかった。もう二度と、こんな悲しい思いをしたくないのだ。どうかもうそっとしておいて欲しい。


「エマ嬢の言う事は最もだ。君はずっとルーナの傍で彼女を見守ってくれていた事も知っている。本当にあの時の僕は、大バカだったよ。自分でも分かっている。それでも僕は、ルーナの傍にいたい。確かに君が言う様に、もう関わらない方がルーナにとっていいのだろう。でも…どうしても諦めきれないんだ…だからどうか、傍において欲しい。もちろん、今すぐどうこうなりたいなんて思っていないよ。例えば、友達とかでもいいし…」


 辛そうな顔をするエヴァン様。そんな顔をされたら、なんだかこっちが悪い事をしているみたいじゃない。


「あの、エヴァン様、あなた様の気持ちは分かりましたわ。でも…私はもう傷つきたくはないので、あなた様と婚約を結び直すことは考えておりません。ただ…また昔の様に、お友達としてなら…」


「ちょっと、ルーナ!」


「だって、エヴァン様の悲しそうな顔を見たら、友達くらいならいいかなって…」


「本当にルーナは甘いんだから!」


 頬を膨らませて怒るエマ。確かに私は甘いかもしれない。でも、どうしてもエヴァン様を突き放すことが出来ないのだ。きっと私の弱さでもあるのだろう。


「ありがとう!ルーナ。よかった、それじゃあ、これからもよろしくね。そうだ、僕がルーナのボディーガードになるよ。令息たちに囲まれて困っていただろう?」


 ぱぁぁっと明るくなったエヴァン様が、なぜか私の手を握りながらそんな事を言っている。


「ちょっと、エヴァン様、ルーナに気安く触らないで下さい。ボディーガードなら私がいるから大丈夫ですわ!」


「エマ嬢、君は令嬢だろう。万が一令息が襲い掛かってきたらどうするんだい?僕は武術にも優れているし、すぐに対処できるよ。それに、友達なら手くらい触れても問題ないだろう?君だって、ルーナとよく手を繋いでいるではないか?」


「それは女同士だからですわ。それにあなたは、ルーナを傷つけた張本人なのですよ」


「その件は本当に申し訳なく思っているよ。だからこそ、ルーナを今度は守りたいんだ。絶対に!」


「…わかりましたわ。ただ、ルーナはあなたの婚約者でも何でもないのです。ルーナの恋を邪魔する事だけはしないで下さいね」


 エマが折れた。まあ、私達より爵位の高い公爵令息でもあるエヴァン様に、あまり強くは言えないわよね…


「ありがとう、エマ嬢。それじゃあ、馬車まで送るよ。もしかしたら令息どもが、待ち伏せをしているかもしれないしね」


 私の手を取り、歩き出したエヴァン様。こうやってエヴァン様と手を繋いで歩くのは、いつぶりだろう。でも…もう私たちは婚約破棄したのだ。大きくて少しゴツゴツした手…ずっと触れたかった手…でも、もう遅い…


 すっとエヴァン様の手を振りほどいた。


「エヴァン様、もう私たちは婚約者同士ではないのです。どうか気安く手に触れるのは、お控えください」


 そう言ってエヴァン様に頭を下げた。


「…すまなかった…久しぶりにルーナに触れられたのが嬉しくてつい…これからは気を付けるよ」


 エヴァン様が悲しそうに微笑んだ。だから、そんな顔をしないでよ。私が悪い事をしているみたいじゃない!


 気を取り直して3人で校門まで向かう。


「それではまた明日」


「ええ、明日ね」


「ルーナ、気を付けて帰るんだよ。僕はルーナの馬車がきちんと動き出すまで待っているよ」


 そう言ったのはエヴァン様だ。別に見送ってもらわなくても大丈夫なのだが…そう思いつつも、馬車に乗り込む。


 ふと窓の外を見ると、ずっと私の馬車に向かって、エヴァン様が手を振り続けていたのだ。本当に一体どうしてしまったのだろう。なんだか申し訳なくて、私も手を振り続けた。それこそ、本当に姿が見えなくなるまで。


 なんだか今日は疲れたわ。まさかエヴァン様からこの様な話を聞くだなんて。でも、いくら騙されていたと言っても、まさかナタリー様の話を鵜呑みにするなんて。それにもし私に相談してくれていたらきっと、すぐに誤解は解けたはずなのに。


 そう考えると、エヴァン様は私よりもナタリー様を信頼していたのだろう。物心ついた時からずっと一緒にいたのに、どうして私を信じてくれなかったのかしら?


 その現実が無性に悲しくなると同時に、私は彼にとって一体何だったのだろうという、空しい気持ちになった。


「やっぱり私は、エヴァン様ともう一度婚約を結び直すことはないわ…いくら少し前まで大好きだったとても…」


 もし万が一また無視されたら…もう二度とあんな悲しい思いをしたくはないと言う気持ちも大きいが、それよりなにより、私に相談してくれず勝手に物事を進めた事が、悲しくてたまらないのだ。私とエヴァン様の関係は、その程度だったのだと。


 とにかく早く婚約者候補を探して、エヴァン様には諦めてもらわないと…

次回、エヴァン視点です。

よろしくお願いしますm(__)m

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