効きすぎる
ノクシアは、ゆっくりとしゃがみ込む。
小瓶を取り出し、光る涙を一滴──
そっと指先に乗せる。
ノクシア
「よく見ておきな」
みちるたちは息をひそめる。
ノクシアは、エモラの花へと手を伸ばす。
イネリア
「素手で平気なのかだべ……?」
ノクシアは軽く肩をすくめる。
ノクシア
「慣れだよ」
ノクシア
「ただし──」
一瞬だけ、視線が鋭くなる。
ノクシア
「近づきすぎるんじゃないよ」
触れた瞬間──
花の輪郭が、ふっと揺らぐ。
ディジル
「おい、消えるぞ……!」
その瞬間。
ぽたり、と。
涙が花びらに触れる。
ふわり、と揺らいでいた花が、ぴたりと止まる。
みちる
「……止まった」
フワン
「これが“固定”……」
ノクシア
「今だよ」
迷いなく、花を摘み取る。
霞むことなく、確かな形を保ったまま。
ノクシア
「……ひとつ」
ポロル
「すごいロル……!」
みちる
「きれい……」
ポロル
「触ってみたいロル〜♪」
ディジル
「おい、やめ──」
あっ──
ポロルの小さな手が、花へと伸びる。
指先が、触れた瞬間。
ふわっ、と。
花が揺れる。
ポロル
「……ロル?」
次の瞬間。
胸の奥が、じんわりと広がる。
ポロル
「……きれいロル……」
その言葉が、少しずつ変わっていく。
ポロル
「すごいロル……すごいロル……!」
葉っぱの羽が、ぶるぶると震える。
みちる
「ポロル……?」
ポロル
「もっと見たいロル……!」
ディジル
「おい、離れろ!」
ポロル
「もっと……もっと……!」
声が高くなる。
感情が、どんどん膨らんでいく。
ポロル
「ロル……ロル……っ!」
楽しい。
嬉しい。
きれい。
その全部が、あふれ出す。
ノクシアの目が、すっと細まる。
ノクシア
「……来たねぇ」
イネリア
「え、なにがだべ!?」
ポロル
「ロルルル……っ!」
笑いが混じる。
でもそれは、さっきと違う。
ポロル
「……っ、ロル……!」
止まらない。
羽がしおれたり、また張ったり、落ち着かない。
フワン
「感情が、増幅されています……!」
ディジル
「だから言ったろ……!」
ポロルは花に手を伸ばし続ける。
ノクシアは、ゆっくりと杖を持ち上げる。
ノクシア
「……加減を知らないと、こうなる」
その声は、静かだった。
ノクシア
「さて……どうするかねぇ」




