コッチャン放浪記「笑えない理由」
リベルティーナと別れたあとも、
コッチャンは、村の中を歩き続けていた。
コッチャン
「次は負けないぽん……!」
拳を握りながら、ぶつぶつとつぶやく。
コッチャン
「でも、あれはずるいぺん……あんなの、みんな集まるに決まってるぷん……」
思い出すのは、あの歌声。
一瞬で空気を変えた、あの“芸術”。
コッチャン
「……」
足を止める。
コッチャン
「……俺ぴっぴのは、違うぴん」
ぽつりとつぶやく。
コッチャン
「でも……笑ってくれるやつもいるぺん」
ふっと顔を上げる。
――あの子たち。
コッチャン
「よし、探すぽん!!」
そのまま、駆け出した。
しばらくして、
村のはずれ、小さな空き地。
そこに、いた。
あの三人の子どもたち。
コッチャン
「見つけたぱーーーん☆!!」
勢いよく飛び出す。
コッチャン
「今日は新ネタいくぷん!!」
くるっと回って、
ポーズ。
コッチャン
「スーパー☆もふもふストライク!!」
見えないボールを全力投球。
そのまま、自分で打って、転ぶ。
……しーん。
コッチャン
「……あれ?」
昨日と違う。
笑い声が、ない。
他の二人は、少しだけ戸惑った顔をしている。
でも――
一人だけ。
ゆいが、笑っていなかった。
コッチャン
「……どうしたぽん?」
ゆいは、視線を落としたまま、
小さく首を振る。
ゆい
「……もう、いい」
コッチャン
「え?」
ゆい
「そういうの、もういいから」
ぽつりと、冷たい声。
コッチャンは、一瞬固まる。
コッチャン
「……なんでだぷん?」
ゆいは、少しだけ顔をしかめて、
ゆい
「……笑っても、意味ないし」
その言葉は、
思ったよりも重く落ちた。
コッチャン
「……」
返す言葉が、出てこない。
風が、静かに吹く。
足元で、モフリオンが一匹だけ、
「もふ……」
と鳴いた。
コッチャン
「……意味、ないって……どういうことだずん」
ゆいは、しばらく黙っていたが――
ゆい
「……昨日、家でやったの」
ぽつりと話し出す。
ゆい
「お母さん、ずっと元気なくて……」
ぎゅっと手を握る。
ゆい
「だから、笑わせようと思って……」
少しだけ顔を上げる。
ゆい
「変な顔して、ふざけて……いっぱい頑張ったのに」
声が、少し震える。
ゆい
「……“やめなさい”って言われた」
空気が、止まる。
ゆい
「“今そんな気分じゃない”って」
静かに、言い切った。
ゆい
「……だから、もういい」
視線を落とす。
ゆい
「どうせ、笑ってもらえないし」
その言葉は、
コッチャンの胸に、まっすぐ刺さった。
コッチャン
「……」
何も言えない。
昨日までの自分と、重なる。
スベって、スベって、
それでも、やめなかった自分。
だけど――
コッチャン
「……違うぽん」
小さく、つぶやく。
ゆい
「……え?」
顔を上げる。
コッチャン
「それでも、笑ったやつ、いたぷん」
まっすぐに見る。
コッチャン
「ここで、笑ってくれたじゃないかぴん☆」
ゆいの目が、少し揺れる。
コッチャン
「意味、あるぽん」
ゆっくりと、言い切る。
その言葉に――
少し離れた場所から、
カツン、と小さな音がした。
石畳の上。
いつの間にか、そこに立っている影。
ピンクのドリルヘアが、風に揺れる。
リベルティーナ
「……甘いですわね」
静かに、言い放った。




