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コッチャン放浪記「笑いのかたち」

ピンクのドリルヘアが、風に揺れる。



リベルティーナ

「……甘いですわね」



ゆいとコッチャンの間に、すっと入り込む。



リベルティーナ

「そんな曖昧なもので、人の心が救えるとお思い?」




コッチャン

「……」




リベルティーナ

「笑いは“結果”ですの。


心を動かした、その先にあるもの」




ゆいの方へ視線を向ける。




リベルティーナ

「つまり、あなたのそれは――」



ほんの少し、間を置いて。




リベルティーナ

「届いていない、ということですわ」




静かな断言。



ゆいの肩が、びくっと揺れる。



ゆい

「……っ」




コッチャン

「……」




ぐっと歯を食いしばる。




コッチャン

「……うるさいぺん」




低く、つぶやく。




コッチャン

「届いてないって、決めつけるなぽん」




顔を上げる。




コッチャン

「笑わせたかったんだろぷん」




ゆいを見る。




コッチャン

「それで十分だぴん」




ゆい

「……でも」




首を振る。




ゆい

「ダメだった」




目を伏せる。




ゆい

「お母さん、全然笑ってくれなかった」




コッチャン

「……」



少しだけ、考えて。




コッチャン

「じゃあもう一回やるぺん」




ゆい

「……え?」




コッチャン

「今度は、一人でやるんじゃないぽん」




にやっと笑う。




コッチャン

「俺ぴっぴもやるんだぷん☆!!」




ぐっと親指を立てる。




ゆい

「……でも」




コッチャン

「失敗してもいいぽん」




即答。




コッチャン

「俺ぴっぴ、ずっと失敗してるぺん☆」




胸を張る。




コッチャン

「でも、笑ったやつはいたぽん」




ゆいをまっすぐ見る。




ゆいの目が、少しだけゆるむ。





コッチャン

「やるぷん?」




手を差し出す。




ゆいは、少し迷って――




小さく、うなずいた。



ゆい

「……うん」




その瞬間。




リベルティーナ

「……まったく」




呆れたように息をつく。




リベルティーナ

「やるなら、最低限“見られる形”にしなさいな」




コッチャン

「リベル氏もやるぷん?」




リベルティーナ

「やりませんわ!!」




ぴしゃりと否定。




……だが。




リベルティーナ

「……ただし」




扇子を、ぱちんと開く。




リベルティーナ

「演出くらいは手伝って差し上げますわ」




コッチャン

「おお!?」




ゆい

「……え?」




リベルティーナ

「“届ける”には、形も必要ですのよ」




少しだけ、口元を緩める。




リベルティーナ

「勘違いなさらないで。これは芸術の指導ですわ」




コッチャン

「ツンデレぽん……?」




リベルティーナ

「なんですって?」




コッチャン

「なんでもないぴん!!」




――数刻後。




ゆいの家の前。




扉の向こうには、元気のない母親。




ゆいは、深く息を吸う。




コッチャン(小声)

「いくぽん」




リベルティーナ(小声)

「タイミングを合わせなさい」




ゆいが、うなずく。




――ガチャ。




扉が開く。




「……ゆい?」




その瞬間。




コッチャン

「スーパーモフモフストライクーーー!!」




全力投球。




ゆいも――




ゆい

「え、えっと……モフモフ……ストライク!!」




ぎこちなく、真似する。




コッチャン、盛大に転ぶ。




ゆい、ちょっと遅れて同じように転ぶ。




一瞬の、沈黙。




……でも。




ゆいは、顔を上げて――




へたくそな変顔をした。




必死で。


全力で。


その姿を見て――




「……ぷっ」




小さく、吹き出した。




ゆい

「……!」




母は、口元を押さえながら、




「なにそれ……」




くすくすと笑う。




ほんの少しだけ。




でも、確かに――笑った。




ゆい

「……笑った」




ぽつりとつぶやく。




コッチャン

「言ったぽん」




にやっと笑う。




コッチャン

「届いたぽん」




足元では、モフリオンが




ぽん、ぽん、ぽん、と増えていく。




少し離れた場所で――




リベルティーナ

「……」




静かに、その光景を見ていた。




リベルティーナ

「……不格好ですわね」




そう言いながら――




リベルティーナ

「でも」




ほんの少しだけ、目を細める。




リベルティーナ

「悪くないざます」




その日。


小さな家の前に、


小さな笑いが生まれた。




それは、完璧じゃなくて。


美しくもなくて。


でも――



確かに、誰かの心に届いた。




コッチャン

「え〜、続きまして、


どすこいの舞だぱーーーん☆!!」




ゆい

「ま、まだやるの!?」




笑い声が、少しだけ広がる。





笑いとすべりの神は、



また一歩、進んだ。

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