ぶつかる声
リベルティーナ
「では、もう一度合わせるざます!!」
ディジル
「今度はちゃんと合わせるぞ」
アマリュウ
「当然である」
リベルティーナ
「さん、はい!」
―――
ディジル
「アーーー♪」
みちる
「ラララ〜♪」
イネリア
「ラララーー♪」
フワン
「ンーーーン〜♪」
アマリュウ
「ルーーー……♪」
モフリオン
「もふーー♪」
―――
さっきよりも、まとまりは出てきていた。
だが――
ディジル
「(……遅ぇ)」
アマリュウ
「(……速いな)」
―――
ディジル
「ちょっと待て!!」
演奏が止まる。
ディジル
「アマリュウ、テンポ遅すぎだろ!」
アマリュウ
「貴様が走っているのだ」
ディジル
「はぁ!?ちゃんとリズム通りだっての!」
アマリュウ
「我の方が正しいに決まっておる」
ディジル
「なんだよその言い方!」
空気が一気に張り詰める。
―――
みちる
「や、やめて……」
イネリア
「ケンカしてる場合じゃねぇだべ……」
フワン
「お二人とも……今は合わせることが――」
アマリュウ
「黙れ」
その一言で、場が凍る。
アマリュウ
「中途半端な音に合わせるつもりはない」
ディジル
「……っ」
ディジルの拳が、ぎゅっと握られる。
―――
ディジル
「だったらお前だけで歌ってろよ」
静かな怒りが滲む声だった。
ディジル
「合唱ってのは、全員で作るもんだろ!!」
アマリュウ
「弱い者に合わせて質を落とすなど、愚かである」
ディジル
「誰が弱いって!?」
一歩、前に出る。
アマリュウも、わずかに身構えた。
―――
リベルティーナ
「……いい加減になさい」
その一言で、空気が止まる。
―――
リベルティーナ
「ディジル。あなたは“前に出すぎ”ざます」
ディジル
「……!」
リベルティーナ
「アマリュウ。あなたは“周りを見ていない”」
アマリュウ
「……む」
リベルティーナ
「どちらも間違っているざます」
静かだが、逃げ場のない声だった。
―――
リベルティーナ
「いいこと?
合唱は“勝ち負け”ではない」
ゆっくりと言葉を置いていく。
リベルティーナ
「どれだけ美しく“重なるか”ざます」
ディジル
「……重なる」
アマリュウ
「……」
リベルティーナ
「あなたたち二人――」
扇子が、ピシッと鳴る。
リベルティーナ
「そのままでは“最高”には届かないざますよ」
―――
沈黙。
―――
ディジル
「……もう一回やろうぜ」
ぽつりと呟く。
ディジル
「今度は……ちゃんと聴く」
アマリュウ
「……ふん」
少しだけ間を置いて。
アマリュウ
「よかろう。試してやる」
―――
リベルティーナ
「……いい顔になってきたざます」
小さく笑う。
リベルティーナ
「さん、はい!」
―――
今度の声は――
まだ荒い。
けれど確かに、
互いを“意識した音”だった。
―――
ぶつかるだけだった声が、
ほんの少しだけ、
同じ方向を向き始めていた。




