第23話 災難
§ 第23話 災難 §
「もちろん、タダで死ぬ気はありませんよ」
クイっと右手を上げると地面から人影が現れる。
「これはかつて僕に敗れた猛者たちです、要するに屍体ですね。この人達を倒さないと僕のところまではたどり着けませんよ」
(こんな奴ら無視してあいつぶっ潰したいんだが上手く射程外に位置取りされて、近づこうとするとこの2体が邪魔をする……見た感じ死者を操る異能っぽいな、その死者がどの程度の実力かが重要になってくるが……)
1人は大太刀の使い手、もう1人は弓使い手。どちらも達人の技を繰り出すが、ジオウにとってはただの児戯。片方を【王者】で壁に押し付け潰し、残った弓使いは接近されて為す術なく倒される。
「なんだ大したことないな、もう殺していいか」
「さすがは最強と言ったところでしょうか。ですがそれで終わりだなんて思ってませんよね?」
と、言うと倒したはずの敵が何事も無かったかのように立ち上がる。
「……くどい」
今度は両者を【王者】で地面に沈ませる。おそらくまた復活するだろうが地面に埋まれば問題は無い。
「はぁ、お前何がしたいんだよ」
「倒そうとしてるんです」
「人を怒らせるのが得意なのか? 望み通りぶっ殺してやるよ」
【王者】で引きつけようとした時、
「危ないですね」
今度は3体の屍体が現れる。
「ちっ、本当にめんどくさいな。どこから湧いてくるんだよ」
「僕の異能です。屍体がそこになくても必要な成分さえあれば生成出来ます」
余裕な口振りで説明する男。
「解説どうも」
「言ったところで変わらないので」
「あっそ」
屍体には見向きもせず、手を翳し同じように吹き飛ばそうとするがあと少しのところで耐えられる。
「お、これで脱落しないのは褒めてやるよ」
「さっきの雑魚と一緒にしない方がいいですよ、文字通り格が違うんで」
するとひとりが接近して腕を振りかぶる。
(なんだこいつ? 普通に受ければ……)
それに合わせて防御しようとした瞬間、男の手に剣が現れる。
「っ!」
一瞬反応が遅れたが間一髪で避ける。
「死んでるから異能は使えないと思ってました? 油断は禁物ですよ」
「……ちっ」
(実際、異能は使えないものだと思ってたが、異能があるものだと思えばなんてことは無い。ひとりは剣……おそらく武器の類を生成する能力、発生にほぼラグは無く一瞬で生成するのが厄介だな)
「だが、それだけだ」
剣の男を【王者】で押し潰す。
さっきは3人に力を加えてたため力が分散し耐えられたが、1人に集中して力を加えれば問題ない。
(潰せたが、屍体だからいつ復活するか分からない状況だと早めに決着をつけたいところだな)
「お前らの異能が楽しみだな」
まずは女の方に近づいてパンチを繰り出すが、寸前で砂の様なもので守られる。
「防御系か──っとあぶねぇな。そういやもう一人いたっけ」
ジオウが相手にしてるのは3人。意識外からの攻撃が来るのは当たり前だがそれすらも軽く避ける。
(いきなり斬撃が飛んできたけどあっちは無視。こっちの女は防御してるときに反撃をしないってことは砂がオートで守るだけの異能か、砂を操れるが同時に別のことはできないとかか。その場から動けないのは余裕の表れかそういう縛りか)
絶えず女に連撃を浴びせ続け反撃の隙を与えない様にするが別方向からも斬撃が来る。
(そして向こうは斬撃、道具等は持っていないことから手を振るってのが斬撃の発動条件か?)
避けながらも横目で一瞬確認して考察を立てる。
「……無問題。まずはお前」
狙いを女に定めるや否や自身のアジリティを活かして全方向から絶え間なく連撃を浴びせる。
斬撃の男もちょこまかと動くジオウに当てようとすると味方にも当たってしまうため下手に撃てない。
(先程からの視界外からの攻撃にも反応出来るってことは自動防御で確定したな。ならあとは時間の問題)
相手の異能を瞬時に把握して行動に移す。
「どれだけ耐えれるか試してみようか」
そう言って指を前に突き出し、ぐるんと一周させる。
「廻重力」
リボルバーのように周囲を覆う重力場が現れる。
「これくらったら間違いなくミンチだな、ほら逃げろよ」
言われなくとも。と言いたげに喋れない屍体はその場から逃げようとするが
自動的に守るという異能が彼女自身の逃げ場を無くしてることに気づいた頃には既に遅い。
【王者】を発動させて砂で出来た袋を潰す。抜け出そうにも抜け出せない、重力が攻撃と判定されてさらに砂が重なっていき完全に潰れるまでそう時間はかからなかった。
「やっぱ技名だせえな、【廻】……【重輪】……まぁいいや後で考えよ。次」
「……なるほど」
男は逃げる素振りも見せず傍観してる。
(まさか本当に倒そうと考えてるのか? 逃がすつもりはないが普通逃げるだろ)
男はニコリと穏やかな笑みを浮かべてる。返すように舌を出しあからさまに嫌がる。
「傷つきますよ」
「うっせぇわ」
と、話してると斬撃が飛んでくる。
(そういえば戦闘中だった。えっと……残り2人だっけ、1人は武器生成、1人は斬撃。めんどくさいのは──)
「こっちだな」
と、向かったのは斬撃の男。
遠距離だと分が悪いと判断したのか近接戦闘を仕掛ける。
「妙に距離とりたがってたから近づきたくなるよな」
その行動は吉と出た。接近戦をすることにより斬撃のトリガーである「手を振り下ろす」という行動を制限できる。
「お前ひとりじゃ雑魚だがあっちとの戦いに介入されると厄介だから先に寝ててもらう」
こちらは異能を使えずジオウは自由に使える。そんな絶望的な状況、数秒もっただけで大金星だ。味方の援護も間に合わずあっけなく退場してしまう。
「ラストか……」
「今の手持ちはこいつらだけですね」
「言ってくれるのか、ありがたい」
そう言って最後の一人に手をかざす。
「【超重力】」
この技で決めようとしたが相手もそれを察知してすぐさま効果範囲から逃げる。
「【超重力】【超重力】【超重力】【超重力】【超重力】」
逃げるならその先にも技を置けばいい、その考えにたどり着くまでに時間はかからなかった。
「さて、無駄な時間稼ぎはこれで終わりか?」
「さすがジオウですね、お見事です」
気味の悪い笑みを貼り付けたまま男は拍手を送った。
「ですがあなたは時間をかけすぎた」
「なに?──」
その瞬間、大きな衝撃音と砂埃をたてて何かが落ちてくる。
「みんな僕のことをパシリに使ってない? 舐めてる?」
「いえ、そんなことは無いですよスリィ、助かりました」
煙が晴れて見えたのは大きなキューブ。そしてその中から現れたのは数名の男女。
「おい、こいつがジオウか?」
「警戒しろゲル、死ぬぞ」
「ゲル殺される!? ダメだ! その前にこいつ殺す!」
「落ち着けアホども目ェ離すなよ」
その全員がローブを身に纏っていた。
「さて、本番と行きましょうか」
不敵な笑みを崩さずそう言う男。
「……ほんとに怒らせるのが得意なようだな」
返すその顔には一筋の汗が流れた。




