第24話 本番
§ 第24話 本番 §
「【超重……」
「出オチなんてやだよ〜だ」
目の前にキューブが出現し視界を防がれる。
「視界が……うっ!!」
一歩下がった瞬間に右から強い衝撃がくる。
「お前! 危ないから! 殺す!」
(んだこいつのとんでもねぇ馬鹿力はッ!!)
ジオウが一方的に競り負ける程の馬力で大男にタックルされる。
「このまま壁に挟まれて死ね!」
「ッ……! 調子乗んな! 【転】!」
男に触れ男の重力の向きを下から、押されてる逆方向へと変える。
「なにこれ! 変な感じ!」
さすがに重力には耐えきれないのかジオウを離しそのまま壁へと落ちていく。
「よっし! やっとまともな技名付いたな! これからこの路線で行くか」
一人撃破したのと別のことで大喜びするジオウだが、それを見ていい気分になる敵ではない。
「あいつ、あたし達のこと舐めすぎでしょ」
「事実、それほどの実力は持ってるだろ、ノクターンがあんな簡単にやられるのは初めて見た」
「はっ! 単独で突っ込むのが悪ぃだろ! 俺が行くからスリィとフェンはカバー頼む」
「ちっ、仕方ない」
「は!? ちょっと早すぎだって!」
スリィの言葉よりも早くゲルは突撃してしまうが、それにすぐさま反応するフェンリル。
「どーも老兵! 早速だけど死ねや」
挨拶代わりに飛び蹴りをお見舞するが、ジオウは難なく対処。
「全く最近の若者は……って言わせんな、まだまだ現役だわ」
「その割には右がお留守だな」
と、右を指指さす。
「なっ、がっ……!」
すぐに右を向き防御体勢に入るが、影の攻撃は逆の無防備な左から来る。
「あっはっはっは! すまん左だったわ!」
単純な罠に引っかかったのが余程面白かったのか、目の前にジオウがいるのも関わらず腹を抱えて転げ回る。
「ちっ……いってぇな!」
目の前の無防備なゲル目掛けて全力の【超重力】を発動させ地面には大きな穴が出来る。
(とりあえず一人……)
「真面目にやれゲル」
「だってあんな簡単な罠に引っかかるなんて……ぐっひゃひゃひゃ!」
「なん……だと?」
仕留めたはずのゲルの笑い声が洞窟内に響く。【超重力】を放った先には大きく穴のあいた地面と、半身が消し飛んだゲルの形をした泡があった。
(泡……おそらくあのロン毛の異能だな。いつ入れ替わったか全くわからなかったが相当なやり手なのは間違いない)
「俺からもうひとつプレゼントだ、受け取れジオウ」
そう言って指を弾くと洞窟内を埋め尽くす程の巨大なシャボン玉が現れる。
「これ、触っていいやつ?」
「自分で確かめてみろ」
(んー、ただの脅しなのか何かしらの罠があるのか……ただこの数だと仲間にも被害が行くよな)
「面倒だし全部壊すか。木に当たらないように加減するの難しいな……」
「なに?」
そういうとジオウは右手に力を込めて大きく体を仰け反らせる。その右手には凝縮された重力場が込められてるのも視認できる。
「まずいな、止めろゲル」
「わかってる!」
指示される前よりも少し早く動き出すゲル。
「おせえよガキ」
だが、それでも間に合わなかった。ジオウは溜めに溜めた全力をそのまま地面に向けて放つ。
凝縮された重力場は地面に放たれたと同時に衝撃を撒き散らしながら様々な方向へ飛んでいく。そのまま地面の奥深くまで飛んでいく重力もあれば、上に飛ぶ重力もある。上に向かう重力に耐えきれない地面は宙を舞いそれは美しくもあり、破壊そのものを表す絶望でもあった。
「なんだ、やっぱりハッタリか」
予想が当たり少しつまらなそうにするジオウ。
(起爆する仕組みだったんだけどな、人体に触れたらの話だけど)
「まさかこれ程強かったとは思いませんでしたね」
「しかもムカつくことにまだ余力残してんな、あれ」
「どうするファウスト、一旦引くか?」
「いやいやあのデブ置いてくの? 可哀想じゃない?」
「殺されても思念が残ればファウストが生き返らせるから問題無いわ」
「ふーん、そんなもんなんだね。じゃあみんな集まって、転移するよ」
などと話している所にジオウが割り込む。
「ちょっと待て、お前ら逃げれると本気で思ってんのか?」
今度は両手を前に構える。
「集まってくれてありがとう、これで全員殺せる」
「ねぇなんかヤバそうだけど、ッ!……」
逃げようとした〖血の舞踏〗に全力の【超重力】で押さえつける。
(普通ならこれで死ぬはずだが小僧の箱とロン毛の泡で何とか人の形を保ててるのか)
「なんだこの重力は……」
「これっ、逃げれないっ……!」
「せめて僕だけ生きてればいいんですけど……これじゃあ逃げれそうにもありませんね……」
「くそっ、影もダメだ! 外出た瞬間潰されちまう」
今までの比じゃない攻撃をくらい少なからず動揺する〖血の舞踏〗。
「もう一押し」
その〖血の舞踏〗の目の前に小さな、とても小さな重力球を生成する。
「なんだあれ?」
普段影の中に籠りっぱなしで目が良いゲルはそれをイチ早く見つけた。
その言葉を聞いてカシュは周囲に気を配りゴマ粒程の球を見つける。
「……あの球にありえないくらいのエネルギーを感知した、何するのか知らないけどあれが攻撃だとしたら私たち全員死ぬよ」
「まずいですね……スリィ君、僕だけ何とか脱出させることはできませんかね」
「え、出来るけど俺ら死んじゃう……」
「なら今すぐやってください。後で生き返らせますから」
「え、でも……」
「死んで生き返るのと皆で心中するのどっちがいいか考えてください!」
「もう……わかったよ!」
その決断には納得いってない様子だが渋々行動に移す。
「この技は俺が全力を込めた重力球による攻撃。ただひとつ難点なのは最大火力しか出せないこと、昔ヤンチャな犬っころが居てな」
などと説明している間にも〖血の舞踏〗を逃がすまいと【超重力】で押さえつける。
「プラトンって昔最強って言われてた七大魔獣だよね……」
「ジオウに倒されたという噂は本当だったか」
「そいつを倒すためにはどうしても強力な技が必要になった、そんな時に生まれた技がこれだ」
目線を球体に移すと球体を中心に時空が歪みだす。
「おしゃべりはこれにて終いだ、半径10m」
「スリィ!」
「わかってる! 【転移】!」
ジオウ技より数コンマ早くファウストの転移に成功させる。
「飲み込め、【黒穴】」
その瞬間、球体を中心とした半径10Mの空間が消えた。〖血の舞踏〗はもちろん地面や空気、音や光なども全て等しく無になった。
球に向かって最大出力で重力をかけることがこの技の本質。その重力には誰も、何も逆らえない文字通り全てを飲み込むブラックホールになる。
そして1秒もたたない内に全てが無くなった空間に向けて空気が流れ込む。その際にとてつもない爆発が起こるがそれはこの技の余波なのだ。
「ちっ、一人逃がしたか? まぁ、なんにせよほぼ壊滅だろ」
腰を地につけて少し休む。
「バルバトスは、よし無傷だな」
全てが終わり自身の命より大事な樹に目線を向けてほっと一息。
「さて、あいつどうするか」
次に目線を移したのは洞窟の隅で倒れてるノクターン。〖血の舞踏〗の残党ということもあって処分をどうしようかと考えてると……
「……ダメだもう疲れた……めんどいのはウィルバートに任せちゃお」
ジオウは考えるのを辞めてその場で目を閉じた。
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