第22話 約束
「ただいま〜」
「おう、おつかれ」
(遊ぼナギ!)
「ごめんキュナク……今日はちょっと疲れちゃった」
(あんなことがあったあとだし仕方ないか)
「あんなことってなんだ?」
「あぁ、実はな……」
〖血の舞踏〗から襲撃を受けたことを伝えた。
「な、なにぃ! 〖血の舞踏〗だって!?」
「まさか、知ってるのか!?」
「いや、知らん」
「だろうな」
少しノッたけど意外と楽しいな。
「けど警戒はしとくか……黒いローブに仮面ね、こっちで調べておくよ。よく追い返したな」
「そっちじゃなくて人質の子を探す方が大変だったんだけどね」
(僕のおかげで見つかったんだけどね!)
ドヤ顔で主張するキュナク。
「はいはい、ありがとう」
「仲が良くてなにより。そうだ、少し出かけてくるから留守番頼むぞ」
「(はーい)」
ナギたちに任せて家を出るジオウ。
「あ、魔王が復活するかもって言っとけば良かった」
(ジオウなら大丈夫でしょ)
「それもそうだな」
§ 誰22話 約束 §
「さ、急ぐような事じゃないし久しぶりに街の方行ってみるか」
滑空ではなく徒歩でマザーの方へ向う。道中、魔獣と何匹か遭遇したがもちろん軽くあしらう。
「おー、変わらねぇなマザーは」
「ジオウさんじゃないか! 買い物かい?」
「いや、少し街の様子を見に来ただけだよ」
「そうかい! そうだ、これ持ってけ!」
街の陽気なおじさんに話しかけられ投げられたのはふたつの立派な蜜柑。
「おっと、いいのか?」
「いいってことよ! 元気でな!」
「そっちこそ長生きしろよ」
帰ったらナギたちに分けてやろう。
「おい見ろあれ……」
「まじかよ、本物かな……」
「行こうぜ!……」
横からコソコソと話し声が聞こえてくる。
「あの! ジオウ様でいらっしゃいますか……」
「ん? どうした小僧……たち」
声をかけてきたのは3人の子供。見た感じ豪華な洋服を身につけているためそれなりの家の子供なのが伺える。
「やはりっ! 僕はクライン・エリオット。あのエリオット家の長男です」
「おい抜けがけはずるいぞ! 失礼しました、私はクレバー・カミュ。あのカミュ家の長男です」
「君たち、はしたないぞ……遅れました、私、ワンドリュー・アイアールです。あのアイアール家の次男です」
あぁ……こいつらあれか。
「……で?」
「「「僕を弟子にしてください!」」」
絶対言うと思った。
「ひとついいこと教えてやるよ。将来お前らが弟子を取る側になった時に役立つ知識だ」
「な、なんですか」
「自己紹介の時に自分の家を主張するやつは弟子にしない方がいいぞ、これまで1度もまともなやつを見たことがない」
「「「え……」」」
「分かったら帰れ、弟子にはしない。いい師匠が見つかるといいな」
「で、でも……」
「それでも弟子になりたいなら俺の家に来るといい、ペインフォレストのど真ん中だ。わかりやすいだろ?」
「そんな!? あの森に入れって……死ねって言ってるようなものじゃないですか!」
「だから言ってるだろ、弟子にはしないって。もうめんどいわ」
「あ、待っ……」
めんどくなり空中に逃げる。下でまだ子供が騒いでるがジオウには知ったことではない。
「これがあるからここには住みたくねぇんだよ……」
もう大丈夫だろと少し離れたところで降りる。
「お、ヴァーミリまで来たか」
「先生」
「ん? うげっ、ガンドルフか……」
「その反応は傷つきますよ……珍しいですねここまで来るのは」
「ただの寄り道だよ」
「そうですか……」
なんだこいつ? せっかく答えてやったのになんだか興味なさそうに返事しやがった。
「なんだよ?」
「……もう一度教鞭を執ってみませんか?」
「断る」
何を言い出すかと思えば……
「俺には教えることなんてできないから今いる一人で精一杯なんだ」
「……そうですか、なら仕方ないですね」
「やけにあっさり引き下がるんだな」
「引き止めたら悪いでしょう、ご友人のところに向かうんですよね」
ニコッと無垢な笑顔を向ける
「……お前なんでも知ってんのか。まぁ約束だしな」
「意外と律儀なんですね。そろそろエネル兄妹が来ますので早く行ったほうがいいですよ」
「確かにあいつらはめんどくせぇから行くわ」
厄介な2人に見つかる前に足早にその場を立ち去ろうとしたその時。
「さ、そろそろ行くか──」
「待てジオウ!」
そんな声がしたため後ろを振り向くと。
「うっわ、ガーネットじゃん……」
「意外と速かったですね。なんか面倒くさそうなので私はこれで」
一瞬でフェードアウトするガンドルフ。
「兄さんから話があるから少し待て!」
「話したくないって伝えといて」
「なっ、貴様!」
「うーこわ、さよなら〜」
【王者】を使って空へ逃げる。
「そ、空は卑怯だぞ!」
「知るかアホ、じゃあな」
「待てぇぇぇぇ!」
瞬きのうちに遠くに飛んでいってしまう。
「はぁはぁ、どうだった?」
遅れて来たのは息を切らしたウィルバート。
「兄さんが遅いから逃げられたじゃない!」
「やっぱダメかぁ……たまたま近く通ったからナギくんのこと知ってるか聞こうと思ったんだけど……」
「まさかそんなこと聞くために私を走らせたの?」
「え、うん」
「…………今日はご飯作りません」
「え!? ちょっと待ってごめん! お願いだからご飯だけは作ってえええええ!!」
学園前に響く騎士団長の声は「またいつものか」と周りから無視されるのであった。
◇
「ふぅ、ここまで来たら追えないだろ」
そう言って来たのは目的の場所であるバルバトスの樹。
「改めて見るとやっぱでけえな」
その樹の頂上を見ようと見上げるが生い茂る緑に阻まれて見える気配がない。
「水をやるって約束だったろ? でも水やらなくても何とかなりそうだな」
少し寂しそうにそう呟く。
「……らしくねえな。ここら辺にバケツあったっけ」
近くの湧き水を汲んでこようとバケツを探す。
すると──
「おや、先客が居ましたか」
「っ!」
声をかけられるまで気付かなかった……
「お前、誰?」
名前を聞いたのには訳があった。
ひとつは元七大魔獣の巣窟に入ってくるような人間に興味が湧いたから。
そしてもうひとつは──
「黒いローブに仮面、どっかで聞いた事あるんだよなぁ」
「名乗る程の者ではありませんよ」
「おいおい謙遜すんなよ〖血の舞踏〗」
その名を口にした瞬間、男の意識がこっちに向いた。
「なぜその名を知ってるのですかね」
「おー怖い怖い」
「ふぅ……本当はここの害獣が本当に死んだか確認しに来たんですけどね。予定変更です、少し遊びましょう」
男は構える。
「……今こいつの事害獣って言ったか?」
その言葉をジオウが聞き逃す訳が無い。
「おかしなことを言いますね、害獣は害獣でしょう?」
ララートにはある言葉が伝えられている、子供から大人まで幅広く知られている言葉がある。それは──
「……てめぇ、楽に死なせねえぞ」
『最強だけは怒らせるな』。




