第九章 二人の天使の約束
悪魔がアリヤに飛びかかった。
その瞬間。
「させない!」
レオンの剣が、悪魔の爪を受け止めた。
激しい光が周囲に飛び散る。
セラはひかるとアリヤを抱き寄せ、光の結界を張った。
「二人とも、私のそばにいて!」
悪魔は怒りに任せて攻撃を繰り返した。
しかし、レオンは一歩も退かなかった。
「何度やっても無駄だ!」
悪魔が叫ぶ。
「人間は弱い! 悲しみも恐怖も消えない! いずれ必ず、私に助けを求める!」
レオンは静かに答えた。
「人間が弱いことくらい、知っている」
「ならば!」
「でも、弱いからこそ、支え合えるんだ」
レオンの剣が輝いた。
「お前には、それがわからない」
セラも翼を広げた。
「ひかるもアリヤも、もう一人じゃない」
天使たちの光が重なった。
まばゆい光が、悪魔の黒い霧を押し返していく。
「ぐああっ!」
悪魔は苦しそうに叫んだ。
しかし、完全には消えなかった。
「まだだ……! まだ終わらんぞ!」
悪魔の身体が巨大な影に変わる。
その影が、ひかるとアリヤに迫った。
セラは結界を強めた。
けれど、あまりの力に光の壁に亀裂が走った。
「セラ!」
ひかるが叫ぶ。
「大丈夫。私たちを信じて!」
セラは必死に結界を支えた。
レオンが空高く舞い上がる。
そして、光の剣を掲げた。
「これ以上、この子たちを傷つけさせない!」
剣から放たれた光が、悪魔を包み込んだ。
巨大な影が崩れていく。
悪魔は最後まで叫んでいた。
「ひかる! いつか必ず、お前は誰かのために契約する!」
そのとき、ひかるははっきりと答えた。
「しないよ!」
悪魔の動きが止まった。
「私は、誰かを助けるために自分の命を捨てたりしない!」
ひかるはアリヤの手を握った。
「二人で生きるんだから!」
アリヤも顔を上げた。
「私も、もう悪魔には頼らない!」
二人の声に応えるように、指輪が金色に輝いた。
光は天使たちの力と重なり、悪魔を包み込んだ。
「そんな……人間ごときが……!」
悪魔の姿は光の中に消えていった。
やがて、辺りに静けさが戻った。
街灯がともり、遠くから車の走る音が聞こえてくる。
いつもの街だった。




