第十章 おばあちゃんからの贈り物
「……終わったの?」
アリヤが尋ねた。
レオンは剣を収め、頷いた。
「ああ。あの悪魔は封じられた。もう君たちを襲うことはできない」
ひかるは大きく息を吐いた。
「よかった……」
安心した途端、足から力が抜け、その場に座り込んでしまった。
アリヤも隣に座った。
「ひかる……ありがとう」
「ううん。アリヤも頑張ったよ」
二人は顔を見合わせて笑った。
そのときだった。
アリヤの指輪が、もう一度だけ光った。
「……え?」
温かな光が、二人を包み込む。
すると、どこからか優しい声が聞こえた。
『アリヤ』
アリヤは息を呑んだ。
「……おばあちゃん?」
その声は、悪魔が作り出した偽物とは違っていた。
幼い頃、何度も聞いた声だった。
けれど、そこに祖母の姿はなかった。
指輪に残された温かな記憶が、アリヤの心に語りかけているようだった。
『大きくなったね』
アリヤの瞳から涙がこぼれた。
「おばあちゃん……私、ずっと会いたかった」
『知っているよ』
「寂しかったよ……」
『うん』
「でも……もう、大丈夫」
アリヤはひかるの手を握った。
「私、友達ができたの」
ひかるは少し驚き、それから嬉しそうに笑った。
「アリヤ……」
アリヤは涙を流しながら続けた。
「私のことを守ってくれる、とっても優しい友達」
温かな風が吹いた。
指輪の光が、優しく揺れる。
『よかったね、アリヤ』
その声は、少しずつ遠ざかっていった。
『これからも、幸せに生きてね』
「……うん!」
アリヤは涙を拭った。
「ありがとう、おばあちゃん」
やがて、指輪の光は静かに消えた。
セラは優しく微笑んだ。
「きっと、おばあさんの想いが届いたのね」
アリヤは指輪を胸に当てた。
「うん……」
もう、悪魔に頼んでまで祖母に会おうとは思わなかった。
祖母と過ごした日々も、大切にしてもらった記憶も、ずっと自分の中にある。
それだけで、十分だった。




