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第八章 悪魔の最後の誘惑

その日の夕方。


ひかるとアリヤは、天使たちと一緒に帰り道を歩いていた。


すると突然、周囲の景色が暗くなった。


街灯が消え、道を歩いていた人々の姿が見えなくなる。


「……また来た」


レオンが剣を構えた。


目の前に黒い霧が集まり、人影となった。


あの悪魔だった。


「ずいぶん楽しそうじゃないか」


悪魔は笑っていた。


「ひかる。まだアリヤを守るつもりか?」


ひかるはアリヤの前に立った。


「もちろん」


「自分の命が惜しくないのか?」


「惜しいよ」


悪魔は少し驚いた顔をした。


ひかるは続けた。


「私、死にたくない。怖い思いもしたくない」


「だったら、なぜ逃げない?」


「アリヤを置いていきたくないから」


悪魔は不気味に笑った。


「ならば、いい方法がある」


悪魔が指を鳴らす。


すると、目の前に一人の女性が現れた。


白髪を綺麗にまとめた、優しそうな女性だった。


アリヤの表情が凍りついた。


「……おばあちゃん?」


女性は微笑んだ。


「アリヤ。大きくなったね」


「おばあちゃん……!」


アリヤは思わず駆け寄ろうとした。


しかし、ひかるがその手を握った。


「待って、アリヤ」


悪魔は満足そうに笑った。


「どうだ? 今回は本物にそっくりだろう?」


「……偽物なの?」


アリヤの声が震える。


女性は悲しそうな顔をした。


「アリヤ、私を忘れたの?」


その言葉に、アリヤの瞳から涙がこぼれた。


「忘れるわけない……!」


アリヤは指輪を握りしめた。


「ずっと会いたかった……」


悪魔は優しい声で囁いた。


「契約すれば、ずっと一緒にいられるぞ」


アリヤは俯いた。


長い沈黙が流れた。


そして、小さく呟いた。


「……違う」


悪魔の笑顔が消えた。


「何?」


「おばあちゃんは、そんなこと言わない」


アリヤは涙を拭った。


「おばあちゃんは、私が泣いているとき、いつも言ってくれたの」


――悲しいときは、泣いてもいい。


――でも、悲しいからって、自分を傷つけちゃだめよ。


「おばあちゃんは、私に生きていてほしいって願ってくれた」


指輪が、淡い光を放った。


「だから……もう会えなくても、私はちゃんと生きる!」


女性の姿が、ゆっくりと崩れていった。


悪魔が舌打ちする。


「つまらない娘だ」


そして、鋭い爪を伸ばした。


「だったら、ここで終わりにしてやる!」


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