↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/11

第五章 指輪に宿る光

悪魔は天使たちの攻撃をかわしながら、アリヤを見つめていた。

その視線の先には、彼女の指にはめられた指輪があった。

「……やはり、それか」

悪魔が呟く。

銀髪の天使は眉をひそめた。

「何を企んでいる?」

「お前たちには関係ない」

悪魔は片手を突き出した。

黒い鎖が床から現れ、アリヤの足に絡みつく。

「きゃっ!」

「アリヤ!」

ひかるが手を伸ばす。

しかし、鎖は二人の間を引き裂こうとした。

金髪の天使が光の弓を放ち、鎖を切り裂く。

けれど、悪魔は笑っていた。

「その指輪さえなければ、もっと早く契約できたものを」

アリヤは指輪を握りしめた。

「……どういうこと?」

「お前の祖母は、最後までお前のことを案じていた。愚かなほどにな」

悪魔の言葉に、アリヤの心臓が跳ねた。

「おばあちゃんを……知っているの?」

「知っているとも」

悪魔は歯を見せて笑う。

「死の間際まで、お前が幸せに生きられるようにと祈っていた。その想いが指輪に染みついているんだよ」

ひかるはアリヤの指輪を見つめた。

古びた、小さな指輪。

ただの形見だと思っていたもの。

けれど、そこには祖母の強い願いが残っていた。

銀髪の天使が静かに口を開いた。

「その指輪には、確かに守りの力がある。だけど、特別な魔法の道具というわけじゃない」

「じゃあ、どうして……?」

「人が誰かを心から想う気持ちは、ときに悪魔の誘惑を退ける力になるんだ」

金髪の天使も頷いた。

「アリヤ。あなたのおばあさんは、あなたが自分の命を大切にしてくれることを願っていたのよ」

アリヤの瞳が揺れた。

「おばあちゃん……」

その瞬間、指輪が淡い光を放った。

悪魔が顔を歪める。

「忌々しい!」

黒い霧が渦を巻き、巨大な腕となって二人に襲いかかった。

銀髪の天使が光の剣を振るった。

「下がれ!」

激しい閃光が走る。

悪魔の腕が弾かれ、黒い霧が散り散りになった。

金髪の天使も翼を広げた。

二人の天使から放たれた光が重なり、悪魔を包み込む。

「ぐっ……!」

悪魔は苦しそうに呻いた。

「覚えていろ、人間ども……!」

「もう二度と、二人に近づかないで」

銀髪の天使が告げた。

悪魔は憎々しげにひかるを睨みつけた。

「ひかる……お前は特に気に入らない」

「……!」

「誰かを守ろうとする人間ほど、最後には自分を犠牲にする。そのときこそ、お前は契約を望むだろう」

悪魔は不気味な笑い声を残し、黒い煙となって消えた。

辺りに静けさが戻った。

ひかるはその場にへたり込んだ。

「……こ、怖かった……」

張りつめていた緊張が、一気に解けた。

アリヤも膝をつき、ひかるに抱きついた。

「ありがとう……ひかる……」

「ううん。無事でよかった」

二人はしばらく、抱き合ったまま動けなかった。

銀髪の天使は剣を消し、ため息をついた。

「とりあえず、今回は守れたね」

「今回は、ね」

金髪の天使の表情は険しかった。

ひかるが顔を上げる。

「……どういうこと?」

天使は少し迷ったように、二人を見つめた。

「悪魔はまだ諦めていない。特に、ひかる。あなたのことを狙っている」

「私を……?」

「あなたは契約を拒んだ。でも、それだけじゃない。あの悪魔は、あなたの優しさを利用しようとしている」

ひかるは唇を噛んだ。

悪魔の最後の言葉が、頭から離れなかった。

――誰かを守ろうとする人間ほど、最後には自分を犠牲にする。

そんな未来は、絶対に嫌だった。

ひかるは立ち上がると、二人の天使を見つめた。

「……私、アリヤを守りたい」

「うん」

「でも、だからって自分の命を差し出したくない」

金髪の天使が優しく微笑んだ。

「それでいいのよ」

銀髪の天使も頷く。

「誰かを助けるために、自分が犠牲になる必要なんてない」

ひかるはアリヤの手を握った。

「だったら、私たち二人とも助かる方法を探す」

アリヤは涙を拭い、小さく笑った。

「……うん。一緒に」

二人の天使は顔を見合わせた。

そして、金髪の天使が言った。

「じゃあ、まずは私たちのことを、ちゃんと紹介しなくちゃね」

彼女は胸に手を当て、微笑んだ。

「私はセラ。こちらはレオン。私たちは、ずっとひかるのそばにいた守護天使よ」

銀髪の天使、レオンは少し困った顔をした。

「本当なら、こうやって姿を見せるはずじゃなかったんだけどね」

「……ずっと、私のそばに?」

ひかるが驚いて尋ねる。

セラは頷いた。

「そう。あなたが気づかないときも、ずっと」

その言葉に、ひかるは胸が温かくなるのを感じた。

けれど、レオンは遠くの空を見つめたまま、静かに呟いた。

「ただ……今回の悪魔は、普通じゃない」

「どういうこと?」

「契約に失敗した悪魔が、人間を直接殺そうとする。それも、守護天使がいる前で。そんな無茶をするには、何か理由があるはずなんだ」

セラも表情を曇らせた。

「それに、ひとつ気になることがあるの」

「何?」

「最初にひかるが出会った、あの水を欲しがっていた男の人」

ひかるは息を呑んだ。

「……あのおじさん?」

「そう。あの人がなぜ、アリヤの指輪を持っていたのか」

アリヤも顔を上げた。

「そういえば……私、あの指輪をなくしたことなんてなかったのに……」

風が吹いた。

アリヤの指輪が、かすかに光る。

ひかるは、その光をじっと見つめた。

まだ、終わっていない。

悪魔は消えたけれど、すべての謎が解けたわけではなかった。

そしてその夜。

誰もいなくなった質屋の前に、一人の男が立っていた。

ひかるに水を頼んだ、あの男だった。

男は暗い店内を覗き込み、小さく呟く。

「……あの子たち、無事だったか」

その手には、ひかるが買ってくれた空のペットボトルが握られていた。

男は空を見上げる。

「すまないな、アリヤ。お前のおばあさんとの約束を、まだ果たせていない」

男の瞳が、淡い金色に光った。

――つづく。

登場人物 役割と目的

ひかる アリヤを助けたいが、自分も悪魔とは契約したくない。二人で生き残る道を探す

アリヤ 祖母への想いを悪魔につけ込まれた少女。形見の指輪を守り、契約を拒否する

悪魔 最初はアリヤとの契約を狙うが、失敗したことで殺害に切り替える。ひかるの命も狙っている

セラ(仮名) ひかるについている天使の一人。優しく、二人を保護する役割

レオン(仮名) もう一人の守護天使。悪魔との戦闘を担当し、敵の計画を警戒している

水を求めた男 アリヤの祖母と何らかの約束を交わしていた謎の人物

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。