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後列モブ 番外編  作者: 皆神 わいら


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7/10

お義姉さまに教えたいこと

テオドール目線でのお話です。


「まあ、テオドール様ったら、そっくりだわ!」

「ふふふん!」


きゃああ〜〜!!

パチパチパチ


エルナお義姉様が手を叩いて褒めてくれる。

周りに控えた使用人たちも一緒になって拍手をくれるから、僕はまるで一人舞台の主役のような気分だ。


僕はテオドール。グランツフェルト王国の二番目の王子だ。

今日は兄上が見当たらず、お庭の方を探しにきたら、エルナお義姉様がお茶をしているところに出会して、お茶にお誘いを受けた。

実はまだあまりお話をしたことがないのだけれど、先日エルナお義姉様のご家族といっしょにお食事をしたせいか、あまり緊張せずご挨拶ができるようになった。


ちなみに今は、兄上のかっこいいところをエルナお義姉さまに全身で説明しているところだ。


「それで、その時クリストフ様はどうされたのですか?」

「ン!その時兄上は、こうしてくるっと返ってパンとしたんです!」


僕は今兄上が剣の鍛錬で相手を打ち負かしたときのことを実演していた。


「きゃあ!素敵!その時の!その時のクリストフのお顔は?」

「お顔は、こう!」

「きゃあああ!かわ、じゃなかったカッコイイ〜〜!!」

「ふふふん!」


僕は毎日の観察の賜物をここぞとばかりに披露する。

何せ僕の兄上は超カッコイイのだ。

とくにカッコいいのは、お顔だ!

だから僕はどれだけ兄上がカッコよかったかを、それを目撃できなかったエルナお義姉さまのためにあますことなく伝えているのだ。


特に真剣な時の目元がカッコイイ。

こう、なんていうか、こう……、こういう感じなのだ!


僕は僕の出来うる限りの表現力でカッコイイ兄上を演じる。


「もっと教えてください!他に、テオドール様知らないカッコイイクリストフ様をやって〜!」


エルナお義姉様は昨年からしか兄上のカッコイイところを知らないらしい。

それまではヴァレッタ様が兄上の婚約者だった。

でも、兄上はヴァレッタ様を僕に紹介することはなかったし、兄上からヴァレッタ様のお話を聞いたことがない。

先日のような生誕祭の家族食事会にもお越しにはなっていなかった。


(兄上が連れてこられた方は、エルナお義姉さまがはじめて。つまり、この人がそうなんだ!)


エルナお義姉様が兄上の新しい婚約者だと紹介された昨年の秋には、王城にお義姉様の部屋が用意され、週末の滞在の折には毎回一緒に晩餐をいただくようになった。

あのころのエルナお義姉様はお食事をとるにも緊張されていて、隣の兄上がずっと見ているのにも気づいていないようだった。

それをずっと見ている僕はたまに口元に運び損ねて、隣の母上に口を拭かれていたが、きっとエルナお義姉さまには見えていなかったに違いない。

うん。

それに、僕はもう口元を汚したりしない。

先日のお食事会では、エルナお義姉さまのご家族のお口を、僕が拭いてあげたんだ。

僕よりずっと小さくて、ブドウが大好きなようだった。


(ちっちゃくて、ふわふわしてて、可愛かったなあ……)


僕はあのお食事会のことを思い出していた。

エルナお義姉さまのご家族は、ご両親とご兄弟、僕より小さな男の子と女の子がふたりいた。


(ん?エルナお義姉様のご家族ということは、兄上とお義姉様がご結婚されたら、もしかして僕らは兄弟になるのかな?)


あれ?それってどういうことだろう?

ちょっとこんがらがってきたところに、兄上のカッコイイ声が聞こえてきた。


「エルナ、ここにいたんだね。やあ、テオドールも、今日のご機嫌はどうだい?」

「兄上……」


僕は頭の中がまだこんがらがっていて、ちょっとぼうっとしながらお返事をした。

すると、エルナお義姉様が申し訳なさそうに口を開いた。


「もしかして、ちょっとお疲れになられたのかな?いっぱい教えてもらったから」

「ん?なにを教えてもらったんだい?」

「ええ〜、秘密〜」

「へ〜……。いいよ、エルナは秘密にしていて。テオドールに聞くから」

「あ!ズルい!」

「ねえ、テオドール。エルナに何を教えてあげたんだい?」


心地よくてカッコイイ兄上の声を聞いていると、こんがらがるようなことはどうでもよく思えてきた。

それより、兄上に聞かれたことに答えなくっちゃ!

なんだかエルナお義姉様が「答えなくてもいいよ〜」と言っているけど、そうはいかない!


「兄上のかっこいいところをお教えしていました!」


僕は自信満々に答えた。


「……ほう、それは私も教えて欲しいな」

「兄上はご存知ないのですか?」

「ああ、自分のことは鏡を見なければ見えないだろう。実は私にも見えていないのだよ。なあ、テオドール、兄にもエルナに教えたのと同じように教えてくれないかな?」

「もちろんいいですよ!ではまず、僕ランキング1位の兄上から!」


元気よく答えて、僕はエルナお義姉様に最初にお教えした、一番かっこいい兄上を再演した。

兄上のカッコ良さを伝えることは、僕にとっては何度だってできちゃうことなんだ!


それから僕はランキング10まで全部を兄上にご覧いただいた。

兄上は終始ニコニコと笑顔だったけど、エルナお義姉様は困った顔をしていた。

2度目だったからかな?


どうやら、まだ兄上のカッコよさがつたわりきっていないようですね!!

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