大人編 3話 ~彩夏との再会~
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確か彩夏はあの夏の事件があってから両親とアメリカへ行ったはず。
俺は彩夏にかける言葉を出せずに戸惑っていると彩夏から話しかけて来た。
「本当に久しぶりね!まさかあなたがボクシングをしているなんて、遥から聞いた時は耳を疑ったわよ」
「試合を見ていたのか?」
「当たり前でしょ?遥がいい席を用意してくれたから特等席で見させてもらったわ」
どうやら遥は彩夏がアメリカへ行ってからもちょくちょく連絡を取り合っていたらしい。
その中には当然俺の話題もあったのだろう。
あいつさっきまで控え室にいたけど、何も言ってなかったぞ。
遥は今頃俺がドッキリに引っ掛かった事をほくそ笑んでいるな。
「だが何時こっちに戻ってきていたんだ?」
「今日の早朝に到着する便で来たのよ」
「立ち話もなんだし、続きは打ち上げ会場で話さないか?」
「私も行っていいの?何だか悪いわ」
「いいに決まっているだろう?というより来てもらわないと困る」
「あなたがいいって言うなら私も参加させてもらおうかしら」
彩夏は頷いて肯定したため俺は彩夏を連れて会場へ向かった。
しばらく歩くと1軒の飲食店に到着した。
この飲食店、実は俺の両親が経営している店なのだ。
両親はこちらに来てしばらくは大家さんの手伝いをしていたが、何時までも大家さんに甘える訳にもいかず飲食店で働くことにしたのだ。
働いていた飲食店のオーナーは高齢で跡継ぎもいなかった。
そこでそのオーナーはうちの両親に店を経営してみないかと打診。両親は悩んだもののオーナーからの提案を受け入れて店を経営することになった。
そして両親はいま店舗2階の部屋で暮らしている。
俺は今まで暮らしていたマンションで優雅な一人暮らし生活をしているって訳だ。
「着いたぞ、ここだ」
「ここがあなたのご両親がやっているって言うお店なのね。1度来てみたかったの!」
全く・・・遥は何でも彩夏に話しているな。
後で文句でも言ってやるか。
店の扉には【本日は貸切】という張り紙が付いている。
両親は俺のために貸切にしてくれたみたいだ。頭が上がらないな。
俺は店の扉を開ける。
すると一斉にクラッカーが鳴り響き、俺の登場を歓迎する。
「龍之介、新チャンピオンおめでとう!」
「良くやった!お前はやる奴だと思っていたぜ」
手荒い歓迎を受けながら俺は中へ入っていく。
俺を取り囲む人だかりの中から遥を見つけると、睨んで無言の圧をかけておいた。
すると遥は舌をペロッと出して手を合わせてごめんのポーズを取った。
「お前も入ってこいよ」
俺の声掛けで彩夏がゆっくりと入口から顔を出した。
「私なんかが本当に来ても良かったの?」
「いいから入ってこいよ」
彩夏の登場に今まで俺を歓迎していた歓声が彩夏への歓声に変わる。
「彩夏ちやまん久しぶり!」
「帰ってきてたんなら早く言えよー」
俺の登場より歓声が多いのは気のせいだろうか。
何か釈然としない気持ちを抱えながら店の奥へ進んでいく。
店の奥には両親が俺を待っていた。
「父さん母さん、チャンピオンになって帰ってきました」
「おめでとう龍之介!」
「格好良かったわよりゅ〜ちゃん」
「りゅ〜ちゃんはやめてくれって、母さん」
「いいじゃない!私にとっては何時までもりゅ〜ちゃんなんだから」
母は笑顔で微笑んだ。
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