高校生編 23話 ~彩夏の思い出~
誤字脱字等ありましたらご連絡いただけると嬉しいです。
「私は小学3年まで身体が弱くって、病院の入退院を繰り返していたの」
彩夏は自分の左腕を庭の方へ伸ばす。
今の彩夏はとても健康的で病弱だったと言われてもピンとこない。
「ある日、病院の近くを散歩していると山に向かって伸びている石段を見つけたの。私は頂上からの景色を見てみたいなって思って登ってみることにした」
山へ向かう石段?
俺は自分が知っている場所をイメージする。
彩夏の話は続く。
「石段を登っていくとね、上の方に鳥居が見えてきたの。私はワクワクして鳥居をくぐると正面に小さな神社があった」
やっぱりあの神社か。
あの頃は毎日通っていたが彩夏に会った記憶がないな。
「その時に神社の後ろから声が聞こえてきたの。気になった私は神社の裏へ向かった」
「それで?」
「そこには大人の男性2人と私と同じくらいの男の子がいたの」
あの特訓を見られていたのか。
「初めは大人が子供を苛めているのかと思ったわ。でも違った。何度倒れても、その男の子は諦めずに立ち向かっていった」
確か特訓はローザが亡くなってから始めたはず。
その頃はローザを亡くした絶望を忘れるためにガムシャラに剣を振っていた。
「それを見た私は思わず目を奪われたわ。そして思ったの。私と同じくらいの歳の子があんなに頑張っているのに私は何をしているのかって」
隣に座っている彩夏は自分の手の平を見ながら語る。
「私が剣道を始めたのはそれがきっかけ。それ以降も何度かあの神社へ行ったけど、その時の男の子に会うことは無かったけど・・・」
彩夏は目線を自分の手の平から俺に移す。
「あなたなんでしょ?あの時の男の子って」
「一体何を言っている?」
「あなたが時折見せる動き・・・日本の剣道では習わないのよ。まるでどこか違うところで習った様な剣術」
「・・・・・・」
「私はあなたの剣道を見ていると、あの時の男の子を連想してしまうの。その子も剣道の動きじゃなかったから」
どうしよう?
ここは誤魔化した方がいいか。
それともそれは俺だといった方が良いのか。
「返事は良いわ。でも私はそうだって思ってるから。もし、もう一度会ったら言いたかったことがあったの」
彩夏は立ち上がり座っている俺の目の前まで来る。
彩夏は日の光に照らされてキラキラと輝いて見える。
「あなたのお陰で今の私がいる。きっかけを作ってくれてありがと!」
彩夏は眩しい笑顔で俺にお礼を言うと、恥ずかしそうに立ち去って行った。
<彩夏>
やっぱりそうだった!
あの時の男の子は龍之介だったんだ。
剣道部の入部試験で初めて龍之介を見た時、まさかと思った。
でもその時はまだ確信は持てなかった。
私の疑惑が確信になったのは選抜試験。
私は自分の試合が早く終わったため、他の人の試合を見て回っていた。
その時、偶然龍之介と野村先輩が試合しているのを見つけた。
龍之介は普段、剣道の型を崩さない。
でもその試合では見たこともない動きをして野村先輩を翻弄していたの。
それを見た私は言葉を失った。
あれは間違いない・・・。
私があの時、あの神社裏で見かけた光景が頭に浮かんできた。
そして龍之介とあの男の子がリンクした。
ようやく見つけた!
後はいつ龍之介に聞くかが問題だった。
中々2人になれることが無かったの。
龍之介にはいつも啓介君が近くにいるんだもん。
でもやっと聞けた!
私は龍之介から見えなくなる場所まで移動すると、嬉しさからスキップしながら部屋へ向かった。
その時、偶然通りかかったみどりんが驚いた表情でこちらを見る。
「彩夏どうしたの??」
「あ、みどりん!どうしたの?」
「聞きたいのは私の方よ」
みどりんから変人に見られたかも?!
私は少し感情を抑えて部屋へ向かうのだった。
お読みいただいた方は出来れば評価をお願いします。
X始めました。良ければフォローお願いします。
@iseyari0408




