高校生編 7話 ~選抜試験の初日が終わり~
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選抜試験の初日が終了した。
俺は支度を終えて部室を出た。
自宅までの岐路を歩いていると後ろから声が掛かる。
「龍之介待ってよ」
「彩夏か。どうした?」
「たまには一緒に帰ろうかと思って」
彩夏が俺の横まで走ってきた。
俺は特に断る理由も無かったため、一緒に帰ることにした。
「今日はどうだったんだ?」
「私は5勝1敗。龍之介は?」
「俺は3勝3負だ」
「そっか・・・」
しばらく沈黙が続く。
夕暮れのせいもあるのだろうか、風でそよぐ草木もなぜか物悲しさが漂う。
「ちょっとそこで休憩しない?」
彩夏が少し先にあるベンチを指差す。
俺はその問いに頷きで答える。
ベンチに腰掛ける。
彩夏は制服のスカートが折れない様に気を付けながら俺の横に座る。
「剣道って難しいでしょ?」
「・・・そうだな。馬鹿にしていた訳じゃないが、剣道を舐めていたのかもしれない」
彩夏はフフッと笑った。
風で靡く髪を整えながら微笑む彩夏に俺はドキッとする。
「私も同じ経験があるもの。今のあなたの気持ちは良く分かるわ」
「そうなのか?」
「うん。あなたは強くなりたい、自分の技術を磨きたい気持ちが強すぎるの」
「それがなぜいけないんだ」
彩夏はベンチから立ち上がると近くにあった木の棒を握りしめてこちらを見る。
俺はベンチに座ったまま、その様子を見つめていた。
彩夏は俺に中段で構えたまま近付き面打ちしようと木の棒を振り上げる。
木の棒が俺の頭では無く、手に近付いて止まる。
「あなたは今、面打ちだと思ったでしょ?でも私が狙ったのは小手だった」
「確かにそうだ」
「剣道は心理戦でもあるの。相手の思考を誘導する事でそこに隙が出来る」
彩夏はまた俺の横に座り直す。
手に持っている木の棒を振りながら話を続ける。
「人と人が戦うんだもの。こちらも考えて動く様に相手も考えて動くのよ」
「相手の思考を読む・・・」
彩夏が俺を見つめる。
「あなたは強いわ、入部の時に剣道初心者だって聞いても信じられなかった・・・。でも数ヶ月あなたを見ていて思ったの。戦い方がストレートすぎるって」
「・・・」
「まるで一閃で全てを終わらせる様な・・・荒々しい力で全てをねじ伏せる・・・そんな剣術」
俺は言葉が出なかった。
彩夏には全てお見通しだった様だ。
俺の剣術は魔族やモンスターを殺すために自然と磨かれた技術だ。
剣と剣で戦う事なんて無かった。
ましてや一対一で戦う自体が稀な事だった。
全てを力でねじ伏せる。
アースロットでは当然であり、それが正義だった。
なぜなら弱ければ死ぬだけだから。
でもそれだけじゃ駄目だったんだ。
まるで目の前の霧が晴れた様な気分だった。
これで俺はまた強くなれる!
「ありがとう!彩夏」
俺は思わず隣にいた彩夏に抱き着いてしまった。
彩夏は『えっ!えっ!』と動揺しながら顔が真っ赤になっていた。
俺も慌てて彩夏から離れる。
「ご、ごめん!」
「今回は特別に許してあげる。その代わり明日は勝ちなさいよ」
彩夏はまだ火照った顔を隠しながら答える。
俺は笑顔で彩夏にお礼を言った。
「・・・私はあなたのそういうところが・・・・・・」
彩夏がボソッと呟いた言葉は夏のそよ風と共に流れ、龍之介に伝わることは無かった。
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