小学校編 36話 ~両親の支えと白い部屋~
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自室のドアがノックされた。
「龍之介、入って良いか」
父から声が掛かるが、俺は返事をしなかった。
「そのままでいいから聞いてくれ。あの日の事、父さんも後悔している。もう少し早く神社に行っていればこんな事にはなっていなかった」
「・・・・・・」
「本当に済まなかった」
「父さんは悪くない。僕が全て悪いんだ」
「悪いのは龍之介じゃない・・・魔族だ。それだけは間違えてはいけない」
魔族・・・。
「龍之介、お前はローザちゃんのためにも前に進まないといけない。ここで立ち止まってはいけないんだ」
「無理だよ。僕は弱い」
「お前は弱くなんてない。最後の戦い・・・あれは父さんが見ても凄かった」
「でももう戦う意味なんて・・・」
「これからもアースロットから魔族が転移してくるのだろう? 龍之介の力が無ければ多くの人が死ぬ。今のお前に言うのは酷だが、この世界の命運は全てお前に掛かっているんだ。ローザちゃんの犠牲を無駄にしてはダメだ」
「・・・・・・」
転移盤があるせいで、今後も悲しい事件が増えるだろう。
どうしたらローザの様な犠牲を無くすことが出来る?
転移盤は潰せないのか?
全てに関わっているリーファという女神をどうにかすればいいのか?
今の俺に出来ることはあるのか。
そもそも、なぜこちらとアースロットという異世界が繋がっている?
こちらの世界で、なぜ聖剣が出てきたのか。
分からないことが多すぎる。
俺が狙われているのは勇者の末裔だから・・・本当にそれだけだろうか。
であればなぜデズモンドは啓介を介して俺の仲間の情報を調べていたんだ。
俺を殺すことだけが目的であれば、仲間を調べる必要なんて無いはずだ。
そうだ!アフロディーテだ!
あいつが何か関係しているのではないのか。
ローザがこちらに来るきっかけもアフロディーテが選択肢を出したからだ。
ローザに誘導してこちらに転生させた可能性だってあるはずだ。
アフロディーテに会わなければ。
しかしどうやってこちらから会えばいいのか。
アフロディーテとは何時だって向こうの都合で呼び出されていた。
そういえばザッシュやロイドは転移盤から白い部屋に転移したと言っていなかったか?
もしかしたら転移盤を使えばアフロディーテに会えるかもしれない。
「父さん、お願いがあるんだ!」
俺は自室のドアに向かって父に問い掛けた後、ドアを開ける。
ドアを開けた先にいた父はこちらを見て一瞬驚いた顔をしたが、俺は続けてこう言った。
「神社裏にある転移盤まで行きたいんだ」
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俺と両親は神社裏の転移盤まで来ていた。
結局、母も心配で付いてくることになった。
「龍之介、こちら側から転移盤は起動しないがどうするんだ?」
「まあ見ててよ」
以前、俺が転移盤に手を付いた時、一瞬だが魔方陣が光った。
あの時は驚いてすぐに手を放したが、もしかすると手を付け続けていれば転移できるのではないか。
俺は両親が心配する中、転移盤まで近付いていった。
転移盤の真上まで来た俺は膝を付いて両手を付けた。
俺の両手から光が魔方陣に伝わる。
以前、聖剣が出てきた感覚と似ているかもしれない。
しばらく手を付けていると魔方陣全体に光が行き渡った。
すると転移盤が眩い光を放ち、俺の身体は光に包まれた。
眩い光が次第に収まっていくと、そこは白い部屋だった。
やはり転移盤からここに来られたか。
周りを見回すと驚いた顔のアフロディーテがそこにいた。
「え!龍之介? どうやってここに来たの?」
「良かった。会いたかったんだ」
アフロディーテは耳まで真っ赤になるほど照れていた。
甘い言葉に慣れていないのだろうか。
瞳もウルウルとしていたが、顔を左右に振って誤魔化していた。
「あなたからここに来てくれたなんて嬉しい! 今日はどうしたの?」
「アフロディーテ、君に聞きたいことがあるんだ」
「まずは座って話をしましょう」
アフロディーテが空間からテーブルと椅子を出して、俺に座るよう促す。
俺が着席したのを確認した後、紅茶とお菓子を出して俺に勧めてきた。
「初めて来たときもこんな感じだったな」
アフロディーテは笑顔で頷く。
紅茶を一口飲んだ後、俺は神社で魔族と戦ったこと、ローザが致命傷を受けて亡くなったことをアフロディーテに話した。
「そう・・・ローザが・・・」
「お前はローザがこうなることを知っていたんじゃないのか?」
アフロディーテは大きく首を振り否定した。
「あなたの助けになると思って転生させたけど、こんなことになるなんて知らなかったわ」
「女神の力でローザを生き返らせることなんて出来ないよな?」
「そうね、流石にそれは難しいわね。でもローザとはまた会えるでしょ?」
は?
何を言っているんだ。
俺が死んだ後に死後の世界で会えるってことか?
俺は訝し気にアフロディーテへ問い掛ける。
「ローザと会える?何処で?」
「だって28歳になったらアースロットに転移して魔王を討伐しないといけないじゃない」
え?
は?
「だって魔王は倒したじゃないか」
「いえ、それは前世でしょ? 今の世界では魔王は存命よ。あなたがまた魔王を倒す、これは決まった未来なの。転生させる時に言ったわよね?同じことが起こるって」
アフロディーテは当然の様に返答する。
聞いてないぞ!
・・・いや、確かに同じことがそのまま起こるとは聞いたが・・・。
じゃあまたローザに会えるのか?
「じゃあまたローザに会えるってことか?」
「だからそういっているじゃない。でも向こうはあなたを知らないのだけれど」
俺は喜びを隠しきれなかった。
小躍りしたいほど嬉しい!
またローザに会える!
ローザにまた会えるのなら俺を知らなくたっていい!
「ありがとうアフロディーテ!」
「なぜお礼を言われたのか分からないけれど、感謝は受け取っておくわ」
アフロディーテは嬉しそうだ。
「それが聞ければもう大丈夫だ。もう戻るよ」
「ちょ、ちょっと待って! 折角来たのだからもう少し話していきましょう?」
俺はアフロディーテの気が済むまで話に付き合うこととなった。
だがそんなことは些事だ。
1時間程経っただろうか。
ようやくアフロディーテが落ち着いてきたようだ。
そろそろ帰ろうかと思っていた所、アフロディーテは少し真剣な表情で話し始める。
「最後にひとつ。龍之介、今の世界はあなたの前世とは大分違う未来になってきているわ。もしかするとアースロットに転移するのも早まっているかもしれないわ。何時行っても良い様に準備だけはしておいてね」
アフロディーテは最後の言葉を述べると俺を転移盤の元まで案内する。
俺は転移盤の元まで来ると改めてお礼を言った。
「今日は会えて良かった。ありがとう!」
「えぇ私も楽しかったわ。また会いましょう」
転移盤の光に包まれて俺の姿は消えていった。
『ローザの話で上手く誤魔化せて良かったわ。私の理想通りになってきているわね。これからも頑張ってね、龍之介』
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