ターコイズさん
Q①、アーシャの名づけのエピソード
A、簡単にあらすじで。
難産だったため、アーシャの母親は名づけをできるような状況ではなかったものの、心配のし過ぎで父親もそれどころではなかった。
名がつけられていないことを母親が知ったのは、出産から五日後。産婆も父親の慌てように心配して、子供の世話の仕方を教えている中。
産婆にどやされ、父親は慌てて出産前に考えていた名前案を出すが、金髪の歴史上の人物、青髪のニスタフ伯爵家の初代、赤い被毛の尊敬する元上官など、黒髪の息子には合わない候補ばかり。
そこで産婆が、出産で儚くなる母親に、名前を贈ってやってはどうかと声をかける。父親もあまりに外れてしまって自信を失くし、それがいいと後押しした。
母親は自身の父親が、祖王の物語という古い騎士物語を好んでいたため内容を覚えており、その登場人物の中から選ぶことにする。
そうして選んだのは、華々しい栄光を手にした王でもなく、麗々しい功績を打ち立てた騎士でもなく、地味だけれど最も長生きをしたと明言された登場人物だった。
Q②、イクトの使用人とヒノヒメ先輩について
A、押しかけ嫁候補が現れたことには、使用人揃って声を大にして笑いました。
イクトの使用人たちは、イクトの知り合いが宿代わりにやってくる際の対応も慣れているので、きちんと紹介状を持って現れたヒノヒメ先輩たちは、今までと毛色の違う客という認識でした。そのため、最初は猫を被って対応しています。
さらに相手が本物のお姫さまと知って恐縮するも、イクトの惚れられ遍歴を知っているので、そこまで気にせず受け入れました。その上で、出会いやぐいぐい押して第一皇子のほうから許諾をもぎ取った話を聞き、大笑いします。
イクトが戻るまでの年単位での滞在と知り、猫を被ることは早々に止め、ヒノヒメ先輩もそのことを許しました。チトセ先輩からすれば、神がかり的なヒノヒメ先輩を止められないので、変わった使用人たちにも突っ込むことは諦めています。
ただ基本ヒノヒメ先輩の生活は、チトセ先輩が主導し、屋敷の使用人は手伝う程度。それでもヒノヒメ先輩の使用人たちを味方に引き込んで損はないという直感により、使用人たちとも仲良くやっています。
Q③、ディンク酒の会員権をもらった三者の反応について
A、ストラテーグ侯爵、ウェルンタース伯爵、ルキウサリア国王の三人それぞれについて。
まず、ストラテーグ侯爵。
レーヴァンから話を持ち掛けられた上で、後日改めてアーシャに頭を下げにはいっている。
使い方としては、部下や懇意にしてる貴族家に、祝い事があれば贈る形。酒一つでいい顔ができるので、コミュニケーションツールとして重宝しており、地味にアーシャに強く言えない心境になった。
次にウェルンタース伯爵。
ウェルンタース子爵令嬢ウェルンの祖父に当たる人。
個人的には可愛い孫娘の初恋を応援しているが、伯爵家当主としては帝国存続と家門のため、良いと思える判断をする人物。そのため、息子のウェルンタース子爵はユーラシオン公爵側に残しつつ、自らはルカイオス公爵派閥にいた。
皇帝のサロンと会員券をきっかけに、皇帝派閥に移ったものの、大半の派閥の構成員はルカイオス公爵派閥に残している状態。その気になればすぐに息子に位を譲って、自らの権勢を落とす準備もしている。
正直皇帝の政治能力に期待はしていないので、先帝に仕え、その先帝が指名した後継者を支えようという義務感のみ。それでもルカイオス公爵との対立も視野に入れて皇帝派閥に移っており、覚悟は決まっている。
その上でルカイオス公爵を無闇に刺激しないために会員券を派手に使うことはなく、ディンク酒を晩酌で定期的に飲めて喜んでいる。
最後にルキウサリア国王。
ルキウサリアの支店の宣伝も込みで、ついでにテスタの手綱も握ってもらおうという目論見で渡された。そのため、定期的にテスタはディンク酒をもらいに登城している。酒だけもらって逃げられることもある。
作っているのは帝都なので、数に限りがあり、たまに帝都から輸入する形で一定数を買うため会員券を使っていたりする。派閥貴族に回すこともあり、評判は高い。
最初は帝国関係者だけが反応していた中で、すぐに定期的に手に入れられるようになったルキウサリア国王は、先見があると一部では評価もされている。
そうした話を聞けば、ディンク酒や封印図書館を含め、錬金術は使いようなのだと実感する。それと同時に封印図書館に着いて第一皇子に脅された内容も過るため、ルキウサリア国王は飲む度に溜め息を吐きそうになった。
Q④、菓子職人の様子
A、世界観的設定を含めてご説明。
質問時に話題に出たのでチョコの扱いから。
カカオは竜人の住む地域に自生しており、古くから飲まれる薬だった。帝国が統一したことでチョコを飲む人間も現れたが、鼻血を噴いて倒れたため、人間には毒だと長年忌避されていた。
アーシャが生まれる二百年ほど前に、毒だと言われたチョコを口にする奇特な人間が現れ、そちらは問題なく飲めた。その際には薬の一種として、大陸中央に持ち込まれる。さらに試行錯誤の末、砂糖を入れた甘い飲み物として貴族の間へ広められることに。
現状、チョコレートは固形よりも飲み物として普及している。保存を優先する輸入品であり、竜人の国でココアパウダーにして製品化されるのも一因。
そのため、チョコレート菓子というものも一般的ではない。ココアパウダーからチョコを液状にして、ナッツやフルーツをコーティングする程度のもの。さらに保存料もないのですぐに酸化して味が落ちるため、あまり人気のあるお菓子でもない。
しかし前世を持つアーシャからすれば、チョコレートは固形がデフォ。そのため、突然固形のチョコを求められた屋敷の料理人は困惑しながら試行錯誤。知り合いの料理人に頼り、試行錯誤をする人員が増える。これが、屋敷に集まる料理人が増える一因。
チョコの例からしても、アーシャの要望を実現するには、集合知が必要となる。また、知識を持つ者はそれなりに好奇心や新たな発展にも興味を持つので、さらに足繁く屋敷へ通うことにもなっていた。
その他にも、均一に製品化された小麦粉や砂糖が常識だったアーシャは、ひたすら素材の雑味を取るよう求める。今まで使っていた砂糖や小麦粉をさらに純化させ、そこから菓子を作るのは、料理人たちからすれば想定外の手順。
料理人たちからすると、アーシャの視点は高すぎるというのが一致した感想。新たなお菓子のアイディアは、完成形としてこういうものを作ってほしいというオーダーから、アーシャの感覚を元に、現状材料からして存在するものでも、洗練して作る過程を経るため。
ただしアーシャが想定しているのはコンビニスイーツ。本格パティシエのお菓子ではないので、その程度という思い込みがある。その実、工業化した世界での高度な処理を、当たり前に手作業で求められる料理人たちは、必死になって要望に応えていた。
アーシャにやる気がないため、ハリオラータのために作る新しいお菓子は、料理人たちの中の有志がレシピ本にする準備をしている。そもそもアーシャは、作り方をメモすることもしていない。セフィラも覚えてはいるが、飲食をしないため重要視しておらず、アーシャの手に委ねると普通に失伝する。
またレシピ本としてアーシャの功績を形にすることで、半ば無茶振りながら、ただでレシピを教えられている状況に報いて、教わったお菓子を外へ持ち出したい下心もあった。
お菓子一つで貴族に気に入られれば、将来安泰。料理人は技術職であり、他に教えなければ完成形を見ても他人は作れない。代替の利かない職扱いをされるため。
さらに雇い主の貴族が没落しても、レシピと技術を売り込めば他の貴族の下で再就職も見込め、子供に伝えれば、子供も安泰と言えるくらいの価値がある。
そうしたことに気づいていないアーシャの無知さは、雇う側の皇子だからこそだと料理人たちは思っている。アイディアが豊富なのも、宮殿で余程素晴らしい食に触れているからだろうと。実際はそこまでではない。
食生活の実情を知る側近たちから見ると、アーシャのアイディアは、古い本に書かれたものの再現か錬金術的アレンジだと思っている。
また現状のお菓子作りは、ルキウサリアの畜産による豊富で新鮮な乳製品を主に使っているので、アーシャのレシピでお菓子を作る場合、ルキウサリアからは離れられない可能性が高い。
宮殿には専用の牧場があるため、アーシャ自身による宮殿での再現は可能となっている。
また、もし宮殿の料理人でルキウサリアの屋敷での様子を耳にする者がいれば、両公爵の監視を掻い潜ろうとするかもしれない。




