5話 泣き叫ぶ少女
第2の塔、儀式の間で起こった
3勇者の戦いが有ったのは昼過ぎの事。
そして、第2の塔で召喚された存在が
【善】であるか【悪】であるかの議論が
大神殿で審議が執り行われようとしていた。
この審議に参加するため大神殿に趣いたのはキュロスであり
巨人族のクラリスは
男を取り押さえる為、キュロスに助力した事や
キュロスの助言や、第3の塔の塔神官長の助言もあり
正式にではないが、勇者の1人と認められた。
クラリスは、第2の塔に残り
巨人族に合う椅子や机が無いため
結界の前で床に座り
差し出された肉や食事、そして酒を
その口に放りこみながら
結界の中で無言で佇む男を監視する。
そして、第3の塔
第2の塔に続き
さほど時間を置く事も無く
第4の塔で
【勇者召喚の儀式】が成功した。
ただ、召喚されたのは
【幼き少女】
そして、ただただ・・・泣くのみ・・・。
召喚された瞬間か
それとも、召喚され、この場に転移させられる前からなのか
それは誰も解らなかったが
少女が召喚されたこの場に居合わせた神官達は
目の前で泣く少女に戸惑うばかりだった。
神官達は、戸惑いながらも
視線を交わし、無言の会話の後
その多くの視線は1人の神官に向いた。
勇者召喚の儀式に参加した女性神官の中で
一番若い彼女に白羽の矢が当たったのだった。
彼女は、ぐ!っと息を呑み
大きく息を吐いて
一歩・・・二歩・・・と進み出ると
「お嬢ちゃん
怖くないから・・・
泣き止んで・・・。」と・・・
年齢を重ねた数人の神官達から
「違うだろ!」と
言わんばかりの視線が女性神官に向くが
女性神官も
「なら、かわってよ!!!!」と
言わんばかりの視線で睨み返す!
女性神官の声かけは
10分ほど続くが、少女は一向に泣き止まなかった。
ただ、第2の塔の塔神官長が
姿を現したことで
この場に居合わせ
泣き叫ぶ少女の対応に困り果てた神官達は
全ての責任を塔神官長に丸投げしたのだった。
塔神官長と、神官長を呼びに行った副塔神官長は
他の神官から、今までの詳細を受け
初めて現状を理解するのだった。
さすがに、塔神官長も
魔法陣の中心で泣き叫ぶ少女相手に強く出れない
そもそも、少女の叫ぶ【言葉】が理解できなかった
ただ、どんな内容かは理解はできるが・・・。
勇者召喚の儀式では
この第4の塔の神天使である
【アールマティ】様が、異世界から
勇者となるべき存在を召喚したさい
神天使の加護を与える事で
異世界の言葉が理解でき、それが自動翻訳されるという
魔法が発動する
コレによって異世界の勇者の言葉は
この世界の人間の共通語として
誰しもが理解できるはずなのだ。
それが、出来ないと、言うことは
この少女は神天使の加護を受けていない事となる。
そして、少女はこの世界の言葉を理解出来ないと言うことでもあるのだった。
だが、勇者召喚の儀式で召喚されたはずの
この【幼き少女】が、神天使の加護を受けていないなど
誰1人、信じられないのだった。
信じられなくても
事実、言語が通じないのだ
とりあえず、泣き叫ぶ少女に
近づき肩を揺らすなり
抱きしめるなり、して
意識をこちらに向ける事が一番だと・・・
またもや、先ほどの女性神官に白羽の矢が立つのだった。
これには、彼女も
塔神官長の様な、不潔なジジィに抱かれるより
美人な私!に抱き抱えられる方が
少女にとっても良いだろうと
声を掛けながら、泣き叫ぶ少女にゆっくりと近づいていく。
ある程度の距離まで、近付いた時だった
少女の懐から、一匹の魔物が飛び出てきた
魔物と言っても、小型の四足歩行の魔物
シッポを入れても30cmもない魔物であったが
まるで、神官達を威嚇するように
「ニャァァーーーー!!」と呻るのだった。
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この人族が暮らす国では
ペット文化は無い
小型の動物であろうと
ソレは魔物でもあるからだ。
ただ、街には【ノラ猫】【ノラ犬】
などは存在するが【ネズミ】や【カラス】と同じく
【害獣】や【魔物】と呼ばれる存在であり
当然、駆逐する対象であり
見つけ次第、兵士に捕まり殺される事となる。
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小さくても【魔物】が
少女の懐から飛び出てきた事で
女性神官は悲鳴をあげて逃げ出すのだった。
神殿努めの神官と言っても
小さな【害獣】を捕まえる程度なら
成人を超えた男性神官なら
誰しもができる事でもあった
少女の懐から出てきた害獣が何かは知らないが
人を威嚇する姿から、人を害する獣である
ソレを捕まえる為に動き出そうと
行動を起こそうとしたとき
泣き叫ぶ少女を中心に半球体の結界が構築された。
驚く神官達
コレでは、結界の中にいる
泣き叫ぶ少女にも
アノ害獣にも手を出せなくなった!と
勇者召喚された少女の
自己防衛から来る結界魔法なのか・・・
それとも、少女を守ろうとする
神天使【アールマティ】様の加護なのだろうか
そう、神天使【アールマティ】様の司る力は
【献身】と【敬虔】なのだ
泣き叫ぶ少女を包み込む優しき結界は
その加護なのだと・・・。
こうなれば、神官達では
手も足も出しようがない
もしこの結界が、アールマティ様の加護なら
手を出しことは背徳行為となるからだ
塔神官長や、神官達は少し話し合い
とりあえずは、少女が泣き止むまで待つ事となった
見た目は、まだ10歳にもならないだろう少女
1時間、長くても2時間も泣けば
泣きつかれて、泣き止むだろう
または、体力が無くなって
疲れて寝るかもしれない
とりあえず・・・今は待つしかない、と・・・。
神官達は、まだ理解していなかった
勇者召喚された存在が普通では無いことに
そして、目の前で泣き叫ぶ少女こそが
もっとも【非常識】な存在だと言う事も・・・。
そう数時間後
神官達は自分達の考えの甘さに頭を抱える事となるのだった。




