4話 封印
答えを見いだせない問題が
【男】の思考を深くしてく。
バカバカしい問題に
答えを導く公式は無く
【勇者召喚の儀式】と口にし
「お前は勇者に選ばれた!
我が父である、神に感謝し
その命・力・身体を捧げ
ヶの敵を討ち滅ぼす為に
我等の為に戦う事を誓うのだ!」
神天使と名乗った有翼人の上から目線の【ドヤ顔】が
脳裏に焼き付き
(もう一度、焼き滅ぼして殺ろうか!)と
組んだ両腕に力が篭る!
それでも、しばしの静寂は
男にとって心の落ち着く時間でもあった。
別に静寂や平穏などが好きではないが
自身の世界では、ここ1ヵ月以上戦争の真っ只中であり
1ヵ月も最前線で戦い続ければ
静寂も懐かしくもあっただけなのかもしれない。
だが、男の思いは
自身が居なくなった戦争の事だ
国や仲間の為にも
今すぐに自身の世界に帰りたいが
【異世界転移】の魔法など男の知識には無く
自身を召喚した有翼人も【すでに居らず】
その考えの足がかりすら掴めず
時間だけが経過していくのだった。
男の思考を止めたのは
「少し聞いても良いか?」と
耳に入ってきた言葉であった。
男は目を開き、その人物を目に入れる
黄金の髪に金色の瞳
年は若く顔立ちの良い人間の青年
男は、サルサを殺したが
アレは、機嫌の悪かったこの男に対し
不敬と呼べる愚かな態度を働いたからあって
普通に接すれば、男もそれなりの対応をするだけである。
「何用か?」
キュロスは言葉の通じる相手だと
内心ホッとし
「私は第5の塔で召喚されし勇者
名前は、キュロス
貴方もこの塔
第2の塔で召喚された勇者なのだろ?」
間違えではない
男も神天使から、簡単な説明は受けている
だが、召喚に【応じた】覚えはない
ただ無理矢理に召喚された・・・
その反面
キュロスは自身から勇者召喚に応じ
その事を誇りだと胸に刻んだ男である
まるで選ばれた事が喜ばしい事だとも言いたげな
キュロスの言葉は
勇者召喚に対し、憎悪を燃やす
無理やり第2の塔に召喚された、この男には
不快でしかない。
だが、キュロスは
第6の塔の勇者と会ってみたが
まるで会話が成り立たなかった中
言葉の通じそうな、目の前の勇者は態度がデカイが
あの勇者よりかは好感が持てると
「これから共に戦う仲間として
仲良くしてほしい!
その第一歩として
貴方の名前を教えて貰えないだろうか!」
男にとって
目の前の、キュロスと名乗る男は
仲間でも友でもない
仲良くするつもりも無いが
これからずっと「貴方」とか「君」とか呼ばれる方が煩わしいと
「我 (ワレ)が名は
「このトカゲ野郎!
ここで逢ったが運の尽きだ
この世界で屍となれ!」
男の発言を遮ったのは
怒鳴り声にも匹敵する
女性だろう存在の大声だった。
キュロスと、男の視線は声の聞こえた方向である横に向く
儀式の間の出入り口は、キュロスの背中の方向に存在するが
その声が聞こえた方向に存在するのは
先ほど、男がサルサを殺したと同時に壊した塔の壁
その壊れた壁の穴から姿を現したのは
身長4メートルはある女性・・・
いや、抜き身の大刀を片手で掴み上げる姿は
女戦士と言う言葉が似合う女性である。
キュロス「巨人族が何故?」
そんな言葉など聞く気も持たない女戦士は
魔法陣の真ん中で腕を組む男に走り出し
その大刀を振り上げる。
キュロスは理解する
この女性と、この男は
同じ世界の出身
そして、何らかの因縁の相手だと
だが、この男は勇者であり
絶対【仲間】と、しなければならない存在
この女戦士も、十中八九、どこかの塔で召喚されし勇者だろう、と。
(この2人は因縁ある間柄
この2人がPT (パーティー)を組めるとは思わない
ならば、自分側の仲間にするなら
巨大な魔力を持つ、自分以上かもしれない、この男の方だ!
戦士だろう彼女も、巨大な魔力を秘めてはいるが
戦士と言うに相応しい存在だからこそ
巨大な存在相手には、ほぼ【役に立たない】
それは【6度繰り返した】【勇者召喚】
その異世界での戦いで良くわかった事だ。)
キュロスは即座に動き
男の前に走り込むと
【聖剣クレイヴ・ソリッシュ】を抜き
巨人族の女戦士が振り落とす大刀を受けきった!
驚いたの女戦士
目の前のトカゲを殺すために振り下ろした刀が
小人族のチビに受け切られたのだ
「て・・テメーは、誰だ!」
キュロスは
まるで膝頭ほどの人形を睨みつける体勢の
巨大な女性に視線を合わせると
「私は第5の塔で召喚されし勇者キュロス!
巨人族の貴方も
他の塔で召喚されし勇者の1人なのでしょう
ここは
そこまで言うと
キュロスと、女戦士の視線はキュロスの後ろの男に向いた!
なぜなら、そこには巨大な魔力の塊が存在し
まさに、打ち出される瞬間だったのだ!
そして、その魔力の塊は、男の
「消え失せろ、木偶の坊」の言葉と共に撃ち出された。
キュロスは咄嗟に
その魔力に聖剣をぶつける!
だが、押し戻される聖剣
それでも、多少ではあるが
その威力を削り、方向をずらす事に成功する
巨人族の女戦士は、刀など持ってる状況ではない
その巨大な手をその両手を前に、魔力の塊にかざし
魔力を開放し、両手で魔力を受ける!
いや、本来の彼女では受けきれないだろう
男がはなった魔力だが
キュロスの聖剣が威力を削り
彼女が神天使から授かった加護の力を解放して
どうにか方向を上にずらし放つ事で
魔力の塊は、塔の壁を再度壊し
空に飛んでいき
空の上で、何かにぶつかり爆炎をあげるのだった。
額に冷や汗をかくキュロスと
「ハァ! ハァ!」と肩で息をする、巨人族の女に
男は笑みをこぼし
「ほう、あれを凌いだが
加護と言うのは、それなりに力を増すようだな
それでも、その力
我が国との戦いで使われると少々厄介
フッ・・・
ここで葬ることにするか」
女戦士は、その言葉に
「ッチ!」っと舌打ちし
男を睨みつける。
そんな2人の間に入ったのはキュロス
「待ってくれ!
2人が因縁の有る間柄なのは承知した
だが、ここでの争いは待ってくれ
勇者である巨大な魔力を持つ2人が争えば
この地に暮らす多くのに人間に被害が出る!
今は、私の言葉に耳を傾けて貰えないだろうか?」
男は、不敵に笑う。
「それがどうした!
異世界の人族なぞ、我の知ったことではない!
全ての罪は、我をこの場に召喚した有翼人にある
すでに居ないアレを呪いながら破滅に向え!
ソレが我を召喚した報いであり大罪である
全てを受け止め
死す事で、その償いと認めよう!」
キョロスは理解する
(この男は、言葉は通じるが
話が通じない
そう、この男は【ダメ】だ!
早々に私の【栄光の物語】から退出願おう!)
勇者キュロスの聖剣が
第3の塔で召喚されし巨人族の女戦士の大刀が
第2の塔で召喚されし男に向けられた。
第2の塔、儀式の間で起こった3勇者の戦いは
その結果だけを言えば
第2の塔で召喚されし男が敗北した・・・
と、その後に報告された。
第5の塔の勇者キュロスが強かったわけではない
第3の塔の巨人の女戦士が強かったわけではない
第2の塔で召喚された男が
【圧倒的に強かった】
ただ、それだけであった。
女戦士が力任せに攻撃する
だが、女戦士の半分しかない身長の男は
腕を獣化だと思える変化をさせ
鱗が生えた腕だけで
その攻撃を受けきる
キュロスは聖剣での攻撃と
魔法での攻撃を繰り返すが
その全てを男は、苦もなく防ぎ切った。
巨人族の女戦士も
キュロスも全力での攻撃ではなかった
それは、この場所が全力を出せる場所ではなかったからだ
先ほどキュロスが男に言ったように
2人が全力を出せば
被害は甚大であっただろう
そして、何よりも
目の前の男は
別に2人を攻撃するわけでもなく
その王者の風格を漂わせたまま
全てを受けきり
弱者に対する笑みを浮かべたままであったのだ。
キュロスは聖剣を構えたまま
横に存在する女戦士に声をかけた。
「まだ、貴方の名前を聞いてなかった
肩を並べて戦う戦友 (とも)の名前を教えて欲しい
そして、できればだけど・・・
アレの弱点なんかを知ってれば
ついでに教えて欲しい所だけどね・・。」
大刀を構えたまま巨人族の女戦士は笑う
「小人族が私を友と呼ぶか!
ああ、いいだろう
あのトカゲを駆逐する仲間だと認めてやろう!
私の名前は【クラリス】
【クラリス・ジュリエット・チタン】
あのトカゲの弱点は・・・
無い!
あるとすれば
この太刀が【蛭王 (ひおう)】
そして・・・あの姿
本来の姿の10分の1の魔力も無い
弱体化した人型の今の状態が
弱点とも言えるが・・・。」
キュロスの眉間に深くシワが寄る
(本来の姿・・・?
まだ、本気で無いにしろ
あの男は私の上を行くのに
アレで10分の1?
今まで、そんな存在と戦った事もないぞ・・・。)
「勝てる気がしないな・・・・
だが勝てないまでも
クラリス!
アレを封印する、魔力を貸してくれ!」
「封印?
それが出来るなら
いくらでも貸してやるぞ!」
2人の会話を聞くも
ただ、腕を組み、笑みをこぼす男に
キュロスは魔力を溜め
魔法を発動させた
「【キューブ・プリズン(立方体・監獄)】」
男が半透明な壁に囲まれた
それは正方形の形を成し
男の行動を阻害し閉じ込める魔法ではあるが
キュロスの予想とは別に
男は何も抵抗もなく、その監獄に閉じ込められた。
いや、男にとって
この程度の魔法は、何の拘束にもならない
ただ、これで静かになったと
その場から動く事もなく
腕を組んだまま
目を閉じた。
そして、こんな拘束魔法など
意味を為さない事を一番理解していたのは
キュロス本人だった
だが、一時でも
戦いを中断させ、平和を、安心を得るために
たった1つの方法だった。
後に、この場にいた神官達から
この男に塔神官長を殺された事を知り
男を拘束した事を感謝された事でも
これが最善だったと・・・
ただ、何かあった時の為
常にキュロスか、クラリスが近くに居る事が必要となった。
そう、周りから見れば
塔神官長を殺した、人ならざる存在は
勇者キュロスと、勇者クラリスに寄って
監獄と呼ばれる結界に拘束されたのだった。
これは、第2の塔で召喚された勇者が
圧倒的に強かったが為に起こってしまった
知られざる真実だった。




