3話 人ならざる者
第3の塔の勇者召喚が成功した
ただ、召喚された勇者が巨人族だったのだ
これから、魔族・獣人・亜人・魔物と戦おうと言う
人間族にとって
亜人である巨人族が
【勇者】として召喚された儀式が
本当の意味で成功かと問われれば
答えれる者はおらず
誰しもが口を閉ざす・・・。
そんな第3の塔の勇者召喚から
遅れること1分だっただろうか
第2の塔で、勇者召喚が成功した!
他の塔と同じく
儀式の間と呼ばれる一角で
地面に書かれた魔法陣がうっすらと光を浴びていく
第2の塔の塔神官長【サルサ】は
儀式の成功を確信する。
7つの塔に、それぞれ存在する
7人の塔神官長、その中で一番若い62歳のサルサ
その信念とも呼べる【意思】の強さで
55歳と言う若さで、塔神官長まで上り詰めた男でもある
そして勇者【キュロス】の1報を聞き
その足で塔に向かい
儀式に参加し40時間以上寝ずに魔法陣に魔力を注ぎ続けていた
そして、その意思の強さでもって
召喚の儀式を成功させたのだ!
歓喜する、サルサ!
「ハッハッハッハ
【ウォフ・マナフ】様こそが最高の神天使!
【完璧】?
【王権】?
【正義】?
そんな与えられた【物】に
止まってしまった【加護】に何の意味が有る!
我が塔【意思】こそが
世界を変えられる【力】があるのだ!
そう、世界を確変できる【意思】を持つもの!
絶対である唯一神ですら
変えられない【強い意思】をもつ【勇者】
その召喚に今!
成功したのだ!!」
召喚陣の前に陣取り
両腕を大きく広げ
神の導きの光と思わす
魔法陣の光に身を委ねる。
サルサは信じる
この光の中に、キュロスを超える勇者が存在すると・・・。
ゆっくりと光も落ち着き
サルサは魔法陣の中で、不機嫌そうに無言で立つ存在を目にする。
(人・・・では無い・・・
亜人・・・でもない
獣人でもない・・・
悪魔か!・・・いや・・・
悪魔の様な角や
獣人の耳やシッポもない・・・)
「せ・・精霊・・・
上位精霊のたぐいか!」
それは、独特の雰囲気を持つ、人型の生き物
身長は2メートルほどだが
黒のズボンに上半身は裸であり
まるで王族の様なローブを羽織る
その完成された肉体は鋼の様に強く硬い
そして
スキルでも、魔法でもない
周りの者全てを威圧するほどの存在感
ただ、解る事は
【人間】では無いことだけ
ゆっくり見開かれる目は
言葉を発した、塔神官長のサルサへ向けられた
他の神官が、恐怖で動けない中
強い意思を持つサルサだけが
この召喚された【男】の前で動くことが・・・
いや、口を開く事だけができた。
「何故・・・精霊種が
勇者召喚に応じた・・・・。」
その言葉に
召喚された勇者だろう存在は
その王者の証とも言えるローブを翻すように左腕を振り
「笑わせるな!」と・・・・
ただ、その腕は魔力と共に振られた。
そう、彼にとっては集 (たか)るハエを振り払う為に放った魔力
だが、その魔力の塊は
塔神官長サルサを跡形もなく吹き飛ばし
そのまま塔の壁を破壊したのだった。
半狂乱の神官達だったが!
召喚されたのは【人ならざる者】
人族に牙を向く・・・者・・・
口を開けば塔神官長の様に殺される
動く事も叫びをあげる事も出来ない!
そんな中
召喚されし、人ならざる者は
周りが静かになったと
さほど神官達など気にする事もなく
その場で腕を組み
静かに目を閉じた
徐々に深まる眉間のシワに
まるで、何かを深く考え
その思考の渦に迷い込んでいくかとも取れる
彼の立ち姿だったが
威厳とも呼べる
王者の風格だけは
見るものを圧倒するのだった!
死を恐怖する神官達は
言葉すら発せられず
まるで存在を消そうと
その体を小さく、その息をも殺す・・・。
静寂
そう、それは静寂と呼ぶに相応しい静けさだった。
たった、数分の静寂。
この間に
塔神官長の死を目の当たりにした
20人は居た神官達は
死の圧力と恐怖と緊張に耐え切れず
気を失う者や
失神をする者と
意識を保った神官は
副塔神官長の名を持つ2人だけとなっっていた。
そして
数分間の静寂を打ち破ったのは
儀式の間に飛び込んできた
【勇者・キュロス】
出入り口から、儀式の間に入ったキュロスは
部屋を一瞥し、腰の聖剣に手を掛け叫ぶ
「何があった!
君達(神官達)は大丈夫か?」
副神官長の1人は
儀式の間に入ってきた
黄金の髪と金色の瞳を持つ、イケメンが
勇者キュロスだと一目見てわかった
その噂に惹かれ一度遠目で確認していたからだ。
(あんな勇者が我等が塔の召喚に応じて欲しいと・・)
そして、どうにか口を開く
「は・・・はい
全員・・気を失っているだけです・・。」
そう、死んだのは塔神官長のサルサ、1人
そして、彼は肉片の1つも残らず消滅したのだ
それを助けてくれ、回復してくれと言うのは
今更、到底無理であり
今は残った神官達全員が
肉体的に無事であることを告げた。
その報告を受けキュロスは
召喚陣の真ん中んで1人立つ存在に目を向け
「彼は・・・
彼がこの塔の勇者なのか?」
「・・・」
副神官長は
一瞬、口に出かかった言葉を飲み込んだ
下手に言葉にすれば自身が塔神官長サルサの様に殺されるかもと・・・。
そして、召喚された勇者に振り向き
目をつぶっている事を確信してから
勇者キュロスに向き直り
無言で首を縦に振る・・・。
そう、何度も、何度も、である。
腰の聖剣に手をかけたまま、キュロスは
(やっぱりか・・・。)と
聖剣から右手をゆっくりと離し
戦う意思は無い事を示すが
腰の聖剣をいつでも抜けるよう
左手で聖剣の鞘を抑え固定したまま
第2の塔の週者であろう
人有らざる男に足を踏み出していくのだった。




