1話 不変の愛
鈴は、謁見の間と呼ばれる断罪の間からでると
双子の兄が作ってくれた服を求めて
第4の塔にある、自分の為に用意された部屋へ足を向けた。
それと同時に、マフも
着心地の悪い、貴族風の服を嫌い
この世界で普段着として使っている
この世界の服に着替えるために、鈴と同じく
第7の塔の自室に足を向けるのだった。
鈴は着たいたドレスを脱ぎ捨て
嬉しそうに自分自身の為だけに作られた服に手を伸ばす
何十着もある、双子の兄が作ってくれた服の中でも
お気に入りの服
それは、鈴の双子の兄がある音楽番組を見ていた時
とある女性歌手が歌を歌う映像が
台所で料理をしていた鈴の目に入ってきた
鈴も音楽は好きだが
これと言って、好きな歌手は居ないし
一般人の自分が、そんな有名人と会う事は無いと
芸能人の名前など、憶えても居ない
ただ、その女性歌手の服装だけは
【かわいい】と思えたのはたしかであり
料理をしながら、つい
「あ、あの服かわいいね。」
そんな言葉を零した
その次の日の夜には
あの【かわいい服】よりも【カッコイイ】
【カッコかわいい服】を双子の兄がプレゼントしてくれた
そして、数十着ある服の中でも
お気に入りの服となった事は確かだった。
鈴は服を着
兄の優しさを肌で感じ
気合を入れる
「よし!
お母さんに会うために
帰る方法をさがすぞーーーーーーーーーー!!
お・・・お兄ちゃんは
お母さんの、ついでなんだからね!!!」
だが、あえて言おう
【お父さんはどうした!!!】
鈴は身嗜みを整え部屋をでると
塔を離れ、神殿と都市を隔てる
南門へと足を向け
見知った顔の神官達に
この世界の言葉で、挨拶をしまくるのだった。
そう、第4の塔の勇者リーン
それは、この世界の言葉を放せないと知っている神官達を驚かせるが
この時間は、皇帝との謁見がある時間と
何も知らない神官達に困惑を与えるのだった。
神殿の4つある出入り口の1つ、南門では
病人とも思われる色白の少年が待っていた
「マフ君、まった?」
「いや、今さっき来たところ」
「じゃぁ
いこっか!」
鈴は、1人じゃない事が嬉しく
楽しそうに左右の腕を振りながら
堂々と神殿を後にするのだった。
「それで、鈴ちゃん
コレからどうするき?」
「え?
私は女の子だよ
エスコートはマフ君がしなくちゃダメでしょ?」
「そうしたいのは、やまやまだけどね
僕は、女の子とデートしたことも
家族と、どこかへ出かけた事も
1度もないから
期待しないでよね。」
「うん、期待してない」
「・・・・
そう、きっぱり言われると
少し辛いね・・・。」
少し落ち込み気味のマフに
鈴は笑うように声をかける。
「誰しも、初めては有る
ヘタッピでも気にするな!
それは、経験となり知識となり
テクニシャンへと進化を促す行為である!
ただ、忘れるなかれ
進化をしない人間は
見放され捨てられ忘れられるぞ!
記憶から消される、それは存在としての死だ!
初めてを恐れるな
いや、初めてだからこそ・・・
股間を・・・なんちゃら・・・・って
お兄ちゃんが言ってた!!」
「鈴ちゃん・・・
ソレ、別の行為だと思うんだけど
まぁ、言いたい事は理解できるな」
マフは、体ごと鈴に向け
ある覚悟を決め言葉を紡ぐ
「鈴ちゃん
僕は、異世界や、それを扱ったゲームとか小説とか
ある程度の知識はあると思う
だけど、先日まで、病院のベットで寝ていた僕は
何も出来ないかもしれない
だから、エスコートとかできない
でも、鈴ちゃんと一緒に世界を回ってみたい
この世界を、鈴ちゃんの横で一緒に見てみたいんだ!」
それは、告白に似た言葉であった。
マフが鈴の事を知ってから
アムルタートとの間で交わされた情報の中で
異世界を行き来する魔法は存在しない事を知った
勇者召喚の儀式でも
特定の世界への渡航は出来ないのだ
そもそも、天文学的数値を天文学数値で乗算し増えていく世界の数であるのだ
まったく同じ元の世界に帰れる可能性は0で有る
そう、マフは理解してしまっていたのだ
【鈴は元の世界に帰れない】事を・・・
だからこそ言葉にした
マフは、神天使の加護で、死ぬ事は無い
そして、永遠の時間を持つ存在として
鈴が死ぬその時まで共に歩む事を決意した覚悟の言葉
その思いに鈴は
「私は元の世界に帰るけど
がんばって世界一周してね。」
と、無自覚にマフを応援する
マフからの好意は感じるが
それは不変の感情では無いと・・・。
そう、鈴は知っている
元の世界にも、この世界にも
愛なんて物は無いと
夫婦で有ろうと、家族で有ろうと
兄妹で有ろうと、恋人で有ろうと
友情で有ろうと
不変な絆も、不変の愛も無いと
そして、愛とは【感情のバク】だと。
そこに
自分を捨て、兄を死の淵まで追いやり
その親権を放棄しようとした、昔の両親の姿や
変態(兄)と私が双子の兄妹と知り
自身から離れていった友達の姿を瞼の裏に映し出す。
だからこそ、知っている
憎悪が長続きしないことも
怒りが長続きしないことも
感情と言う物が、変化することを
憎悪と愛は、同じ物で
怒りと笑いは、コインの裏表
喜怒哀楽その単純な感情は
サイコロを転がすように変わってしまう事を。
そして自分の感情さえも
不変では無いと知っている
だが、信じる事を止めない
母親を
2人の大親友を
2人の幼馴染を
そして、何よりも
双子の兄を。
もし帰る方法が無くとも
あの兄なら、文句を言い、笑いながら迎えに来る事を信じている
と・・言うか「すぐ来い!」と
「夏休みに皆と遊ぶ計画立ててるのに!
遊びに行けないじゃん!!」と
「その気になれば、来れるだろう!!」と
迎えに来ない、面倒臭がりの兄に対して怒りを燃やす。
だからこそ、鈴は元の世界に帰る為に
今出来る事を考え、前を向くのだった
だが、その方向性は・・・・
「とりあえず、帰る方法は後回しで
まずは、食材!
特に和食に欠かせない出汁
鰹節に、コンブ
魚醬の作り方は(料理の)師匠に教えてもらったから
まずは海を目指す!
だけど!
明日ヨード卵のおっちゃんの赤ちゃんと遊んでから!」
「え?
帰る方法は後回しなの?」
「当たり前でしょ!
可愛い赤ちゃんと遊びたいし
それに
お兄ちゃんが私を助けに来た時に
私が1ミリも成長してなかったら
その場で、捨てられる!
それまでに美味しい異世界料理つくらないと!」
マフは、「ははは・・・」と笑うしかなかった
そう、心で
(その時は、鈴ちゃんは僕が貰うよ)と誓いを立てるが
鈴に言えないのだから。




