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その少女・異世界でも非常識  作者: フラック
2章 脱・勇者
32/50

8話 【Muff】(マフ)〔失敗・やり損ない・しくじる・とちる・不器用な人・能無し・まぬけ〕

 



 勇者達の会議も終わり

解散していく勇者達。


 その中で、鈴は、ほぼ無言で席を立った

そして心配そうに後を付いていくマフの姿がそこにあった。


 鈴の手の平の中には

家族と暮らした記録の欠片が存在した

もうそれを見る事は叶わないが

それは、異世界で家族と会えない鈴にとって

大切な思い出でもあった・・・


 母と一緒に撮った写真

バカする変態な双子の兄を録画した画像

近所に住む幼馴染の兄妹との記録

大親友の友人2人との思い出


それ以外にも、大切な人達との記録がそこにあった。


 鈴はあまり過去を振り返らない

それは、後数年しかない限りある

大切な時間を悔いなく生きる為に

今はまだ、前しか見ず

限りある未来を楽しく過ごす為でもあるのだ。


 だが、確実に数年後

過去を過ぎ去った日々を懐かしむ為

観るだろう記録と記憶だった


それは異世界に1人となった鈴の大切な宝物。



 鈴は、食事も、料理も忘れ

第4の塔に用意された自室に戻り

着替えることもなく、豪華なベット足を向け

その布団に潜り込んでいくのだった。


 部屋まで付いてきた、マフ

2人を監視護衛していた数人の神官は

さすがに部屋にまで入る事はせず

もしもの為に、ドアの前で待機をする。


 マフは

鈴の寝るベットの側まで足を運ぶと

床に腰を下ろし、ベットを背もたれ替わりにし

鈴に背を向けたまま、ベットに寄りかかるのだった。




 しばし無言が続いていく・・・。




 マフは、天井を見上げ、静かに語りだした。



「僕は・・・

 病気・・・無痛症だったのは言ったよね

 そして、合併症の症状で全身マヒにもなった・・・

 僕は、死を待つだけの屍だったんだ

 僕の両親はとても悲しんでいたと思う

 でもね、僕はその時は、まだ5歳だった

 人の死も、人の悲しみも

 まだ本当の意味で理解できてなかったし

 痛みを感じない体では

 肉体的苦痛も精神的苦痛も

 僕には解らなかったし

 誰も教えてくれなかった・・・

 そう

 自分が死ぬ事さえも分からなかったし

 死が何かさえも・・・

 だって、そう・・

 僕の周りで誰かが死んだ事もなかったし

 たぶん、僕の周りで

 一番先に死ぬのは、きっと僕だった

 そう、僕は知らなかったんだ

 両親が抱えた悲しみを・・・。


  そんな僕は

 【死】と言うものが

 ただの状態・・・

 ゲーム的に言うなら【バットステータス】だって思ってた

 毒やマヒと同じく簡単に治る物だと思ったのは

 何も無いICUで、唯一の楽しみだった

 ヴァーチャルゲームにハマってたからだと思う


  そうなんだ

 【痛み】を【死】を、知らない僕は

 ゲームの中で

 プレイヤーかを傷つけても、罪悪感は無かったし

 誰かを殺しても、生き返るから、殺していい物だと思ってた・・・。


  幼い時から、ゲームばっかりしている子供達も僕と同じ

 リアルで、後を絶たない、子供が起こした障害事件

 子供のまま、大人になった普通を装う無神経加害者

 そんな精神が壊れた子供達

 僕達は、自分で善悪の判断が出来ない

 なんど言っても言う事を効かないし

 人を傷つける事を悪いとも思わない

 しかた無いだろ、その意味が

 なぜ悪いかすら理解できてないんだ・・・


 そんなこ子供には、体罰がきっと必要・・

 体罰が、痛いのが嫌で

 悪いことをしない

 精神が、心が出来上がっていない子供には

 きっとそれも【正解の1つ】なんだと思う

 体罰を完全否定している世間がおかしんだ・・・

 でもね、僕はそんな善悪ですら・・・教えてもらって無い

 体罰をしても、痛みを感じない僕

 善悪の判断すら出来ない僕達

 幼い心、純粋と言ってもいいの持ち主の子供に

 人を傷つけたら【ダメ】と言っても分かるわけがない

 痛いからダメ・・・って

 人から叩かれる痛みを教えられていない人間に

 言っても意味はないし

 純粋だから、話を聴いて、人を傷つけなくなる?

 バカを言うな・・と

 人を殺していいよ、と言われれば人殺しをする

 純粋で善悪の判断もできない

 操り人形の様な、犯罪者の子供を作ってる様なもんだ

 

 (RPG)ゲームの中では

 敵を剣で切ってもいいんだ

 敵を殺してもいんだ

 プレイヤー同士で殺し合うPvP(対人戦)もある

 リアルとゲームの境目すら分からない

 壊れた僕達では

 プレイヤーを殺して褒められるゲームと

 人殺しが、悪だと言うリアルの

 違いが分からない・・・


 昔の僕は、人を殺したらダメと言う意味すら


 人が死ぬと言う意味すら、わからなかったんだ・・。

 


  だって僕が、両親から言われた

 やってはいけない事

 それは、外に出て遊んではいけない

 怪我をしてはいけない・・・

 それくらいだった

 そこには【人を傷つけては(殺しては)ダメ】なんて無かった

 それほどまでに、僕を守る為に

 そんな当たり前の事すら教えられてないほど

 お母さんは、お父さんは必死だったんだ


  僕は2人の心配もわからず

 外に・・・出たいって

 隠れて外に出たことがあったんだ・・・

  走った事も無い僕

 デコボコの地面を歩いたこともない僕は

 運動おんちで、歩くことすら、失敗して

 こけて血を流し、骨を折った・・・

 痛みを感じない僕は

 怪我をしても、骨を折っても分からない

 なぜ、立ち上がれないかも

 なぜ、手足が動かないかも・・

 家から出ない僕は、体力もつかないし

 外には、靴を履いて出る事すら理解してなかった・・・

 

 ほっとけば、数時間後に僕は死んだだろう

 そうすれば、お荷物が減って肩の荷が下りるのに

 お父さんは、泣きながら僕を、叩いたよ・・・

 言う事を効かすため

 二度とこんな事をしないようにって・・・

 ただ、僕は無痛症

 叩かれた事で、それの意味も

 それが何なのかも分からなかった・・・。


 そう、痛みが分からない僕には

 他人の痛みも理解できない

 人を傷つけても、その人が痛いと感じている事さえも・・

 そして、人は死んでも生き返ると思ってたからね


 はは・・・


 僕は・・分からない・・・


 知らないんだ、痛みを・・・


 無痛症・・・


 痛み【が】感じない・・・


 痛み【を】感じない・・・


 それはね、いくつかの【感情】すら感じなくなる事でもあるんだ


 心の痛みすら・・・ね・・・


 だから

 

 鈴ちゃんの気持ちが・・・分からない


 きっと、家族の写真や動画が見れなくなって


 悲しい・・・んだと思う

 

 でも、僕は・・・


 悲しいと言う気持ちが分からない


 きっと、鈴ちゃんの、お兄さんなら

 気の利いた言葉で

 鈴ちゃんを慰めるんだろうけど


 僕には・・・


 他人の痛みも


 自分の痛みさえも分からない僕に


 他人を気遣う資格はないから・・・


 どんな言葉をかけていいか


 分からないんだ


 ほんとに、まぬけで


 情けないね


 僕って・・・。」




 マフの頭に

小さな手が置かれ撫でることで

マフの頭は軽く揺らされた

視界が揺らいだ事で

マフは驚いて

後ろを、ベットの上に顔を向けると

そこには、可愛らしく笑顔の鈴の存在が


「マフ君はいい子だね

 それに、素直で優しいんだ

 分から無い事を分かろうとして

 悩んで苦しんでる

 そして、それを口に出来る

 スゴイよ

 ただ、ちょっと不器用なだけなのかもね。


 それに、心が壊れてるって言ってたけど

 お兄ちゃんより、マトモだよ!

 マフ君と違って

 お兄ちゃんは

 他人の痛みを笑う人

 肉体的痛みも、精神的痛みも

 苦しんでれば、苦しんでるほど

 私が泣いてるの見て

 心の底から本気で笑う人だから」


「鈴ちゃんのお兄さんが?」


「うん

 お兄ちゃん【変態】だから!

 人を殺すことに罪悪感も無いし

 悪いとさえ思ってないね!

 あ! ゲームもだけど

 現実で実際殺してるし」


「え?

 殺してる?」


「うん

 誰かさんの受け売りで

 バレなきゃいいって~~~言ってる!

 メガネさんも、変なこと教えなきゃいいのにね~~」


「いいの?」


「いいの!

 お兄ちゃんだから!!

 いいの!!!」


 鈴は、マフの頭を撫でながら

嬉しそうに、兄を自慢するのだったが

マフは、人を殺してはいけないと言う

マフ達の居た世界が作り出した

世界共通の常識すら超えた鈴に目を丸くする。


 そして、マフは鈴の大人の対応に観念したのか


「なんか、僕が慰められてるみたいだね

 僕のほうが年上で

 僕が体験した時間は何十年だと言うのに

 小さな鈴ちゃんの方が大人っぽいや。」


 鈴にとってみれば

その意志が体験した時間は膨大ではあった

それは、マフの人生では追いつけない時間ではあったが

マフの言葉に疑問をもったのだった。


「何十年?

 マフ君、何歳なの?」


「あぁ、ごめん

 僕は15歳だよ

 5歳でICUに入って、10年くらいだから

 VRの中で、毎年母さん達が祝ってくれるんだ・・・

 今年も生きて誕生日を迎えられたって・・・

 覚えてるのは、辛そうな2人の顔だけだけどね・・・

 まぁ、何十年って言うのは少し、誤解があるのかな

 僕がやっていた

 【第7世代・加速式フルダイブVRMMO】

 このゲーム機は

 ゲームの中に入れば

 その時間軸が12倍にまで加速されるんだ

 リアル1時間が

 ゲームの中では12時間

 2時間で、丸1日が体験できる

 幾つか規約が在って

 健康体の人や年齢で使用時間が決められてるの

 でも、学校やディスクワーク的な仕事では

 【第3世代を進化させた、加速式VR】が在って

 時間軸3倍の、簡易ダイブで

 ほぼ、副作用なくて

 学習時間や仕事時間を取れるんだ

 【初期型・加速式フルダイブVR】

 これは時間軸2倍だったけど

 これによって、科学進歩は飛躍的に上がったし

 文明は加速的に進んだんだ

 ただ、その一方で、人間の体力は落ちたし

 肉体労働や、現場仕事では

 コレは、意味がなかったから

 色々問題は有ったんだけどね


  僕はこの

 【第7世代・加速式フルダイブVR】で

 ずっとゲームばっかりしてたんだ

 ホントなら、長時間使用したら

 脳に負担が掛かってしまうから

 時間制限があるこのシステムなんだけど

 僕は、その被検体でもあったから

 時間制限無しでやってたんだ

 動くこともできない僕の唯一の楽しみ

 リアルでの睡眠や、検査を抜けばずっとしてた

 1日15時間、ゲームの中では、7、8日・・

 そんな事を10年もしてれば

 ゲームの中では、単純計算で70年以上の時間を体験していた

 ホントは、脳みそは、100歳手前のお爺さん


 それでも、僕には・・・・


 人の痛みは、分からない・・・


 このシステムを使ったゲーム

 特にRPGやFPSの様なゲームでは

 完全に痛覚遮断は出来ない仕様なんだ

 これは、無痛に慣れた事で

 リアル世界で反映され

 自分に迫る危機に対して防御すら出来ない事を回避する為なんだ


  それは、僕みたいに、躓いてコケても

 受身も、手を付いて衝撃を和らげようと体が反応しない、脳が理解できない

 そんな、防げた怪我や死を避けるための機能・・・


 ただ、僕はソレすら

 そのシステムすら、機能しなかったんだけどね


  だから、僕は

 ゲームの中の戦いで

 躊躇なく戦えた

 痛みで、恐怖で、体や脳が硬直する事はないし

 皆みたいに、躊躇することがなかった

 

 

 皆みたいに、時間制限されず

 ゲームをしまくって

 そのうえ、痛みを感じず

 バーサーカーみたいに戦ってれば

 僕は、どんなRPGMMOでも、最強に近づけた

 100を超える、ゲーム(RPG)をして

 何度も、勇者となって

 長い時間を体験してきたんだ


 でも、精神は成長しなかったみたい


 鈴ちゃんの方が、僕より大人


 もしかして、鈴ちゃんて


 100歳を超える、おばあちゃん?」


 半分冗談交じりのマフの言葉に

マフの頭の上に置かれた、鈴の手に力が篭る!

だが、当然、マフには伝わらない

鈴がマフの頭を撫でることで

マフの視界は軽く揺れていただけである・・・


 マフにとって頭を撫でられる

そんな優しい鈴の行動も

マフにとって、意味不明で理解不能

視界の外で、行われている行動など

マフにとって知りえない現実である

きっと、ナイフで腹を刺されようと

それを見るまで、マフには理解出来ない・・・。


 ただ、鈴にしてみれば・・・


(100歳のお婆ちゃんって

 ひどすぎる!

 大体、その理論で言えば

 私の年齢って・・・何歳なのよ!

 一万倍の意識の加速・・・

 10秒もあれば、100000秒1日超え・・

 1時間で1年

 1日10時間したとして10年?

 それを・・・1ヵ月みっちり・・・

 いや、意志加速になれた後半は

 遊びで10万倍とかやってたし・・・

 どこぞの界王拳か!って話だけど 

 精神年齢・・・きっと有り得ない大台に・・・

 あ?

 ちょっと待って

 お兄ちゃんの精神年齢って3歳児並だよね?

 だったら双子の私も3歳!

 いや、女の子の方が精神的成長は早いから10歳!

 よし大体、それでいっか!

 どうせ、体の方は10歳だし。)


と、お婆ちゃん扱いされた事が

ある意味、事実であり

的確に突いてきたマフに

反撃する鈴だが

マフには意味の無い事であった。


「そっかぁ~~

 フルダイブのVRは

 私の世界にもあったけど

 加速式?って言うの?

 それはなかったなぁ・・・

 VRの世界で普通の時間より長く感じられる機械を

 お母さんと、お兄ちゃんが作ってたみたいだけど

 1台作るのに1億超えたって頭かかえてた!」


「え?

 作った?」


「ん?

 まぁ、脳科学は、お母さんの得意分野だし

 機械いじりは、お兄ちゃんの得意分野だからね

 作れても、1億超えるなら

 一般家庭に普及しない

 そんなゲーム機は、失敗だって言ってたよ。」


「そんな・・・

 僕らの所では

 世界を震撼させた、大発明で

 時間を倍使える事は

 それだけ、あらゆる電脳世界が一気に発展したというのに?

 いや、だって、2倍以上、時間が使えるんだよ!

 それは、すごいことなのに?」


「ん?

 私には分かんないよ

 興味ないから」


「だって・・・・

 時間軸が・・・

 いや、もう(ゲーム機)無いんだ・・・しかたないか・・。」


「そうそう、壊れた物はしょうがない!

 無い物は、無い!!

 帰れば、お兄ちゃんがバックアップとってるくれてるはず!」


 それは、スマホが壊れた鈴自身に向けた言葉ではあったが・・・

鈴やマフの居た、日本と言う国が存在する世界では

【意志加速】と言う【スキル】は本来存在しない。

鈴の知る限り、それが出来る人間は

母親と、兄、そして幼馴染の2人の兄妹だけである。


 また、マフの居た日本では

加速式VRは、世界的大発明であり

この発明で、加速度的に科学が進化したといってもいいが


意志加速ができる、鈴の母親や兄にとって

さほど重要ではい存在だったこともたしかである

そして、この2人、自分の為に色々研究しているだけで

世界的大発明であろうと

それを、世界に貢献しようなんて考えは、1ミリも無い

そんな話も、ただ単に、それは鈴の興味の無い話で

「あ~~なんかそんな話、聞いたな~~~」

程度の理解しかなかったのだった。


 

 

(´・ω・`)なんだろう

話が進まない。

マフの話が、まだ続く・・・・。

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