9話 もふもふ。
鈴の機嫌も良くなり
マフは、VRMMORPGあるあるを話し
鈴は「それ、お兄ちゃんが言ってたぁ~~~」と
変な共通話で盛り上がっていくのだった。
そんな、話の中で
ゲームの中で、ペットを飼ったり
魔物使いや、召喚士など
魔物や動物の話になったとき
ふと、何かを思い出したマフ
「そうだ!
鈴ちゃん
お願いがあるんだけど。」
「ん?
なに?」
「えっと・・・
コハク君を触りたいんだけど・・・」
鈴は、にっこり笑うと
「え~~~
触るだけでいいの~~?
もふもふしたいんでしょ~~~。」
マフは、照れながら
「うん・・・
だってさ本物の動物って
触ったことなくて
犬とか猫とか飼ってみたかったんだけど
免疫力なくてさ・・・
でもいいの?
もふもふして!!!」
鈴はニッコリわらう
それが、何をしめす笑いかは謎だが
琥珀は、鈴の兄の使い魔であるので
本物の猫では無いのだが
「まぁ
私に言われても意味はないんだけど
こはくく~~ん。」
鈴の呼びかけに
今まで何処に居たのか
部屋の窓の枠から
「にゃぁ~~。」と
返事が帰ってきた
「こはくくん
マフ君が、もふもふしたいって言ってるけどいい?」
「にやぁ!」
その返事に、鈴は笑いながら
「そりゃそうだ。」
マフは、首をひねり
「えっと・・・
コハク君は・・・なんて?」
「捕まえれたら
もふって良いって!」
「にゃぁぁ!!!」
それは、鈴の申し出に
琥珀は「断る!」と返したのだが
鈴が「捕まえれたら、もふって良いって!」と言ったものだから
鈴に対して怒りを訴えるのだが
聞く耳を持つ気もない鈴である。
ただ、マフは
本物の猫?を前に
琥珀の機嫌の悪そうな声など聞こえてないのか
嬉しそうな顔で立ち上がると
琥珀に向けて動き出すのだった。
窓枠に座ったままの琥珀に
マフの手が伸びる。
琥珀の表情など分かりはしないが
きっと、とても残念そうな顔で
ひょいっと、その手を躱した。
「マフ君、そんなんじゃぁ
こはくくんを捕まえられないよ!
がんばれ! がんばれ!」
「うん・・・
でも、コハク君、なかなか早いね・・・。」
「猫だからね!!」
「くそ!
こっちか!!」
逃げる琥珀と、それを追うマフ
その追いかけっこは白熱していく
「マフ君、右!
違う、左に飛ぶよ
あぁぁ~~~また逃がした
よく狙って!
今!」
徐々に集中していくマフ
「うん
やぁ!
あぁぁ・・・
あ、あと1cmなのに・・・
今度こそ!
よし、追い詰めた!
とう!
あぁ・・・
もうちょっとなのに・・・。」
マフにとって、体が動くと言う事はゲームの中だけであり
目の前の琥珀を追う行動じたいが
本来現実では有り得ない行動だった
だがマフの体は今まさにゲームのキャラの様に動いていた
それはマフの脳内で
リアルとゲームの境界が無くなっていっていたからだ。
初めは、ゆっくりと琥珀を追うマフだったが
その動きは、経験を積み重ねるように
洗礼され、徐々に速度を増していく
それは、普通の人間の域を超えて・・・。
いや、それは突然でも偶然でも無い
マフの動きを観察していた鈴が
琥珀と同調しながら
その速度を徐々に上げていったのだ
マフの動きが良くなれば
それより少しだけ早く動く琥珀
そして、マフを応援する鈴の声も
まるで早送りの倍速音声のように早くなっていく。
マフは、気づかない
その体が時 (とき)と言う制限を超えて
まるで、ゲームの中のように
時間を加速させ早く動いている事に
それはそうだ
マフにとって
目の前の琥珀は、まるで最初と同じくらいの速さで動き
自分を応援してくれる鈴の掛け声は
ずっと同じ速度で聞こえてくるのだから・・・。
だが、マフがゲームの様に
加速して動こうと、琥珀には指一本触れることはできなかった。
マフの感覚で5分ほどだろうか
琥珀が捕まえられないことで
その集中力が切れ
「むりだぁぁ~~~~」と動きを止めた瞬間
マフは、糸が切れた操り人形の様に
崩れるように床に体をなげだした
そして、マフは
「あれ?」と・・・
目をパチクリと、何が起きたかわからないまま
「体が・・・動かないんだけど・・・。」
鈴はベットから降り
床に転がったマフに近づき
上からマフを見下ろしながら
「うん、筋肉がボロボロになってるね!
結界はって自然治癒力を上げてたんだけど
間に合わなかったみたいーーー」
ケラケラと楽しそうにマフに声を掛ける鈴だが
その意味を理解できないマフは
「よく・・・わからないんだけど・・・。」
「結論から言うとね」
「あ・・うん。」
「マフ君の無痛症と全身麻痺治ってないみたい!」
鈴の言葉を理解できないマフ
この世界に来て、回復魔法を受けたマフは
立って歩くことが出来、全身麻痺は治ったと思っていた
そして、無痛症も
食べ物の味や、匂いが感じられる事から
嗅覚や味覚と言う刺激が感じられる事で
無痛症も治ったものだと思っていたのだから
鈴の言葉に
口をポカンと開けたまま空気が抜けるような声で
「ほへ?」と・・・
「うん
お兄ちゃん的に言うなら
「なんだよ! 神天使の加護って! チートかよ!
その魔力の100分の1でも俺によこせ!」 って
余りきるくらいな無駄魔力なら
少しでも俺によこせって怒る所だね~~
ん?
解らないって顔してるね?
えっとね、マフ君は
全身麻痺で動かない体を
魔力で動かしてるの
まぁ、動かせば筋肉は伸縮するから
今まで動いてなかった筋肉は
無理やり(12倍速で)動いたことでボロボロ~~~
だけど、無痛症のマフ君は
筋肉の悲鳴が聞けないから
魔力で自分の体を
ゲームのキャラの様に動かしていたけど
気を抜いた瞬間
電源が落ちたように
体の操作を失ったの~~
まぁ、今回復させてるんだけど
マフ君は、ゲームの中みたいに
自分を自分で操作できるみたいだね
たぶん、こはくくんを追っかけていた時
ゲームの中みたいな感覚があったはずだよ~~
ついでに言うと
食べ物の味や匂いが感じられるのは
魔力感知の1つだね
この世界の全てには
魔力が通ってるらしいから
それを感知できて、それを味と認識してるのかな?」
鈴は珍しい物を見るように
マフを観察していくのだが
今ひとつ理解が追いつかないマフだった。
マフはこの世界に召喚されたとき
神天使【アムリタート】の加護を受けた
加護と共に与えられた魔力も存在する
ただ、その使い方は千差万別
鈴が魔力で【温度操作】に特化したよに
琥珀が魔力で【力の具現化】に特化したように
マフは、その魔力で
肉体操作に特化した
いや、言うならば
【バーチャル世界】を【現実化】するほどの
【ゲーム脳】
これこそが、マフの唯一無二の力であったのだ。
鈴の言うとおり
マフの無痛症と全身麻痺は治っていない
だからこそ、この世界に来た時
立つ事さえできず倒れ
そのまま数日間、意識を取り戻せなかったほどだ
この間の神官達の回復魔法で
マフは目を覚まし
マフの居た世界でもある日本と掛け離れた世界に
マフは、異世界と、異世界に似たゲーム世界を混合し
本来動かない体が、動いてしまったのだ
それは指一本だったかもしれないが
それは、マフにとって奇跡の欠片だった。
自分の体は動く
全身麻痺はこの世界に来て回復魔法を受けることで治った
いや、徐々に治っていっている! と、思い込んだのだった
それが、魔力で身体を操作している事など知らずに。
凝り固まった筋肉をほぐすように
マフは、徐々に立てるようになり
歩けるようになった
だが、その回復だろう速度は遅かった
それは、マフ本人が、体力の回復と筋力をつけないと
動けるようにならないと思っていたからに他ならない。
そこに転機が訪れた
マフの事など気にしない、お転婆娘とも言える鈴
マフの体力が無かろうと
マフが歩けなかろうと
マフを連れ回し、無理やりお供をさせる。
無痛症のマフにとって疲れたと思う事はない
身体操作に筋力は必要ないのだが
ただ身体を動かせば、当然、筋肉は動くのだ
それは疲労となって現れる。
無痛症ではあるが体の機能は普通であり
疲労した筋肉は悲鳴を上げてもマフには分かりはしないが
酸素を欲する筋肉は脳に命令を下す
もっと酸素を、と
それによって心臓の鼓動は早くなり
息は早くなる
それで、やっとマフは、体が疲れたのだろうと理解する。
だが、鈴の持つ力は
いや、鈴が生まれながらに譲り受けた【とある力】は特殊だった
言うなら【回復・治癒】に特化した魔力とも言える
それにより、マフは鈴の側に居る事で常にその恩恵を受ける
鈴のお供で動き回ろうと
疲れる事なく鈴に付いていくマフ
筋力は疲労するが、その瞬間に治癒され強化されていった。
リアル、現実とは
その時間は平等でもあった
鈴やD、または、この世界の住人は
【意志加速】と言う【スキル】が使える
魔力に比例すると言われる、このスキルだが
上位の冒険者でも、瞬間的に数倍
魔法を得意とする人物なら
10倍程度の意志加速で魔法詠唱を行うこともできるが
魔法を得意とするDは、勇者召喚で呼ばれる前までなら
エルフでも並ぶ者が居ない、150倍に届く。
また、この意志加速を使い
10倍程度の加速する意識の中で
筋肉の一部分を瞬間的に、2倍から3倍の速度で動かす
【肉体加速】と言うスキルもある
だが、これらは、上位冒険者では
当然所有するスキルである
ただ、その継続時間は数秒が限度である。
ただ、これらは意志加速であり
マフの【ゲーム脳】が発現させた
12倍の加速とは別物である
加速型VRで鍛えられた脳は
常に12倍と言う加速状態で居ることに慣れ
肉体は常に12倍の速度で動いていた
そして、今、その速度で
マフは琥珀を追いかけることで
肉体は慣れ、筋力は鍛えられ
12倍の速度で動く体を手に入れようとしていた
それは、この世界の常識を超える鈴の回復と治癒の恩恵でもあった。
鈴は、自分で理解できる所をマフに伝えていき
マフもマフで、常識が抜けているので
意味不明な説明も、鈴が言うなら真実なのだろう、と
素直に聞き入れていくのだった。
そんな話も一旦終わると
マフの視線が窓枠で
背筋を延ばし威風堂々とした姿の琥珀に向く。
「いいなぁ~~鈴ちゃんは・・・。」
「なにがぁ~~?」
「コハク君を、もふもふできて・・・。」
「あぁ、ムリ
こはくくん、私にも
もふもふさせてくれないもん。」
「え?
なんで?」
「こはくくんは、お兄ちゃんの子供だからね
こはくくんを、もふれるのは、お兄ちゃんだけ!
こはくくんも、私に媚を売る気はないって。
こはくくんの中で
一番が、お兄ちゃんで
次に、こはくくんが居て
こはくくんの妹ちゃんが居て
次に、私やお母さんかなぁ~~
最近、こはくくんが機嫌が良ければ
頭を3秒ほど撫でさせてくれるようになった!
ついでに言うと
私や、私の大親友の娘 (こ)も
こはくくん捕まえられないから!
マフ君では、ムリ!」
「って、鈴ちゃんに無理だったら
僕じゃ絶対ムリじゃんか!」
「うん!
でも、こはくくんなんて良い方だよ
こはくくんの妹ちゃんなんか
私、1回も触ったことないんだよ!
なのに、お兄ちゃん
二人を抱えて、もふもふしてるの
これみよがしに見せつけるんだよ!!
どうおもう?」
マフは
2匹のネコを両手に抱え
もふもふする姿を想像し
とても残念そうに
「うらやましすぎる・・・。」と・・・。
言い訳ではないが
暑すぎて書けない・・・




