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正体
目の前で、数本の髪がチラチラと舞う。それが自分のだと気づくのに少し時間がかかった。
「……?」
何が起きたか分からない。私は不格好にへなへなと座り込んだ。
「ごめんね。ヤクちゃんはゆずなの。かすみも功も雄輔も、殺したのはぜーんぶ わ・た・し」
目を輝かせ、一つにまとめていた長い髪を自由にする。ゆずはいつもと変わらず、私の前に立っていた。
「や、やめて」
私の番だ。逃げなければ。分かっているのに、身体が動かない。この状況を信じたくない私がいる。
「無理。やめない。今日は由佳だって、ずっと決めてたから。」
震える私の前で、ナイフが横切る。身体を反らせ、ギリギリ交わす。
「次は外さない!」
ゆずの目から光が失われる。もう駄目だ。そう思った時、閉じていたドアが開き聞き慣れた声が聞こえた。