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【魔法少女#7】穿界の魔女

夜の屋上は、風の音だけが支配していた。


策の向こうに広がる街の明かりがやけに遠く見える、逃げ場はない。そう本能に告げるかのように。



「お前らの目的はなんだ」


声が震えまくる、そんな俺を小馬鹿にするように見据えていた。


「お前達人間は、魔法を軽く扱いすぎた」



そう話す老婆の感情は怒り、いや、哀れみを感じる。



「この世界はな、本来つながるべきではなかった。だが結果として繋がってしまった」


なぜだろう、どこか悲しさを秘めている感じがする。


「そして人間は、その力を”便利なもの”として扱い始めた」



続けて老婆は、まるで吐き捨てるかのように言う。



「魔法は本来、我ら魔女の領域、我々が作り、支配している物。血と歴史と誇りの上に成り立つものだ。それを貴様らは__」



ここに来て老婆が放つ殺気がでデカくなる、鋭くなった目は恨みに満ちている。


「誰でも使える玩具にした」



言葉が、重い。それがこの老婆の覚悟なのか?



「だから壊す、人間の世界を混沌に落とし、正しい形に戻すのだよ。我々が支配する形でな」



「…そんなの、関係ないだろ、ほかの人間は!」



思わず言い返してしまった、到底納得ができるわけがない。



「俺はバカだからあんまり知らないけど、少なくともお前が正しくは感じない」


人間が生活を豊かにするために、多くの研究を進めここまで来たのは俺でもわかる。


どんな過去や犠牲があろうとも__




「最初から貴様に理解を求めてなどない、貴様はこれから混沌に落ちる人間界をあの世から見ればいい」



その言葉が落ちた、その瞬間。俺の足元に冷たい何かが動く。



___ぬるりとした感覚。



「…っ?」



見下ろしたその先、そこには大量のスライムが集まっていた。


一体や二体じゃない、足元一面に大量に広がっている。



「な、なんだ??」



後ずさるがもう間に合わない、体を目掛けて登ってきた。


青が全身を包んだ時、じゅ、っと嫌な音が耳に入る。



ズボンの裾が溶けている。



「スライムの消化液!」


抵抗するほど絡みつく、気づけば…



全裸。一気に羞恥がこみ上げる。



え?まじで?フルで俺の俺が夜風に当たってるんですか?




「ああぁ、魔道具の”代償”か」


老婆が真顔で俺を見つめている。



「おい、せめて何か反応してくれよ」


「人間の欲とは底なし、いずれ制御できない力に溺れ…」


「まさかの無視で話進めるのかよ」



冷たい夜風が足元を超えて、カラン、と音がする。


あのペンとメモ帳が転がっている。




「では面倒な貴様から、あの魔女も後で送ってやるさ」


手に集まるのは紫のエネルギー。


魔法学には詳しくないが、空気が避けるような刃が俺の命を一撃で消すことができるのは分る。



「俺は…こんな特別、いらない、不幸も幸運もない、普通がいい…」


逃げられない、体が動かない、俺は全裸で無様を晒して死ぬのか?



まるで走馬灯のようだった。


老婆の放った刃が俺の胸に触れた__


ほんの一瞬後だった。




”開いた”。



胸の奥から、白くて美しい光が溢れ出していく。その光が、暗闇の校舎を優しく包む。



それは、白く幾何学的で複雑、どこか幻想的な__



「魔法陣…だと!?」



老婆の声とほぼ同時、そこから目にもとまらぬ速さで何かが飛び出した。


「っ!!貴様!!」


それは老婆の体を盛大に抉っていく。



その衝撃は凄まじく、屋上のフェンスが全て吹き飛んだ。



「いや、よかったよかった、あの時柊君の胸に”仕掛けておいてさ”」


そして、風が吹いた。その空から降りてくる影。”白銀の槍”を携えながら。



「仕掛け…路地裏で?」


あの時、意味ありげに強く胸を叩いたのは…



「私は、幸せの魔法少女だから、みんなを幸せにしなきゃいけないんだ」


光を反射するような、白銀の髪。


無駄のないラインの装束、手にした槍。



__それは…見惚れるほど、美しかった。

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