【魔法少女#55】死闘の末に
俺の名前は柊透。
「ミリア!!どこに行った!」
瓦礫の陰で仲間の死闘を見守っていた便利全助の従業員。
ノクスレインの魔女達による便利屋全助総攻撃、その戦いはついにウルとミリアの一騎打ち。
だが俺は見ていたその死闘は、一瞬にしてどこかに消えてしまった。
俺が先ほどまでいた瓦礫や血が溢れる路地を曲がり、戦場に再び降り立った時。
目を疑う、衝撃的な光景。
前には血に塗れた悪魔を背負う、銀の光を放つ魔法少女が力なく歩んでいた。
思わず声を張り上げる。
「ミリア!!!ってウル!?」
彼女の肩に担がれていたのは…悪魔の戦闘者ウル。
この戦いで幾度となく俺達を地獄に落とした最悪の戦闘者、その実力は間違いなく本物だった。
驚いた俺の顔を見た魔法少女は、はにかんだ笑みを浮かべながらも堂々と言い放つ。
「この瞬間からウルは全助加入しました!仲間です!」
理解が追いつかねぇえ!!
「なにを…ってこいつはミリアの命を___」
俺が何かを言いかけた刹那、青紫のショートカットを揺らす少女が弱弱しく手を上げた。
「降参した…ってか失敗した私に戻る場所もないよ…悲しいね」
無茶苦茶にもほどがある。
俺達の組織を潰しかけたその主戦力をいきなり仲間って…でも。
これこそミリアなんだよ。
「大丈夫、ウルが裏切ってもまた私が倒すよ」
「ミリアがいうなら大丈夫だよ」
空気が緩んだ会話、そこでズタボロのウルがか細い声を出しながら俺を強く見つめる。
「あんたに頼みがある…そこにあるミラの死体、回収してほしい」
ウルが指さした場所。そこには無数の傷を抱え命を燃やし切った、誇り高き魔人が永久に目を閉じていた。
「最後は故郷に送ってやりたい、あいつを最後は故郷で休ませたい」
「身代わりにした奴の言うセリフ?」
ミリアが半分笑いながらミラの前に魔法陣を展開。俺は血に塗れたミラを背負いあげる。
俺達はなんとなく、この悪魔を理解できたかもしれない。
彼女は狡猾で残忍で文字通り悪魔、仲間を生贄にすることさえ躊躇はない。
でもそれは組織の為、凍ったように見えた彼女の奥の本心に俺達は触れられたような気がした。
「ロウも…私が送ることは出来ないから」
陰から出てきたのは氷の剣士、ロウ・ノクスレイン。
俺は背負ったウルをロウに並ぶように寝かせた、確かにこいつらは俺達の命を狙ったとんでもない奴らかもしれない。
けど。
便利屋全助は敵さえも助けるんだよ。
ミリアは静かに頷きながら、俺達の命を狙った戦闘者を銀の光に包み込んだ。
誰一人として言葉を紡がない時間、その中で俺は二人の傷を見て慌てる。
「ミリア、俺達も早く行こう、このままじゃ二人とも死ぬ」
「柊」
俺の焦った言葉を流した彼女は、突如として俺の顔を真っ直ぐに見つめる。
「私に特別をくれてありがとう」
助からない深手、それを俺は強引な手を使ってミリアを助けた。
「俺こそ、ミリアが俺の普通を特別にしてくれたんだよ」
あの日、ミリアと路地で依頼に向かった時も、今日のような夕日だった。
俺達三人を銀の光が包み始めたと同時、俺の携帯が突如として鳴る。
「もしもし?柊君!」
「紫崎さん?」
電話の主はクラスメイトの紫崎さん、あれやこれやと事件に巻き込まれつ続けた彼女はもはや借りのメンバーと言ってもいいだろう。
「鬼島さんと龍門さん、どっちも命には別状は無いって」
「よかった…」
流石はあの二人、気合の総量が男の中でも違いすぎる。
「あーあ、組織裏切っちゃった…私殺されるのかな」
「大丈夫、私がいるから」
「もうこのノリに慣れた自分に驚いている」
きっと叶うことは不可能だと、胸のどこかで解っている究極の理想論。
誰かに馬鹿にされても、彼女はきっと辞めることはないのだろう。
「私が全部助けて幸せにするよ、それが私の信念だから」
今日もその信念の光は、誰かの影を照らすのだろう。




